転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮

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1巻

1-3

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 街を歩いていると、露店でものを販売している人もいて、ギルドに頼らず自分でこうやって売るのはありかもと考えた。
 どうすればいいかは、スマホで検索すればわかるだろうしね。
 そこでさっそく、ちょっとわき道に入って検索してみる。すると街によって細かい決まりが違うので、詳しくは商人ギルドで聞けばいいと書かれていた。

「商人ギルドねぇ。どんなところなんだろう? 冒険者ギルドとどう違うのかな?」

 それも検索してみると、露店を含めた店を持つ人用のギルドで、店で使う材料の仕入れを仲介してくれるそうだ。
 他にも、びんを作る材料である砂のように、大量に必要となる材料の発注を受けてくれたり、冒険者に依頼してダンジョン産のものを仕入れてくれたりもするみたい。
 土地や建物の管理、販売もやっているようだ。
 この世界では店を持つことに資格はいらないみたいだし、案外簡単そう。これなら、自分で店を持ってもいいかもしれない。
 いきなり建物を借りるのはリスキーな気がするから、ためしに屋台から始めるのもありだよね。
 とはいえ露店や店を開くにしても、この街では出したくない。定住先を決めたら商人ギルドで聞いてみよう。
 アントス様のスマホ情報によると、タンネの街から王都まで馬か馬車で三日から四日かかるらしい。
 その間にも大小いくつかの街があるようなので、きっとどこかでいい定住先が見つかるだろう。
 これから何日も旅をするとなると、アントス様にもらった食材だけでは絶対に足りない。なので、まずは大量の食材を買うことにした。
無限収納インベントリ】だからね~、私のリュックは。この中に入れておけば時間が経過しないので腐る心配はないし、好きなものを好きなだけ買っても大丈夫。
 食べ物のことを考えていると、お腹がすいてきた。
 決めたからには即行動!
 まずはご飯を食べようと、途中で飲み物と食べ物を買い、周囲の真似をして食べ歩きをする。
 紅茶とロック鳥という魔物の串焼きを買ったんだけど、串焼きは塩加減がいい塩梅あんばい美味おいしい!
 ハーブの味もするから、もしかしたらハーブ塩を使っているか、肉をハーブに漬け込んでいるのかもしれない。
 フードを被っていたからなのか、嫌悪けんお感を出されることなく普通に買うことができてひと安心。
 次に果物や野菜を売っているお店を見つけたので、そこで青いリンゴとバナナを買い、野菜セットも三セット買う。するとおまけでオレンジを二個くれた。
 嬉しくてお礼を言ってまた歩き始め、今度はお肉を売っているお店を見つけたので、干し肉とベーコンとチーズ、ホーンラビットとオークのお肉を買った。
 ホーンラビットやオークは、この世界にいる魔物と呼ばれる生き物のお肉で、庶民の食卓にのぼる食材のひとつらしい。
 冒険者や騎士が狩って、市場に流しているんだって。
 森の中だけではなく、ダンジョンでも狩ることができるんだとか。
 もし薬草採取でダンジョンに行くことになったら、狙ってみようかな? 狙って出るのかな?
 卵も置いてあったので、それも購入する。
 ついでにミルクも三本購入する。
 ミルクが入っているびんは、中身の時間が経過しない魔法がかけてあるらしく、このびんを持って行くと、別のお店でもミルクを入れて売ってくれるらしい。
 どの国に行っても、同じ大きさのびんが使われているからこそ、できることなんだそうだ。
 おお、これはいいことを知った。定住先が決まったら、活用しよう。
 まあ、それはそれとして。
 そのあとパン屋さんでパン、雑貨屋でハーブと乾燥野菜を数種類に紅茶の茶葉、道具屋で大きさの違う鍋を三つとフライパンをふたつ。
 さらに紅茶用のポットに木の食器と木のカップ、スプーンとフォーク、包丁ほうちょうとまな板を買い、三十分ほど散策したあとで街を出た。
 そしてまた採取と休憩をしながら、一時間ほど歩いた頃。

