転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮

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北の国・スティーリア篇

あしどめでしゅ

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 起きたとたんに、雪の中でゴロゴロした件について、「戦えないんだから危ないでしょ!」と、大人たち全員に叱られました!
 当然のことながら、バトラーさんが近くにいたから魔物たちが寄ってこなかっただけで、もし私だけだったら確実にフォレストウルフに襲われていたとのこと。
 まあ、前もって許可を得ていたから誰かがいたのであって、黙って外に出るなと言われました。
 ですよねー!
 もちろん、一人で勝手な行動をしないと誓わされました。まあ、するつもりはないが。
 だってこあいもん、大人たちが。特にセレスさんが。
 まだ生きていたいです。
 そんなわけで、短時間の説教は終わり、これからの予定を聞いたのだが。

「ここにとまる、でしゅか?」
「ええ。当分雪が止みそうにないことと、門が閉まっていることが原因ね」
「しょれは……」

 門が閉まっているなら中に入れないもんね。
 テトさんによると、私が寝ている間に、町に偵察に行ったんだって。その時はまだ門が開いていたんだけど、門番と話をしている途中で、冒険者が駆け込んできたらしい。
 どうしたのかと門番が聞く前に、雪の中を移動している隊商が到着。その人たちの話を総合すると、盗賊と魔物に次々と襲われたそうだ。
 盗賊は退治したものの、血の臭いに釣られたのか、フォレストウルフの群れとブラウンベアに襲われてしまった。どっちもお腹を空かせていたらしく餌認定されてしまったという。
 そのままだと商品も人も危ないからと、護衛をしていた冒険者たちが斬り捨てた盗賊たちを放って逃げ、盗賊たちを餌にすることで町まで逃げることができたらしい。
 ……やっぱり、命が軽いというか、命を大事にしない世界なのかなと考えたり。

「この時期にブラウンベア? おかしくないか?」
「そうだよね。セバスは何か知っているかい?」
「この国は、今年は春からの気候が安定していませんでしたからね。もしかしたらそのせいで、作物が育たなかったのかもしれません」
「気候が変動すると、山も森も作物が育たないもの。しかも、人間たちは自分たちが作ったものが不作となると、山や森から奪ってきている可能性もあるわね」
「ああ、そういうことか」

 なんとも胸が痛むというか、物騒というか。
 日本にいた時もそうだったけど、気温や気候の変化で作物が育たないとか、育っても実入りがよくないなんて話はニュースでも聞いた。そこに台風や豪雨、地震などの被害があったりすると、きちんと育っていたとしても、被害は出る。
 それと同じで、この国も何かしらの被害を被って不作となり、その分は山や森から採取してきたんだろう……森に棲む動物や魔物たちのことを考慮せず、無遠慮に持ってきたんじゃなかろうか。
 今まで移動してきた中で大人たちが話してくれた常識を聞く限り、地球のように大量生産ができるわけでもなければ、簡単にあちこち移動できる手段も限られている。地球では季節を問わず旬ではない野菜や果物、魚が食べられたけど、この世界はそうではないのだ。
 冷凍保存や長期保存できるような冷蔵庫などはないけれど、時間が経過しないマジックバッグがあるのはとても便利。だけど、ビニールハウスや温室のように温度管理をして作るという発想がないため、その季節が終わったら次の季節まで旬のものが食べられない、ということなのだ。
 もちろん、保存食として乾燥させた野菜や果物もあるし、塩漬け肉もある。それでも、作る量や技術的な問題で、長期保存ができるようなものは極わずかだそうだ。
 だから、保存食を作るのは食料がほとんどなくなる冬のために作るから、収穫の多い秋に作るのが鉄板なんだけれど、不作となると保存食どころか税を払うのすら難しくなるらしい。
 備蓄があればいいが、そういうのは国や領主がやることであって、町や村、個人ではやらない。やってもこの国のように冬場は家に籠るようなところばかりだそうだ。
 そういった事情もあり、国や領主が備蓄を放出しないと食料がなくなり、山や森に出かける。しかも森や山も被害を受けているから、どうあがいても食料が足りない。
 そうすると隊商を組んだり個人で移動している商人たちを襲って食料を奪う、盗賊に成り果てるしかなくなるし、人間たちが採り尽くしたせいで動物や魔物たちも食料を探し求め、平地や畑に出てくる。
 ウルフ種はともかく、ベア種は冬眠するために、秋は食料を食べて体内に栄養を蓄えないといけないのにないから冬でも彷徨い、動物や魔物の他に人間たちを襲って食べる。そして一度でも味を覚えてしまうとより一層狂暴になり、人間だけを襲うようになってしまう。
 それが、隊商を襲ったベアだろうと、大人たちが溜息交じりに教えてくれた。
 こわっ!
 そんな事情もあり、ベアが討伐されるかどこかに移動するまで、門を閉めることにしたらしい。当然のことながら、盗賊の残党が襲って来ないとも限らないので、その警戒のためでもあるそうだ。

