45 / 155
圭視点
Tequila Sunset
しおりを挟む
「スゲー……」
「すごいね……」
「なにが?」
よくわかっていない葵はともかく、上の二人は私の指輪を見てある意味呆然としていた。
真琴も翼も「兄」という存在は初めてで、「オカマ」だの「キモイ」だの言っていた真琴もなんだかんだと泪を認めているし、翼に至っては「格ゲーしよう」と泪を誘い、私たちが「帰る」と言うまで、葵を交えて一緒になって遊んでいた。
泪も「妹」や「弟」という存在が初めてで最初は戸惑っていたようだけれど、いつの間にか三人に溶け込んでいた。それが嬉しかったのは、泪には内緒だ。
男三人が遊んでいる間、私は母と真琴の三人で御節の手伝いをしていたのだけれど、それも終わったので帰ることにした。
「あー……疲れた……」
「お疲れ様」
停めてあった車に戻り、車内を温めている時、ポツリと呟いた泪の言葉に労いの言葉をかけつつもクスクス笑う。
「でも楽しかったわ」
「それはよかったです。ところで、どこに向かってるの? 自宅の方向じゃないみたいだけれど……」
「ん? アタシの実家。今朝言わなかったかしら?」
泪の言葉に、そう言えば……と思い出す。
話しているうちにいつの間にか発車させていた車内での会話で、『二~三日アタシの実家に泊まるから』と、今朝になって急に泪に言われたのだ。私の実家に泊まる場所がないわけではないけれど、今年は泊まり客があるからと言われていたので、「じゃあギリギリまで居させてもらいましょ?」とギリギリまでいたのだ。
「でも、いいのかな……私なんかが行っても……」
「姉さんたちや父が『絶対に連れてこい』って言ったんだからいいのよ。それに、アタシの婚約者なんだから、『私なんか』って言わないの!」
「うん……」
泪はそう言ってくれたものの、本音を言えば不安は消えていない。けれど、その言葉がとても嬉しくて、膝の上に乗っている紙袋をキュッと掴んだ。
***
「さあ、ついたわよ」
「…………」
車をガレージに入れたあとで泪に案内されて玄関前に一緒に立っているのだけれど、思わず家を見上げてあんぐりと口を開ける。
(一般庶民的な我が家と比べちゃだめ。比べちゃだめだけど……!)
漫画でいうなら「どーん」とか「でーん」という擬音が似合うほど大きな家だった。思わず一歩引いてしまったのは仕方がない。逃げて帰ろうかという私の内心を察したのか、泪に手をガシッと掴まれ、「今更逃げるのはナシよ」と釘を刺されてしまった。
諦めていたら手を握ったまま泪に引かれ、一緒に玄関を潜る。
「ただいま」
泪の声に、奥からパタパタと走る音がしたかと思うと瑠香が現れた。
「お圭ちゃん、いらっしゃい!」
いきなり抱き締められて驚く。
(き……今日は私よりも背の高い女性に抱き付かれる日?!)
そんなふうに内心あたふたしながらも、「あ、あの」と言うと、「姉さん! お圭ちゃんはアタシのよ!」と泪にぐっと引き寄せられた。
「泪のケチ!」
「ケチじゃないわよ!」
「ふん! まぁ、いいわ。改めて……いらっしゃい、お圭ちゃん」
「こんばんは、瑠香さん。お招きありがとうございます」
「いいのよ。さあ、堅苦しい挨拶はナシ! あがってちょうだいな」
「はい。お邪魔します」
泪と一緒に瑠香のあとをくっついて行くと、八畳くらいの広さの座敷に通された。そこがお座敷だったので、どうしようと悩む。
足が悪い私はうまく正座できないばかりか、長い時間座れない。荷物を置く泪を待っているふりをして立っていると、泪が「あっ」と言って部屋を出て行こうとした瑠香を呼び止めた。
「姉さん、悪いんだけど、部屋を変えてくれない?」
「なんで? ……あっ! ごめんなさい、失念してたわ!」
そう叫んでパタパタと走り去る瑠香を不思議そうに見送っていると、泪に話しかけられた。
「一旦座りましょ? 足を伸ばしたままでいいからね?」
そう言われて初めて、気を使わせしまったのだと思い至った。
「ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
「だって……」
ゆっくりと腰を下ろしながら座り、言葉に甘えて足を伸ばすと、泪が私の後ろに座り込んで抱きしめて来た。
「ちょっ……泪さん!」
「背もたれ代わりよ。寄っかかって」
「でも……んっ」
「昨日は触れられなかったから、ちょっと触れるだけよ」
「あ……っ」
ぐっと後ろに引かれたかと思うと両胸を掴まれ、円を描くように回しながら揉み、首筋を舐める泪。
「あら残念……時間切れ。今夜は、この数日分もたっぷり可愛がってあげるからね♪」
そう言うと胸から手を離し、お腹の辺りで手を組んだ。
チュッと頬にキスをされると同時にパタパタと音がして「お待たせ」と言って瑠香が入って来たけれど、私たちを見て目を眇る。
「泪……イチャついてないで、一緒に来なさい」
「いいじゃないの、婚約者同士なんだから」
「皆の目のやり場に困るから言ってんのよ」
「ハイハイ、申し訳ございませんでした! 行きましょ? お圭ちゃん」
泪はそう言って立ち上がると、私をひょいと持ち上げて立たせてくれた。
「ありがとう、泪さん」
「どういたしまして。荷物はアタシが持つからね?」
「うん」
「用意はいいかしら? はい。じゃあ出発ー!」
泪が荷物を持ったと同時に瑠香の声がかかり、泪と二人でまた瑠架のあとをくっついて行った。
着いた先にはソファーとローテーブルがあり、ソファーには泪にも瑠香にも似た壮年の男女が座っていた。
「すごいね……」