「やっと見つけた!」

 そう声をかけられて振り向くと、全身よろいを身につけ、腰に剣を差した体格のいい男性がいた。
 黒髪の短髪。声は低めで、渋い感じだ。とある声優さんの声に似ていて私好み。
 背中では長いマントが風になびいている。
 見た目は三十代前半かなかばといったところか。
 男性は私に向かってニカッと笑い、手を上げた。そのうしろには、とても大きな馬のような生き物がいる。
 だけど、この世界の馬は地球と同じ四本脚だと、アントス様が授けてくれた知識が教えてくれる。
 男性が連れている馬は八本脚で、アントス様の情報によるとスレイプニルという軍馬らしい。
 おお……神話の世界の馬がいるとは驚いたよ。まさか実物を見れるなんて!
 しかも、綺麗きれいな黒毛。
 そんなわくわく感を綺麗きれいに隠し、男性に向き合う。

「……なにか用ですか?」
「ああ。君の啖呵たんかしびれてさ! あのおっさん、以前から価格を誤魔化ごまかしているって噂になってたんだよ。俺も査定を低く言われたクチだから、きみの言葉が嬉しくて」
「そうですか」
「あとお願いがあって、できれば俺にポーションを売ってほしいんだ。そのために君を探していた」

 スレイプニルを連れているのは凄いなあ……なんて内心で驚いていたら、いきなりそんなことを言われて、もっと驚く。

「えっと……失礼ですけど、冒険者の方ですか?」
「ああ、ごめん。俺は騎士なんだ。これから王都に帰るところなんだが、手元にあるポーションだけじゃ心許なくてなあ……。よかったら売ってくれないか?」

 私の服には、アントス様を含めた複数の神様たちの加護がついている。
 だからこの服を着ていれば、私に危害を加えようとしている人は私に近づけないし、姿も見えないようになっているとアントス様が言っていたのを思い出す。見えているこの人ならいいかと売ることにした。
 もちろん、なにがあるかわからないから、警戒はおこたらないようにしないとね。

「別にいいですけど……」

 そううなずくと、こんな往来でのやり取りは目立つからと言われて、街道の途中にある休憩所に移動することに。
 歩いて行こうとしたら軍馬に乗せてくれるって言ってくれた。それはいいんだけど……

「あの、私は馬に乗ったことがないんです。それに、貴方の馬は嫌がりませんか?」
「ブルルッ」
「大丈夫だって言ってる」
「そうですか。……お馬さん、よろしくね」
「ヒヒーン!」

 そっと手を伸ばして私の匂いをがせてから鼻面はなづらでると、スレイプニルはひと声鳴いた。
 そして黒髪の男性は私を軽々と持ち上げて馬に乗せると、そのうしろにやすやすとまたがった。

「最初はゆっくりと歩かせる。慣れて来たら走らせるが……それでいいか?」
「はい」

 軍馬はカッポカッポと足音を響かせて歩いていく。その間、私は馬に乗るコツをレクチャーしてもらう。
 軍馬の名前を聞いたら、スヴァルトルだと教えてくれた。
 そのとき私たちは今さらながら自己紹介をしていないことに気づいて、お互いに名乗ることになった。

「俺は魔神族のエアハルトという。騎士をしている」
「魔神族で、リンと言います。薬師です」
「へえ! 魔神族の薬師なんて、初めて会ったぞ」
「……そうですか」

 本名を名乗ったらダメだと二人の神様にきつく言われているので、『リン』と名乗った。
 この名前は私の愛称で、小学生のときから呼ばれ慣れているから、すぐに反応できるしね。
 ギルドタグにも『リン』と記載してもらってあるから、嘘だと言われることはない。……本名を名乗れないことに、罪悪感を覚えるだけで。
 そのあと、私は魔神族だけどハーフだと伝えると、驚かれた。
 そういった人も中にはいると聞いていたけれど、やはり珍しいものではあるらしい。
 少しだけ雑談をしてから、そろそろスヴァルトルを走らせると言われたので、前を向く。
 ゆっくりだった動きが徐々に速くなり、景色が流れていく。まるで、電車やバスに乗っているみたいだ。普通の馬よりも明らかに速いと思う。
 お腹のあたりにしっかりと彼の腕が回されているからなのか、落ちるという心配や不安はなかった。
 私自身も、馬のくらに掴まっているしね。
 それにしても……たくましい腕と大きな手だ。
 そして馬を走らせること三十分、街道沿いにある休憩所に着いた。かなり広いスペースが木のさくで囲まれていて、ベンチやテーブルが置かれている。
 お昼時を過ぎているからなのか、誰も休憩している人はいなかった。
 馬から降ろしてもらったけど、慣れない乗馬で足腰とお尻が痛い。それを隠して適当な場所に座る。

