今更謝ってももう遅い!落ちこぼれ無能者の復讐譚~使えないスキルだと言われ『廃棄』された能力者のスキルは実は最強だった~

三浦ウィリアム

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第2話Part.2~着替え~

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【1センメラー=1センチメートル】


 少女の手刀は深々と突き刺さり男の命を奪うに足りた。筋力強化のスキルは手に入らなかったが無傷でテレポーテーションのスキルを得られたのだから上出来だ。

「ありがとう。助かった。」
「あなたを助けた訳じゃない。身を守っただけ。」

 俺は助けてくれた少女に礼を言う。奴を始末したということは俺と同じ無能者だと思うが彼女はまるで人形のように無感情で無表情。今はさっきの男に殴打されたのか顔が腫れて痛々しいがそれが治り、綺麗な服を着せてやれば本当に人形のような美しさと言える少女だと思う。
 髪はブロンドで不揃い。もしかすると奴等やこの過酷な環境で髪が千切れたりしたのかもしれない。当然こんなところで髪を手入れする環境など無い。

「そうだ服、だな。サイズ合わないし血だらけだがコイツの服、使うか?」
「ケダモノの服を着るくらいなら裸でいる方がマシ。」

 彼女の能力者への恨みはすさまじいものがあった。汚らわしいと目が言っている。だがこんな場所で全裸で居続けるのは危険だ。そうは言っても彼女への説得は無駄だろう。それならば

「能力者の服が嫌なら俺のを使うか?何も無いよりはマシだろう?」
「……分かった。」

 俺の服なら良いらしい。俺の服もこの森で行動し続けたお陰で相当破れてしまっているが何も無いよりはマシだろう。俺は彼女に服を上げることにしたがまずは場所を変えた方が良いと思った。さっきテレポーテーションのスキルを持っていた男を始末した際に声を上げさせた。もしかすると他の能力者がこちらに来るかもしれない。

「少し場所を変えるぞ。」
「は?な、何?」

 俺は少女の手を握ってテレポーテーションを使用した。目的地は友の亡骸がある場所。今すぐにイメージできる場所がここくらいしかないので仕方がない。少女の困惑の声を残して窪地から俺たちの姿は消えた。

「こ、ここは……ひっ。」
「ここは俺が友と分かれた場所だ。すまない、今すぐテレポートできる場所がここしかなかった。」

 少女はいきなり知らない場所に飛んできて、目の前にアルキュラの亡骸と能力者の死骸が転がっている光景に息を飲んだようだ。俺はこの場所にしか飛べないことを謝ってから彼女に服を渡すため服を脱ごうとしたが

「待って。私、向こうを向いてるから。足元に置いてくれたら言って。」

 気を使ってくれているのか彼女は顔を背けた。俺は服を脱いでいき彼女の足元に脱いだ服を置いてやる。裸になった俺は命を奪った能力者から服を剥ぎ取る。そしてそれを着こんでから

「足元置いたから。着替えも済んだ。こっちを向いても大丈夫だ。」
「分かった……ひっ。そ、その服はやめて……。」
「これしかないんだが……。」

 今度は俺が着こんでいる能力者達の服が気に入らないらしい。だがこれしかないのだから仕方ないだろうと言ったのだが彼女の視線はアルキュラの方を向いている。どうやらアルキュラの服を着ろと言うらしい。まあアルキュラと俺の体格は似たようなものなのだが友の亡骸から身ぐるみを剥ぐというのは気が引ける。
 だが何か怯えの混じったような眼を向けている彼女を見て「分かったよ。」と答えるしかなかった。まあアルキュラもきっと「私の事なら気にするな。」とでも言って許してくれるだろうとは思う。

 俺はアルキュラの服を脱がしていく。彼の身体は傷だらけ。不死のスキルで身体を酷使され過ぎた結果と言っていたが本当に痛々しく涙を禁じ得ない。
 俺たちをこんな目に遭わせた研究所の奴等、そして俺たちを創り出す原因となった魔王。奴等に復讐してやらねば気が済まないという気持ちが沸々と湧くのを抑えきれなかった。

「服、着れた。」
「そ、そうか……。」

 たしかに俺の服は入るには入ったようだが彼女の体つきには全く合っていなかった。彼女は長身で170センメラーほどある。俺は180センメラーほどだが彼女の大きな胸を俺サイズのシャツに無理矢理入れたようでシャツがシャツの意味を成していない。お腹がほとんど見えてしまっていてシャツが胸当てみたいになっている。
 だが華奢な彼女の身体に俺の上着はダブついている。だが胸の部分はボタンを留めることはできない。下の方も俺の体格に合わせた者なのでズボンはダブついていて何とも不格好だがもうこれは仕方がない。

 ともかく服も得て周囲もとりあえずは能力者が来る様子も無く、俺たちは一息つくことにした。
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