オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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圭視点

Crimson Tide ★

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 泪と話していた女性の店員さんがパタンとドアを閉め、テーブルがある場所に連れて行ってくれたので席に着く。

 女性が「お客様よ!」と声をかけると、奥から二人の女性が出て来た。二人の女性も美女である。一人はメジャーと紙がはさまっているバインダー、もう一人は紅茶を持って来て、私の前に置いてくれた。喉が渇いていたのでその気遣いは嬉しく、思わずニコリと笑って「ありがとうございます」とお礼を言い、一口飲む。
 すると、なぜかか三人とも「可愛い!」と悶えている。何か可愛いものがあったのかなと思いながら、さらに紅茶を啜った。私が一息ついたところで女性が話しかけて来た。

「さあ、測るわよ。はい、ジャケット脱いでー」
「え? あ、はい」

 素直に席を立ってジャケットを脱ぎ、隣にいた女性に渡す。

「いいコね。次はブラウスね」
「はい。……あ! ブラウスはダメです!」

 泪みたいなしゃべり方だなあ、と思いながらブラウスのボタンに手をかけ、我に返る。オーダーメイドという言葉に気を取られ、体の傷のことを忘れていたのだ。

「どうして? 女同士だもの、何の問題もないわよ?」
「問題ありです! お願いです、ブラウスの上から……」
「正確なサイズが測れないから、ダメ」
「……なら、せめて、貴女だけ……えっと……」
「あら、ごめんなさい。瑠香るかよ」
「瑠香さんだけ……」
「それもダメ。正確なサイズを測るからって言ったでしょう?」

 私には全身の傷があるから、できれば見られたくなかった。

(どうしよう……こんなことになるなら、最初からちゃんと断ればよかった……)

 今更後悔しても遅いけれど、何をどう言ってもきちんとサイズを測ると言っている以上、瑠香は引かないだろう。だったら向こうが引くようにすればいい。
 自虐的な気持ちで、もう一度ブラウスのボタンに手をかける。

「……気持ち悪かったらそう言ってください。すぐに帰ります」
「え……お圭、ちゃん?」

 ボタンを全部外し、前をはだけさせたところで、瑠香が息を呑む。

「……かよちゃん、今すぐ店側のドアの鍵をかけてちょうだい! 早く!」
「え? あ、はい!」
「麻ちゃん、窓のカーテンは全部閉まってるわね?」
「は、はい!」

 瑠香の鋭い声に二人がサッと動き、返事をする。かよちゃんと呼ばれた人が鍵をかけた途端、ドアがガチャガチャと揺れた。

「ちょっと、なんで鍵をかけてんの?! アタシも入れなさいよ!」
「はあ? 泪、何言ってんの? いくらオネエ言葉使ってたって、アンタはオトコなのよ! こればっかりはダメ! 今は我慢しなさい!」
「ええっ?! ……アタシがお圭ちゃんの胸を持ち上げようとしたのに……!」
「もちっ?!」
「アンタはこれから先、いくらでも持ち上げる機会はあるでしょ?!」

 今は我慢しなさい、と瑠香に怒られ、泪の拗ねる声がした。

「あ、あの……瑠香、さん?」

 予想外の瑠香の行動に、戸惑う。

「ごめんなさい、お圭ちゃん……恥ずかしがってるだけだと思っていたの。……二人とも、泪には内緒よ? いいわね?」
「「はい!」」
「あ……」

 瑠香は泪には聞こえないくらいの小さな声でそう言い、私は「泪は知ってる」と言い出せないまま、瑠香にブラウスを脱がされて二人にブラを取られ、上半身裸にされてしまった。
 息を呑む二人に、咄嗟に胸を隠し体をを丸める。

「頑張った、のね」

 一瞬涙ぐむ瑠香。背中は言うに及ばず、腕やお腹も傷だらけ。胸だけがかろうじて傷がないという程度。気持ち悪くないはずがない。なのに……。

「お圭ちゃん、背筋をまっすぐ伸ばして。腕はまっすぐ横」

 そう言った瑠香の顔も他の二人も、プロのマヌカンの顔だった。涙ぐんだのが嘘のように、嫌悪も同情も見られない。
 私も腹をくくり、言われた通りに背筋と腕を伸ばす。

「そう……いいコね。かよちゃん、胸を持ち上げて」
「はい。失礼しますね。うわぁ……思った以上に重いですね」
「なんですって?!」

 いきなり後ろから胸が持ち上げられて驚く。扉の向こうからは泪の叫び声がした。

「ひゃあ?! ちょっ、え?! あ、あの?!」
「麻ちゃん、測るのと記録、どっちがいい?」
「こんなおっきいを測ったことはないので……是非とも測らせてください!」
「いいわよ。ほら、お圭ちゃんは動かない!」
「いや、でも、あの!」

 彼女たちの態度は至極普通で、逆に拍子抜けしてしまう。

「胸ってね、こうやって数人で測ったほうが正確なの。くすぐったいかも知れないけど、我慢してちょうだい」
「は、はあ……」

 また、泪と同じ喋り方だ。まるで泪に裸を見られながら話しているみたいで、実は少しだけ恥ずかしい。

「それにしても……」
「ほんと……」

 かよちゃんさんと麻ちゃんさん、サイズを測っている二人が急に溜息をつく。

「「なんて、もちもちしててすべすべな肌なの……」」
「はい?!」

 二人の手が蠢き、それに瑠香の手が加わる。

こんなのがあるとは思えないわよね」
「そうなんです!」
「しかも、この白さ!」
「「たまんない!」」

 正直、三人の行動にドン引きする。

(へ、変態集団?!)