「ポーションはいくつ必要ですか?」
「リンはいくつ持っているんだ?」
「ポーションとポイズンポーション、パラライズポーションを十本ずつしか持っていないんですけど……」
「へえ……ポイズンやパラライズもあるのか……。それも売ってもらってもいいか?」
「構いません」

 三種類もと驚きつつ数を聞き、リュックの中にあるポーションを出す。
 ちなみに、ポイズンポーションはポーションよりも高く、私のは販売価格が千二百エンになった。一般的な適正販売価格は、六百五十エンらしい。


【ポイズンポーション】‌レベル5‌
  毒を消す薬
  患部にかけたり飲んだりすることで治療できる
  適正買取価格:八百エン
  適正販売価格:千二百エン


 こんな感じなのだ、私が作ったポイズンポーションは。
 おおう、凄いじゃないか、私が作ったポーション類って。一般的なものの、ほぼ倍の値段だよ!
 パラライズポーションもポイズンポーションと同じ値段で、売価は千二百エンとなかなかの値段だ。
 エアハルトさんも【アナライズ】が使えるようで、売価についてはすんなり決定する。

「へえ……本当にレベルが高いポーションなんだな。これならひとびんじゃなく半分以下の使用ですむから助かる」
「お役に立てたならよかったです。じゃあ、私はこれで」
「おいおい。これで、じゃないだろう? これから歩くにしたって、次の休憩所まで徒歩で行くとなると、夜になっちまうぞ? しかもその間には村や町もないし野盗も出るし、魔物も活発になるから危険だ」
「え……」

 その情報に驚く。まさか、村すらないなんて。アントス様の情報にもそこまで詳しいものはなかった。
 アントス様~、そういうのはちゃんと言ってくれないと困るんだけど!
 スマホで地図が見れるようにしてもらえばよかったよ……トホホ。
 どうしようかと悩んでいると、エアハルトさんが質問してきた。

「リンはどこへ行くつもりだったんだ?」
「別の街か、王都に行こうと思っていました。実は私、定住先を探しているんです。少なくとも、ポーションを適正価格で買ってくれるギルドがあるところを……」
「ああ、それはいい判断だ。タンネの街には魔神族よりも人族のほうが多いから差別が少なからずあって、濃い髪色の人間や獣人たち、ドラゴン族は適正価格で取引できないことのほうが多いんだよ。まあ、そのせいで冒険者が他へ流れて、ダンジョンの攻略が遅れてるんだけどな。ギルマスは悪いやつじゃないんだが、どうにも煮え切らないというか……」
「そうなんですか……」

 やっぱり差別があるのかとがっかりしたし、売らなくてよかったと思った。

「どうせ住むなら、王都にするといい。人が多いから価値観も多様だし、差別されることもないだろう」

 そんなエアハルトさんの言葉で、私は期待に胸をふくらませる。
 そこでなら私も住めるだろうし、ポーション屋を開けると思ったからだ。
 自活するなら、できるだけ差別がなくて、安全なところのほうが安心だしね。
 それに、王都なら材料も集まりそうでしょ? ポーション屋を開くなら、いい場所だと思った。
 そういえば、どうして黒髪が嫌われるのだろう。エアハルトさんに聞いてみたところ、それは魔力が高い人ほど髪の色が濃くなるからだそうだ。
 だから一見黒髪に見えても、実際は赤だったり青だったりと、いろんな髪色なんだそうだ。
 主に人族は魔力が高い人を敬遠する。
 特に魔神族は全種族の中でも魔力が一番高いため、生まれつき髪の色が濃い人が多い。
 それゆえに、魔神族自体が人族から嫌われているらしい。
 他にも、ドラゴン族や獣人族も身体能力が高いことから、嫌われたり忌避きひされたりすることが多いんだそうだ。
 もちろん、人族が他の種族よりおとっているなんてことはない。
 人族であっても、努力すれば魔力は高くなるし、それに応じて髪の色も濃く変化していくので黒髪に見える人もいる。
 つまり、完全な偏見というわけ。

