今更謝ってももう遅い!落ちこぼれ無能者の復讐譚~使えないスキルだと言われ『廃棄』された能力者のスキルは実は最強だった~

三浦ウィリアム

文字の大きさ
5 / 30

第2話Part.3~君の力が必要だ~

しおりを挟む
「あなたは一体何者?」
「無能者だよ。君と同じ。」
「あんなスキルを使ったのに?」

 彼女は俺に疑問をぶつけてきた。俺は自分のスキルが略取というまだ未知のスキルであるということ、その力によって敵のスキルを奪ったことなどを説明した。彼女は実は無能者ではないのではと思わないでもなかったが、俺は彼女がそうだとは思えなかった。それならば彼女も救いたい。だから包み隠さず教えた。

「そんなことが……。私は物理防御無視のスキル。でも適用されるのは能力者相手だけ。」

 なるほど彼女があっさりと筋力強化の男の身体を貫けた訳が分かった。彼女が物凄く腕力があるという可能性も無いわけではなかったが、それならば無能者の烙印を捺されていないし、あの2人組に押さえ込まれる訳も無い。

「あなたは私と瓜二つの能力者を見たことある?」
「いや、無いな。」
「そう。」

 彼女は不意に俺にそんなことを尋ねてきた。だが俺が会ったのはアルキュラとこの少女、後は意思の疎通ができない壊れた不死者くらいか。そう答えると悲しそうな、でも少し安堵したような表情を見せる。

「その能力者がどうかしたのか?」
「……私の双子の妹。スキル判別するまでは一緒に過ごしてた。」
「そうなのか?」

 俺は彼女の問いが気になって尋ねてみると、自分には双子の妹が居るのだと言った。彼女と妹はスキルが判明する12歳まで一緒に育ったらしい。心なしか妹だと言った時の彼女の眼には光が戻った気がする。

「私はもう一度妹に、アイリスに会いたい。その為なら何があっても何をしても生きる。」
「もう何年になるんだ?離れて。」
「3年。」
「3年!?よく生き延びられたな。」
「…………女は抵抗しなければ大体殺されないから。」
「何故?」

 彼女は妹に会いたい一心でこの地獄の廃棄の森で3年も生き続けていたらしい。毎日毎日多数の能力者が無能者狩りをしているというのに不死者でもない彼女が生き続けていることに驚き、素直な感想を言ってみたが意味深な事を言う彼女。だがそれ以上は何も言いたくないようだ。

「妹さんがまだこの地獄に出ていないといいな。能力者にせよ無能者にせよ。」
「ええ。」

 無能者として廃棄の森に出されていれば待っているのは一方的な蹂躙。能力者として出ていれば最早人の皮を被ったバケモノに成り果てたモノになっているのと相違ない。まあそれは俺も同じ穴のムジナというやつだろうが。同じ無能者たちを救いたいと思っているのも偽善かもしれない。自分は研究所から出てくる能力者とは違うと思いたいだけなのかもしれない。でもそれでも俺は……。

「俺に手を貸してくれないか?」
「え?」
「俺は奴等に目に物を見せてやりたい。その為には君の力が必要だ。まだ妹さんが森に来ていないなら研究所に居るはず。メリットはあると思うんだが。」
「……分かった。私だけじゃ研究所に入る糸口なんて掴めないし。あなたの力ならあるいは。」
「ありがとう。」

 俺はこの復讐劇に彼女を勧誘した。今俺が持っているスキルは不死、引き寄せ、テレポーテーションだ。奇襲と離脱には向くが筋力強化の男相手の時のように純粋なフィジカルで圧倒されれば成す術がないのだ。
 だが彼女のスキルは能力者に対しては防御力を無視して攻撃を加えられる。俺のテレポーテーションと組み合わせればあの時のように抵抗もされなくなる。
 それに俺と同道させればたしかに危険ではあるのだが、かといってこのまま彼女を放っておけばまた妹を探して研究所の近くへ行って能力者に傷つけられるだろう。それならば俺が近くに居た方がまだマシだと思った。

「私の名前はアイシス。」
「俺はアムロスだ。これからよろしく頼む、アイシス。」

 そう言えば自己紹介をしていなかったことに彼女、アイシスの言葉を聞いて気づいた。俺も名を名乗ってアイシスと握手した。新たな仲間を得て、俺は復讐の道を行く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...