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17.いつもこういうことをしてるのか?
しおりを挟む戸惑う龍介を、無理矢理取り出して口に含む。顔は見上げず、ひたすら舌先を小刻みに使って育て上げる。
位置を入れ替えると、鍵をかけたドアに胸を預け、腰を突き出した。下着ごとパンツを下ろす。狭い個室の中だ。龍介の昂ぶりを挑発するように腰をこすりつけかながら、百樹は自分で見せつけるように双丘を広げた。
「……ッ!」
龍介が、観念したように呻く。少しの口淫だけではっきりと開いていたカリが、秘所を性急に割った。
百樹のそこは、昨夜の名残でまだ柔らかく、龍介を簡単に受け容れる。
「あっ、んっ、カリ当たる、さいこ……」
淫らな言葉を口にしてやると、吹っ切れたのか、龍介は激しく抜き差しを始めた。
淫らな体液がくち、くち、と音を立て、ドアはガタガタと鳴る。いくらひとけのないトイレだといっても、こんなに音を立てたら人が来てしまうかも知れない。
でも、それが悦かった。
龍介もこの状況に興奮しているのだろう。百樹の片足を大きく上げさせ、角度を変えるとさらに突き上げてくる。苦しい体勢のはずなのに、その、無理矢理に貪られる行為にさえ感じてしまう。
触れられてもいないのにきつく立ち上がった乳首が、服の下でドアとこすれるのがもどかしかった。
「んッ、あッ、あッ、いッ」
龍介の突き上げと、快感の大きさで、立っているのもつらいくらいだ。
「こういうのが……好きなのか……?」
注挿の合間に龍介が訊ねる。後ろからドアに押しつけられているから、自然、囁きはすぐ耳元にあった。百樹は喘ぐ吐息の下から、切れ切れに応じた。
「んッ、そ、だよ、好き……ッ」
甘くくぐもった声を、うまく出せたと思う。鼻にかかった、情欲の滲んだ声を。
だって、こんなどこでも盛っちゃうビッチのほうが、後腐れなくやり捨てできるだろ?
捨てられても、これは本当のおれじゃないんだから、傷つかなくてすむーー
龍介が大きく息を吐いたかと思うと、その指で百樹の癖のある髪を掴んだ。首を強引にねじり、施されたのは、噛みつくようなキスだ。
「んん……ッ!」
まるで全てを奪おうとするかのように、口腔をまさぐられ、舌をきつく吸われる。愛撫というよりは蹂躙に近く、逃げを打つ百樹の舌先を執拗に吸う。
それが蹂躙でありながらすがりつかれているようにも思えて、百樹は内心苦笑した。
すがりつく?
この人が?
そんなわけないのに。
飲み下し切れない唾液が、口の端からつう……と伝わり落ちる。
「く、るし……って!」
どうにか逃れて抗議するも、龍介は黙ったままだった。ただ凶暴な吐息だけを感じる。中に挿入れたまま龍介は百樹の腰に手を回すと、便器の蓋の上に腰を下ろした。
いらだちの乗った手つきで、まだ足に絡まっていたパンツと下着を剥ぎ取られる。後ろから百樹の膝裏に手を回し、大きく開かせて持ち上げる。そして、猛る自身の上にあらためて落とした。
「ああ……!!」
自重と突き上げで最奥まで貫かれ、百樹は声を上げた。
限界まで広げられた敏感な皮膚が、龍介の太い根元でびくびく波打つ血管の動きを感じていた。濡れた下生えがこすれるのさえ快感だ。
激しく突き上げながら、片手は乱れたTシャツの中に忍び込み、もう片方の手は、突き上げられる度ぺちぺちと腹を打っていた百樹の昂ぶりを掴む。
「あ、あ……ッ!」
これ以上ないくらい脚をひらかされ、奥まで貫かれ、胸と昂ぶりまでいいように苛まれる自分の姿を想像すると、羞恥で死んでしまいそうだ。
けれど躰は、その恥ずかしさにすら歓喜してしまっている。
――ゆ、ゆうべもあんなにしたのに……ッ。
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああッ……!」
突き上げに合せて乳首をきゅっと掴まれると、自分の中が龍介をいっそう喰い締めてしまうのがわかった。
快感の涙でにじんだ視界の先で、靴下だけになったつま先が、龍介の突き上げに合せて揺れている。
「んっ、んっ、んっ、んん……!」
再び首をねじって口づけられる。熱い舌は、怒りのような荒々しさを持っていた。
「……………………!!!!」
快感の逃げ場所を完全に奪われる。
やがて最奥に熱い奔流が穿たれても、声を奪われたまま百樹は達した。
ずるり、という後味を残して龍介が自分の中から去る。
しばらくお互いに言葉も発せなかった。ただ荒々しい息づかいだけが、無人のトイレに響く。
呼吸が収まり、静けさがもどってくると、今度はそこに怒気が混ざった気がした。
険しい表情の龍介が、乱れた髪をかき上げている。
「……いつも、こういうことをしてるのか?」
「――そう、だよ。後腐れなく遊んで、それで終わり。あんたも今度からこっちの世界に来るんでしょ。俺みたいなのもいっぱいいるから、気をつけてね」
ゲイがみんな遊んでいるわけではもちろんない。龍介ほどの男なら、真剣交際をする相手だってすぐ見つかるだろう。朝、カフェで見たみたいな相手だって。
――今の俺とは全然違う相手だって。
着衣を直し、じゃあ、と個室を出た。まだ展示室はいくつも残っていたが、逆行して外に出る。暗闇に慣れた目に日差しは眩しく、手をかざして目をかばったとき、龍介が追いついてきた。
「待て」
「なに? しつこいよ」
はねつけると、龍介が息を呑む気配がした。ひどい態度を取っているのは自分のほうなのに、なぜだか目頭が熱を持ってくる。
そのままずんずんと足を進めた。早く、早くこの人の元を離れなきゃ。
早く「大丈夫」の仮面を被らなきゃ。
早足になった百樹に、龍介は簡単に追いついた。力強い手が肩にかかる。
「おい。急にどうした? 待ってくれって言って――」
「うるっさい、――」
振り払ったとき、上着のポケットの中でスマホが振動し始めた。
轍人だろう。こちらに来て一度電話で話したあの日以来、LINEに既読すらつけていなかったと思い出す。
龍介を黙らせるにはちょうどいい。渡りに舟とばかりに応答した。
「轍っちゃん? 連絡できなくてごめ――」
『恐れ入ります。こちら李木百樹さんの携帯でお間違えないですか?』
いつものように応じた百樹の耳に届いたのは、聞き覚えのない声だ。
やけに丁寧。そして緊張に満ちたその声は先を続けた。
『私××病院の看護師で××と申します。お母様の件でお話があってお電話させて頂きました。今お時間宜しいでしょうか?』
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