「うわ~……くだらないというかなんというか……」
「だろう? だからリンが落ち込んだりする必要はない」

 そんなエアハルトさんの言葉に、なんだか心が軽くなった気がした。
 しかも、特に差別的なのは、異世界人を召喚ばかりしていた国の人たちだと聞いて、なんだか納得してしまった。
 さっさとこの大陸に送ってもらえてよかった~。

「で、王都まで行くなら、俺が一緒に行ってやるが……どうだ?」
「え……?」
「女の一人旅は大変だし危険だろ? というか、誰か頼れる人はいないのか?」
「孤児なのでそんな人はいませんし、両親の顔すら知りません」
「悪いことを聞いた……すまなかった」

 頭を下げたエアハルトさんに、気にしてませんからと言い、改めて同行をお願いすると喜んでくれた。
 心根の悪い人には見えないし、ここまで一緒に来てみた印象から、この人なら大丈夫だろうと思ったのだ。
 スヴァルトルも休憩できたし、私たちも休憩できた。
 陽が暮れる前に次の休憩地点に行きたいというのでそれにうなずき、エアハルトさんは軍馬を走らせた。
 村と休憩所を通り過ぎ、軍馬で二時間ほど走ると、さっきと同じような場所が見えてきた。
 そこには馬車が数台と、騎士や冒険者のような格好をした人たちが複数組いる。
 エアハルトさんによると、あの人たちは護衛として商人に雇われている人たちか、他の街に行く冒険者らしい。
 この場所に限らず、どこの休憩所にも魔物避けの結界が張ってあって、夜に襲われる心配はないそうだ。
 おお、そんな便利なものがあるんだ。魔法がある世界って凄い。

「そうだ、リンはテントを持っているのか?」
「ありますので、心配しないでください」
「そうか、ならよかった」
「あと、見張りはしなくていいんですか?」

 休憩所の結界で魔物は防げても、野盗や盗賊とうぞくは防げないので、そこはしっかり警戒しないといけない。

「ああ、大丈夫だ。休憩所には馬車や商隊がいるし、他の冒険者もいる。もちろん結界が張ってあるから、魔物のこともそれほど気にしなくていい。ただ、別の意味で自衛は必要だがな」
「ああ……なるほど」

 エアハルトさんの、冷ややかで侮蔑ぶべつするような視線にうなずく。
 私たちが入って来たときから、ギラギラとした、値踏みするようないやらしい視線をいくつも感じていたからだ。絡みつくような視線が鬱陶うっとうしい。
 まあ、テントの中に入ってファスナーを閉めてしまえば、【ハウス】の結界が発動するようになっているとアントス様に言われているので不安はない。
 よこしまな心を持つ人は結界がはじいてくれるし、無理に攻撃するとそれを反射するそうなので、大丈夫だと思う。

「私のテントは特別製なので」
「特別製?」
「ええ」

 そんなことを言いながら【ハウス】を出し、それをテントになれと念じながら地面に置くと、私一人なら充分な大きさのテントが出来上がった。
 それを見たエアハルトさんが驚いている。

「ああ、特別ってそういうことか。上級ダンジョン産のなんだな」
「そうなんですか?」
「ああ。知らなかったのか?」
「はい。赤ん坊の私が捨てられていた場所に、一緒に置いてあったと聞いているので」

