銀狼【R18】

弓月

文字の大きさ
24 / 63
獣の愛

獣の愛_5

しおりを挟む


「…んんっ…──ぁ」

「…っ…愛が欲しければくれてやろう」

「‥‥‥!?…んッ」

 口腔に侵入した舌を強引に深くねじ込まれ、唇は密着し、セレナは呼吸もままならない。

 逃げ惑う彼女の舌もすぐに捕まりきつく吸われる。

 押しのけようと男の胸板を押すが意味はなく、彼女は思わず爪を立てた。

ギリッ...

 銀狼の陶器のような白い肌に深紅の血がにじむ。

 それでも彼は気にする素振りを見せなかった。


「‥‥ハァ‥‥…ンむ…う」

「……」

「……ッ…!‥‥ハァ‥‥ぁッハァ‥‥」


 やめて…こんな

 こんな、甘いキスをしないで……!!


 激しさがやんだかと思えば優しく絡んでくる男の舌──。

 余裕のないセレナは従順にそれを舐めるしかなく、目頭をじんわりと熱くしながら翻弄され続けた。



「‥‥は ぁ‥ッ…」


「……ふっ…」



・・・・チュッ‥



 不意に、唇が離れた。



 赤く潤んだセレナの瞳を

 銀狼が覗きこむ。




「愛してやろうか……。
 ツルギのような…──獣の愛で」




 まるで、洞穴の天井からポトリポトリと滴り落ちる水玉のように、一音、一音をゆっくりと……男はセレナに囁いた。






.....




「──…っ」


 獣の愛──


「…何…を、言っているの……?」

「──…」


 切れ長の目が、彼女を試すように妖しく見つめてきた。

 ──人離れしたその、美しい眼。


「……!? 」


 動揺して泳ぐセレナのブルーの瞳に、口角を上げてふわりと笑った銀狼の顔が映りこむ。



 そして男の、グレーの瞳が…。



「───」



 それを見つめるセレナの身体から

 ……徐々に力が失われていった。 



 力を抜き取られ、その場に立っていられなくなる。


「…‥あ‥‥?‥ハァ…‥‥‥ッ」


 これは昨夜と同じ現象──

 いや、まるきり違うものだ。

 崩れるセレナの身体を支え、銀狼はもう一度、彼女に唇を重ねた。

「‥ん、‥…ふ‥‥」

 男と目を合わせた瞬間、昨夜は恐怖で全身が縮こまったというのに……

 今の彼女は……彼の醸し出す空気に包まれて、その安堵に身を任せようとするかのような──。





《 くれてやる……獣の愛を

 ──ツルギのような、危険な愛を 》





「‥ハァ…‥‥ぁぁ‥‥」




 セレナの目が蕩けていく。

 男の腕に、ゆっくりと身を任せていく……。






「──…娘、お前の名は何という」


「‥‥‥?」


「名だ……お前の名を、私に教えろ……」


「‥‥な‥まえ‥」



 意識が少しずつ怪しくなる中

 瞼を下ろした彼女は、問われるままに素直に答えていた。



「‥‥セレ ナ‥‥よ‥‥」


「…そうか…、セレナ…」


「──…」


「……堕ちろ……私の元へ」



 銀狼の声に導かれ、セレナの意識は暗闇へと堕ちていく。






──





 其処に在るのは


 恐怖と、不安と……



「──…」



 底無しの冷たさ。






 尚もわたしを魅了する





 深い哀しみの美しさ───。











───…







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...