「なにが?」
よくわかっていない葵はともかく、上の二人は私の指輪を見てある意味呆然としていた。
真琴も翼も「兄」という存在は初めてで、「オカマ」だの「キモイ」だの言っていた真琴もなんだかんだと泪を認めているし、翼に至っては「格ゲーしよう」と泪を誘い、私たちが「帰る」と言うまで、葵を交えて一緒になって遊んでいた。
泪も「妹」や「弟」という存在が初めてで最初は戸惑っていたようだけれど、いつの間にか三人に溶け込んでいた。それが嬉しかったのは、泪には内緒だ。
男三人が遊んでいる間、私は母と真琴の三人で御節の手伝いをしていたのだけれど、それも終わったので帰ることにした。
「あー……疲れた……」
「お疲れ様」
停めてあった車に戻り、車内を温めている時、ポツリと呟いた泪の言葉に労いの言葉をかけつつもクスクス笑う。
「でも楽しかったわ」
「それはよかったです。ところで、どこに向かってるの? 自宅の方向じゃないみたいだけれど……」
「ん? アタシの実家。今朝言わなかったかしら?」
泪の言葉に、そう言えば……と思い出す。
話しているうちにいつの間にか発車させていた車内での会話で、『二~三日アタシの実家に泊まるから』と、今朝になって急に泪に言われたのだ。私の実家に泊まる場所がないわけではないけれど、今年は泊まり客があるからと言われていたので、「じゃあギリギリまで居させてもらいましょ?」とギリギリまでいたのだ。
「でも、いいのかな……私なんかが行っても……」
「姉さんたちや父が『絶対に連れてこい』って言ったんだからいいのよ。それに、アタシの婚約者なんだから、『私なんか』って言わないの!」
「うん……」
泪はそう言ってくれたものの、本音を言えば不安は消えていない。けれど、その言葉がとても嬉しくて、膝の上に乗っている紙袋をキュッと掴んだ。
***
「さあ、ついたわよ」
「…………」
車をガレージに入れたあとで泪に案内されて玄関前に一緒に立っているのだけれど、思わず家を見上げてあんぐりと口を開ける。
(一般庶民的な我が家と比べちゃだめ。比べちゃだめだけど……!)
漫画でいうなら「どーん」とか「でーん」という擬音が似合うほど大きな家だった。思わず一歩引いてしまったのは仕方がない。逃げて帰ろうかという私の内心を察したのか、泪に手をガシッと掴まれ、「今更逃げるのはナシよ」と釘を刺されてしまった。
諦めていたら手を握ったまま泪に引かれ、一緒に玄関を潜る。
「ただいま」
泪の声に、奥からパタパタと走る音がしたかと思うと瑠香が現れた。
「お圭ちゃん、いらっしゃい!」
いきなり抱き締められて驚く。
(き……今日は私よりも背の高い女性に抱き付かれる日?!)
そんなふうに内心あたふたしながらも、「あ、あの」と言うと、「姉さん! お圭ちゃんはアタシのよ!」と泪にぐっと引き寄せられた。
「泪のケチ!」
「ケチじゃないわよ!」
「ふん! まぁ、いいわ。改めて……いらっしゃい、お圭ちゃん」
「こんばんは、瑠香さん。お招きありがとうございます」
「いいのよ。さあ、堅苦しい挨拶はナシ! あがってちょうだいな」
「はい。お邪魔します」
泪と一緒に瑠香のあとをくっついて行くと、八畳くらいの広さの座敷に通された。そこがお座敷だったので、どうしようと悩む。
足が悪い私はうまく正座できないばかりか、長い時間座れない。荷物を置く泪を待っているふりをして立っていると、泪が「あっ」と言って部屋を出て行こうとした瑠香を呼び止めた。
「姉さん、悪いんだけど、部屋を変えてくれない?」
「なんで? ……あっ! ごめんなさい、失念してたわ!」
そう叫んでパタパタと走り去る瑠香を不思議そうに見送っていると、泪に話しかけられた。
「一旦座りましょ? 足を伸ばしたままでいいからね?」
そう言われて初めて、気を使わせしまったのだと思い至った。
「ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
「だって……」
ゆっくりと腰を下ろしながら座り、言葉に甘えて足を伸ばすと、泪が私の後ろに座り込んで抱きしめて来た。
「ちょっ……泪さん!」
「背もたれ代わりよ。寄っかかって」
「でも……んっ」
「昨日は触れられなかったから、ちょっと触れるだけよ」
「あ……っ」
ぐっと後ろに引かれたかと思うと両胸を掴まれ、円を描くように回しながら揉み、首筋を舐める泪。
「あら残念……時間切れ。今夜は、この数日分もたっぷり可愛がってあげるからね♪」
そう言うと胸から手を離し、お腹の辺りで手を組んだ。
チュッと頬にキスをされると同時にパタパタと音がして「お待たせ」と言って瑠香が入って来たけれど、私たちを見て目を眇る。
「泪……イチャついてないで、一緒に来なさい」
「いいじゃないの、婚約者同士なんだから」
「皆の目のやり場に困るから言ってんのよ」
「ハイハイ、申し訳ございませんでした! 行きましょ? お圭ちゃん」
泪はそう言って立ち上がると、私をひょいと持ち上げて立たせてくれた。
「ありがとう、泪さん」
「どういたしまして。荷物はアタシが持つからね?」
「うん」
「用意はいいかしら? はい。じゃあ出発ー!」
泪が荷物を持ったと同時に瑠香の声がかかり、泪と二人でまた瑠架のあとをくっついて行った。
着いた先にはソファーとローテーブルがあり、ソファーには泪にも瑠香にも似た壮年の男女が座っていた。
55
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる