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講義初日
しおりを挟む「LGAにようこそ、諸君」
講義の始まりは、教官の挨拶とガイダンスだ。
「この講義では、君たちにガードマンとして必要な知識と常識を身に付けてもらう」
教官は教壇に立つでなく、喋りながらゆっくりと席の間を徘徊していた。
「他の養成校ではガードマンを用心棒と混同し、武術ばかりを教える所もある。元警察官や武段所有者がろくに訓練もせずにガードマンを名乗っている。──しかし、我々から言わせれば彼等はてんで素人である」
それはテレビをはじめメディアからのイメージなのか……。
確かに、ボディーガードの需要に目をつけて腕や体力に自信のある者が転職しがちだ。
中には元軍人の外国人も多い。
「我々が育てるのは真のガードマン。
つまりは…──、ああ…、そこの君」
「……?わたしですか」
通路を徘徊する教官が、ちょうどミレイの斜め前で立ち止まった。
「そうだ。ここ【 LGA 】の校名の由来を言ってみなさい」
「校名の由来…」
突然の指名に、ミレイよりも周りの生徒がざわついた。
彼女の横に座る30代くらいの男も、動きはしないが焦っている。
「知らないのか?」
「いえ…──」
LGAの名前が普及しすぎて、その由来を知らない者も多くいるだろう。
しかしミレイは知っていた。
「守護霊です」
「その通りだ」
ミレイの中の、幼き日の記憶──
《 ママは、とってもキレイなしゅごれーさんっ 》
まだ母が生きていた時の思い出だ。
守護霊──Loyal Guardian Angel
頭文字をとって、LGA。
知る者は少ないし、知っている者もこの由来をバカにすることが多い。
……だがミレイはこの " 守護霊 " という響きが好きだった。
「守護霊とは、あらゆる危険を未然に防ぎ依頼者に安全な環境を提供する。依頼者への忠誠を約束する者でなくてはならない」
教官は声高らかに言ってきかせる。
馬鹿にする者がいたとしても、これが我が校の誇りなのだと……その顔が語っていた。
「治安の乱れた世の中……依頼者に安全と安心を約束するにはあらゆる能力が要求される。それらを習得し、そして諸君は真のガードマンとなるがいい。……返事は?」
「はい!」
教官の話に、生徒達は声をそろえて返事をした。
「よし」
頷いた教官はミレイに再度、話しかける。
「たとえ力で劣るとしても、私の講義内容をしっかり身に付ければ、君のような女性にも道はある」
「……」
“ これは普通のアドバイス?それとも、皮肉なのかな? ”
「……はい」
顔をあげたミレイは教官の目を真っ直ぐ見据え、臆することなくはっきりと応えた。
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