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幕間2ー1
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ーーー これは終幕中の話である。 ーーー
幕内に戻った主の辰は床へ寝かせた那智の体調を気遣うようにそっと頭を撫でながら顔を見つめるように近づけ耳元で優しく囁く。
『お前はまだ休めないんだよ。だから……暫くだけ時間をあげるね』
その囁きとは正反対に顔は表情がわからないほど何処までも冷たかった。そんな辰は那智のおでこに口付ける。まるで儀式のように。
幕内に下がった此処の主の辰は那智を床に寝かせて見習い童に指図をした。
「水で濡らして固く絞った手拭いを何枚か用意しておくれ。そして那智の両乳首を冷やしなさい。おでこもね。残りの手拭いで丁寧に那智のからだを拭いておやり。大事なところはお前達が触ってはいけないよ。わかってるね」
「はい、ご主人様」
小さな声で返事をする見習い童の三人。
ちゃんと場所を弁えているのは統括の正の躾の賜物だと見習い童たちを見ているだけでわかる。
「此処では静かに動きなさい。まだお客さんが表には居るのだからね、わかったかい?」
「はい」
彼らはてきぱきと動き始める。
見習い童の二人が奥の裏口へ行こうとするのを制して棚の方を指差した。
「売り物の手拭いを使っても構わないから直ぐにしておくれ。『春』まではそんなに時間は作れないからね。那智のために頑張ってくれるかい?」
「はい!」
舞台袖で黙って直立しながら様子を窺っていた統括の正に主の辰が叱咤した。
「正……着替えろ。そして舞台に立て。私が拡張してやる」
正を見下ろした辰の目は冷ややかだった。
幕内に戻った主の辰は床へ寝かせた那智の体調を気遣うようにそっと頭を撫でながら顔を見つめるように近づけ耳元で優しく囁く。
『お前はまだ休めないんだよ。だから……暫くだけ時間をあげるね』
その囁きとは正反対に顔は表情がわからないほど何処までも冷たかった。そんな辰は那智のおでこに口付ける。まるで儀式のように。
幕内に下がった此処の主の辰は那智を床に寝かせて見習い童に指図をした。
「水で濡らして固く絞った手拭いを何枚か用意しておくれ。そして那智の両乳首を冷やしなさい。おでこもね。残りの手拭いで丁寧に那智のからだを拭いておやり。大事なところはお前達が触ってはいけないよ。わかってるね」
「はい、ご主人様」
小さな声で返事をする見習い童の三人。
ちゃんと場所を弁えているのは統括の正の躾の賜物だと見習い童たちを見ているだけでわかる。
「此処では静かに動きなさい。まだお客さんが表には居るのだからね、わかったかい?」
「はい」
彼らはてきぱきと動き始める。
見習い童の二人が奥の裏口へ行こうとするのを制して棚の方を指差した。
「売り物の手拭いを使っても構わないから直ぐにしておくれ。『春』まではそんなに時間は作れないからね。那智のために頑張ってくれるかい?」
「はい!」
舞台袖で黙って直立しながら様子を窺っていた統括の正に主の辰が叱咤した。
「正……着替えろ。そして舞台に立て。私が拡張してやる」
正を見下ろした辰の目は冷ややかだった。
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