 そこまで言えば、私が孤児だということを思い出したのだろう……エアハルトさんが痛ましそうな顔をした。けど、それは見なかったことにする。
 同情されても困るし、【ハウス】の入手方法については知らないふりをしたほうがいいと神様たちに言われていたので、そう伝えたのだ。
 私はテントのファスナーを開けて中にリュックを置き、【生活魔法】でランタンに火をける。
【アナライズ】同様に【生活魔法】は誰でも使えるスキルだそうなので、使っても怪しまれることはない。これもアントス様から授かったスキルだ。
 聞いていた通り、中にはこの世界の寝袋が置いてあった。
 寝袋と言いつつも、足や腕を通すところがあって、着たまま歩ける形だ。とてもあったかそうで、寝るのが楽しみ!
 それから周囲に転がっている石で簡単なかまどをふたつ作ると、テントに戻ってリュックの中から鍋やまな板と包丁ほうちょう、乾燥野菜と干し肉や、里芋に似たタル芋を出す。
 まず、タンネで買ったホーンラビットのお肉をまな板の上に出して、一口大に切ってから塩とスパイスを振りかけてみ込み、そのまましばらく置いておく。
【生活魔法】で水を出して鍋の中に入れ、その中に皮をいて切ったタル芋と乾燥野菜を入れる。
 そして干し肉を細かく切り、鍋の中に入れて火にかけた。
 魔法って本当に便利だなあ。

「エアハルトさん、スープを作るんですけど、飲みますか?」
「いいのか?」
「はい。ここまで連れて来てくれたお礼です」
「じゃあ、頼む」

 わかりましたと返事をして水を足し、乾燥野菜と干し肉を追加で出すためテントへ戻ろうとする。すると、エアハルトさんが自分の持っていた分をくれたので、それを足した。
 もうひとつのかまどにフライパンをのせてバターを溶かし、その中に下味をつけたお肉を入れて焼く。
 それから買ったパンをかまどのそばで温め始めたのを見て、エアハルトさんも自分のパンを出して同じように温め始めた。
 お肉をひっくり返して焼き色や弾力を確かめ、これなら中まで火が通っているだろうと笑みを浮かべると、エアハルトさんの喉がゴクリと鳴った。

「お肉も食べますか?」
「ああ」

 エアハルトさんが即答したことに苦笑し、火加減に気をつけながらスープの味付けをする。
 味見をするといい塩梅あんばいだったので深皿とプレート、スプーンとフォークを出す。彼も自分の分を出してきたので深皿とプレートだけを受け取り、まずはスープを渡す。
 お肉もいい感じに焼けたのでフライパンごとかまどから下ろし、お肉をお皿にのせてエアハルトさんに渡した。彼が食べ始めるのを見て、私も自分の分をよそう。
 ここでは食事の挨拶あいさつはないそうなので、私は心の中でいただきますと言い、食べ始めた。

「うん、美味うまい!」
「お口に合ってよかったです」

 ニコニコと笑みを浮かべて食べるエアハルトさんにホッと胸をで下ろし、パンを半分に千切る。
 一口食べたけど味気なかったから、そこにお肉をのせて食べた。
 ……うん、このほうがまだマシだ。パンが肉汁を吸って、いい味になってる。
 それを見たエアハルトさんが真似をして一口口にすると目をみはり、凄い勢いで食べ始めた。
 お肉とスープのおかわりをよそって渡すと、満足そうに目を細めるエアハルトさん。
 それを見て、私もスープやお肉をおかわりする。それらを食べながら周囲を見回せば、あちこちでテントが張られ、グループごとに食事が始まっていた。
 中には女性冒険者も何人かいて、女が私だけじゃないことにホッとする。
 エアハルトさんがいるとはいえ、女一人だと心細いし、テントの中に入ってしまえば安心だと言われていても、やっぱり怖い。
 夜は冷えるというのでかまどき火はそのままにし、今度は小さい鍋にお湯を沸かし始める。
 その間にお皿やフライパンなどを【生活魔法】で綺麗きれいにしていると、エアハルトさんがき火にまきをくべてくれていた。
 お湯が沸いたのでタンネの街で買った茶葉を出し、それでお茶をれる。
 疲れが取れるという茶葉だそうで、休憩所のあちこちから同じ香りがただよってきていた。

「エアハルトさん、カップはありますか?」
「ああ。お茶もくれるのか?」
「もちろん」

 私がうなずくと、エアハルトさんは嬉しそうな顔をしてカップを差し出してきたので、それに入れて渡す。

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