「とうばちゅたいはでないんでしゅか?」
「出すと言っていたよ。町の中で調味料を買って町から出る時、兵士と冒険者が門に集まっているのを見たから、もう出ている可能性もあるね」
「兵士も冒険者も、盗賊や魔物に慣れているからな。ベアのレベルと討伐隊の人数にもよるが、恐らく人間たちが負けることはないだろう」
「しょうでしゅか」

 魔物だけじゃなく、人間たちも弱肉強食。どちらも負ければそこで終わりの世界だもんね。そりゃあ驚異に対して真剣にもなるし、対処もするだろう。
 長々と話をしたが、そんなわけで門が開くまではこの場所で待機。薪は隣の森もどきから倒木を拾ってくるんだとさ。
 溜め込んでいるとはいえ、一冬ともなると確実に足りないのかもしれないし、町で買うわけにもいかないんだろう。
 まあ、盗賊が押し寄せるような場所に行きたくないっていうのもあるんだろうね~。

 犯罪者ホイホイな美幼女はいるし。
 同じく犯罪者ホイホイになりそうなイケメンと美女はいるし。

 しかも、数ヶ月は雪に閉じ込められるんだぜ? 逃げたくとも逃げられんがな。
 それだったら、神獣である大人たちからすれば超~楽な移動距離で、人間たちにとってはちとキツイ場所にあるここが適切だと考えたとしか思えない。だって、彼らは雪の上を歩けるけれど、町にいる人間は雪をかき分けながら歩くしかないんだから。

「いちゅまれここにいるでしゅか?」
「そうですね……、とりあえず今日と明日はここにいることになります。あとは門の開閉と、町の様子次第ですが……。テト、町の様子はどうでした?」
「ボクの感覚だと、町の中に定住はやめたほうがいいね。盗賊と魔物の件もあるけど、食料自体が少ないのが気になった」
「やはり、不作の影響は出ていますか」
「ああ。町の人の話や噂話を聞く限り、国と領主が動いたみたいだけど、一部じゃなくて全国的な規模での不作だから、どうにもならないみたい。それによって商人たちが不当に値段を上げたみたいでね」
「「「「「ああ……」」」」」

 大人たちに交じって、私も溜息をついたよ。
 いるよね、食材を買いあさって溜め込み、儲けようとわざと値段を上げる商人が。商人なら独自ルートがあれば他国から商品を買うことができるけれど、その地にいる住民たちはそうじゃない。
 商人から買うしかないから、本当に必要なものは高くても商人から買うしかないわけで……。領主や国にバレたら、のちのち困ることになるのは商人だと思うんだけどなあ。

「交代で様子を見て、ダメそうならここで一冬を超すか、東か西に行くかしたほうがいいね」
「そうですね。そこはわたくしたち全員で見極めてから、結論を出しましょう」
「危ないから、ステラは連れて行かないぞ」
「しょこはわかってるでしゅ。みなしゃんとはにゃれたくないでしゅ」

 一人っきりで生きていけるとも思えないしね!
 そんなことを言えば、五人の大人たちは微笑みながら、私の頭を撫でてくれた。くふ。
 外はまだ大粒の雪が降っているが、第二弾の偵察として、これからバトラーさんとセレスさんが様子を見に行ってくるんだそうだ。その内容と、明日も午前中から大人たちが次々に変装したりしながら、町に様子を見に行くんだって。
 この世界のスパイスや、この時期に採れる食材を教えてほしいというと、お土産に買ってきてくれるというので頷いた。

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