 そう思っても仕方がないと思う。
 家族にすら触らせたことのない肌を触られオロオロしていると、泪には聞こえないような小さな声で「終わったわよ」と瑠香に言われ、下着とブラウスをさっさと身につける。服を着ている間に瑠香は真面目な声で「その傷、泪は……?」と聞いて来た。足は見ているけれど瑠香が言っているのは体のことだと思い、そのまま答える。

「まだ見ていません。でも、知っています。……瑠香さん、お気遣い、ありがとうございます」
「そう……わかったわ。二人とも、他言無用よ。いいわね?」

 頷く二人。そして何かを思いついたのか、二人に耳打ちした瑠香は、ニヤリと笑っている。それを受け、かよちゃんさんも麻ちゃんさんも同じようにニヤリと笑い、三人でまた「すべすべー」とか「ツルツルー」とか「もちもちー」と言い出した。

「ちょっと! アンタたちズルいわよ?! それはアタシのモノよ! アタシだってまだ見てないし、じかに触ってないのよ?! そんな実況中継はいいから、アタシも中に入れなさいよ!」

 三人がいるテーブルに行くと、瑠香が紅茶を淹れてくれたのだけれど、「もうちょい」とか「あと一押し」と二人に小声で指示を出している。それを受け、さらに二人は楽しそうに煽っている。

(……どうしてこんなに楽しそうなの?!)

 ぐったりと深く椅子に座り込んで頭を抱えると、「かよちゃん、開けるわよ」との瑠香の声が聞こえる。

「泪……そんなに見たい?」
「見たいわ!」

 いくら恋人同士になったばかりとはいえ、欲望に忠実すぎる泪になんとなく危機感を覚える。そしてそれを煽る瑠香にも。
 勢いに飲まれたとはいえ、同意したのは早まったかも……と少しだけ不安になる。

「仕方ないわね……いいわよ。かよちゃん、開けてあげて」

 鍵の開く音がしたと同時にバターンと扉が開き、泪のウキウキした顔が覗いたと思った途端、見事に盛大なしかめっ面になった。

「……こんの、嘘つきー!!」
「バーカ。誰が見せるって言ったかしら? ひっかかるアンタが悪いんでしょ? で? 洋服は? アンタのことだから選んであるんじゃないの?」
「……チッ! この性悪! これよ! 他にあったら見立ててちょうだい!」
「いいわよ」

 ふふん、と笑う瑠香に対して泪は苦虫を噛み潰したような顔である。
 なんだかんだと泪好みの服をいろいろとあてがわれ、それに対して瑠香がダメ出しをし、私は右往左往。
 折半と言ったにも拘わらず、瑠香の勧めもあり……結局、泪が全額出してくれた。……どこにそんなお金があるの……。

「サイズを直して明日全部届けてちょうだい。それくらいできんでしょ? 姉さん」
「あら、お圭ちゃんのためだもの。当然じゃない」
「は? え? お姉さん?!」
「「あら、言わなかったかしら?」」
「……」

 声を揃えて「ごめんなさい」という二人。

(似た者同士……姉弟。あれ? でも……)

 ふと思った違和感というか疑問。なのでそれを聞いてみた。

「言葉遣い……」
「ああ、アタシの……というより、家族の影響かしら」
「うちは女系家族なの。七人姉弟で、上六人が女。ちなみに、この人が一番上の姉で一回り上よ。アタシが一番下なの」

 そう教えてくれたのは瑠香と泪だった。

「女性にモテまくって刃傷沙汰になり、女性に嫌気がさしてオカマになったのかと思ってました!」
「あ、私も!」

 二人の話を聞いて、かよちゃんさんと麻ちゃんさんがそんなことを宣う。

「……アンタたち……。はあ……もういいわ。お圭ちゃん、帰りましょ? お腹空いたわ」
「あ、はい。瑠香さん、かよちゃんさん、麻ちゃんさん、ありがとうございました」
「お圭ちゃんもまたいらっしゃい。泪、アンタもよ。近いんだから、たまには顔くらい出しなさい」
「ハイハイ」

 もう一度三人にお礼を言い、店を出る。ペントハウスに向かう泪に手を引かれながら、美女な三人が羨ましいと思う。

「またそんな顔して。姉さんがあんなこと言うなんて珍しいのよ? 気に入られたんだから、自信持ちなさいな」
「泪さん……」
「さ、ご飯よ! 純和風が食べたいわ!」
「もう。相変わらずMy wayですね」
「あら! ふふっ、親父ギャグ?」
「はあ……。もう、いいです」

 クスクス笑う泪を横目に見ながら、早速あのエプロン使ってみようかな、と思うのだった。


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