オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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泪視点

Wedding Bells Dry

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(……いつまでしがみついてんのよっ!)

 煮えくり返る感情そのままに圭を睨み付けるように見ていると、前嶋が俺を見た。

「と、いうことで、泪さん、を泣かせたら許さないぞ?」
「当然でしょ? 絶対に幸せにするわ、

 やさぐれた気分でそう言ってやろうかと思ったのだが、前嶋の真剣な顔を見て止めた。パッと顔を上げた圭は、俺よりも先に前嶋を見て、次いで俺を見たため不機嫌な顔になってしまうのは仕方がない。前嶋に向けて二重の意味を込めて言うと圭は慌てて前嶋から手を離し、前嶋は器用にも片眉を上げて圭から手を離したので、不機嫌なまま瑠香のほうを見ると苦笑していた。
 すぐに前嶋は戻って来て瑠香の隣に座り、手をポンポンと叩いている。その仕草はあまりにも自然で、まるで長年の恋人同士のようだった。

「長年の恋人同士みたい……」

 ポツリと呟くと、二人は一瞬びっくりしたような顔をしたのたが、すぐに戻る。
 圭がコーヒーを持って来て全員に配ると、俺の隣に座った。前嶋の隣に座ると思っていたから俺の隣に座ったのが嬉しくて、思わずギュッと抱き締めてから離した。

「……そういうこと、なんでしょ?」
「ダメ……かしら……?」

 俺を窺うような瑠香の言葉は珍しい。珍しいが、瑠香が前嶋を好きなことくらいとっくにわかっていたため、当然OKなのだが。
 圭をちらりと見るときょとんと首を傾げていて、次いで、急に目を泳がせ始めた。

(あ……。圭に、姉さんが離婚したって言うの忘れてたわ……)

 絶対に愛人とか不倫とか勘違いしてるだろうと思って

「姉さんは離婚してるから愛人じゃないわよ」

 と言うと、如何にもホッとした表情で「そうなんだ。離婚してるんなら安心だね」と言ったあとで、驚きの声をあげた。

「もう……。お圭ちゃん、驚きすぎよ?」

 瑠香に苦笑されつつも、圭は口をあんぐりと開け、ある意味放心状態だったので放置することにした。

「離婚するつもりでいろいろ交渉してたんだけど、決定打がなかなかなくてね。でも、あっさり離婚できたから大丈夫」

 と、瑠香は圭をからかうようにカラカラと笑った。そんな瑠香の表情はとても幸せそうで、弟としては嬉しい反面、なぜか寂しい。

「その報告も兼ねて泪に会いに来たの」

 家から出るんだろうな……という思いで瑠香に

穂積いえはどうするの?」

 と聞くと、前嶋がすかさず「俺が婿養子に入る」と言った。驚いて声をあげようとしたら先に圭に驚かれてしまい、半分八つ当たり気味に煩いと言ったら「うぅ……泪さんひどい……」としょんぼりさせてしまったが、先ほど前嶋に抱き付いた件があるので、それでチャラにしようと決めた。

「ま、いいんじゃない? アタシは反対しないわ。あとは父さんと母さん次第でしょ?」
「あ、それは大丈夫。もうOKもらったから」
「早っ! さすが姉さんよね」
「褒め言葉として受け取っておくわ。まあ、籍を入れるにしても式を挙げるにしても、どっちみち半年後だしね」
「『その間にいろいろと覚えろ』と社長に言われたがな」

 そう言った前嶋は、圭と会話している時よりも嬉しそうだった。

 そのあともいろいろと話をし、帰り際に瑠香から「預かりものよ」と小さな箱を渡された。圭は前嶋から四角い箱をもらっていた。

「何をもらったの?」

 二人が帰ったあとでそう聞くと、圭は箱を開けてくれた。中にはブレスレットと、圭と俺宛ての手紙が入っている。

(なんでアタシ宛てもあるの?)

 不思議に思い、手紙を開いて読む。その内容に納得する。

(確かに……。これならそう見えないし、なら、確かに必要だし、もし何かあった場合、探すのも楽よね)

 そんなことを考えながら、そう言えば姉さんも色違いで同じようなブレスレット嵌めてたわね……と先ほど来た瑠香の手首に嵌まっていた物を思い出しながら手紙を畳んだ。

「泪さんは何をもらったの?」

 箱のサイズから予想はつく。まさかね……と首を捻りながらも小さな箱の蓋を上げると、大小二つのリングと、俺宛てのメモが入っていた。

「ペアリング……?」

 驚いたような声の圭を他所に、メモを読む。

 『泪へ

  ご所望の品ができたので、渡すわね。
  暇だったから、自分の工房で作っちゃった!
  泪のあの言葉はすごく嬉しかった。
  だから、将来を楽しみにしてるのと
  結婚祝いってことで、代金はいらないわ♪

  幸せにね。



  瑠璃』


 メモの内容に思わず苦笑してしまった

「もう、瑠璃姉さんったら……。これ、『結婚指輪にどうぞ』ですって」
「えっ」
「左手出して?」

 式の予定なんて立ててないのに……と思いつつも、瑠璃の気持ちは嬉しかったので早速圭に左手を出してもらい、一旦婚約指輪を外して結婚指輪を嵌め、その上から婚約指輪を嵌め直す。圭の顔を見ると、目に涙が溢れ、手も微かに震えていた。

「アタシにも嵌めて?」

 左手を差し出すと、震える手で手を掴まれ、指輪を薬指に嵌められる。

(まるで、二人きりの結婚式みたいよね……)

 万感の思いで圭をギュッと抱き締めてから腕を緩ませ、顔を近付ける。閉じられて行く圭の瞼に俺も瞼を閉じ、唇にキスをした。

「式はまだ考えてないけど……とりあえず今は、予定通り役所に行きましょうか」
「うん」

 圭の手首にブレスレットが嵌められたのを確認すると、自分の手を差し出す。当たり前のように、その上に重ねられる圭の手。幸せを噛み締めながら、繋いだ手のまま出かけた。

 ――この日、心から欲した女、在沢 圭は俺の妻になった。


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