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一章
第七話「厨二病」
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『コウゾウ、顔が笑っているようですが、何かありましたか』
――かつん。
ヘルメットを被っているのも忘れ、口元を触ってしまう。
手に持っていたダガーの柄。
そこについた金具とヘルメットがぶつかり、硬い音が鳴ったのだ。
フルフェイスなのに息苦しくないので装着感がなさすぎて困る。
「俺、笑ってた?
自分では気がつかなかったよ……。
でも、なんとなく何でだか理由わかるかも……」
俺は周囲を見渡す。
そこにはコボルトの死体、五体が転がっていた。
今、俺たちは第四エリア、そのエリアのシステム制御をつかさどる部屋にきている。
転がるコボルト死体は、この部屋をうろついていた者たちだった。
現在、システム制御を回復するためのタスク進行状況を現しているプログレスリングが左から始まり、ぐるりと一周していた。
俺は戦闘が終わり、リングが満たされていくのを待っているところだったのだ。
――俺って、グロ耐性あがってるな……。
切り刻まれた、凄惨な姿の死体が床に転がっている。
ダガーの攻撃は手数が多いので、どうしても相手につける傷が多くなってくる。血だらけで、グロくなるのはしょうがない。
しかし、こんな状況でも自然に笑ってしまうなんて……。
まあ、理由はわかってるけどね。
答えは単純。戦闘が楽しかったからなのだ。
「完全に力に酔ってたんだな……。
これってヤバいよね? 死に鈍感になってるよ。
やっぱり、戦闘術入れた影響?」
『そうですね……戦闘中、動揺しないために、死に対する感情は戦闘術によって抑えられます。
しかし、楽しいという感情を増幅させることはありませんので、それは、コウゾウから自然とわきあがった感情なのでしょう』
「ぐぬぅ、なるほど……」
見た目通り、俺には体力も無く運動不足ぎみ。
伊達にニートしてない。
それが、こんなにひょいひょいと思い通りに動けてしまうとついつい嬉しくなってくる。
さらに、戦闘術によって死に対する忌避感が薄くなっているので、純粋に体を動かす楽しみをスポーツ感覚で感じてしまっていたのだろう。
うん、そうだよな――
無理矢理、そう納得する。
決して、弱い者いじめが楽しいわけじゃあない――ハズ。
「つい、ゲーム感覚で殺してたよ……。
妖魔だからまだいいけど、人間でこうならないよう気をつけないと……」
『おそらく大丈夫です。
通常、男性は闘争本能が高いので、自然とそういった感情がわいてくるのは不思議ではありません。気になさらずに』
モニタに映っているプログレスリングが一杯となり、ピーと電子音がなる。
『第四エリアの制御が回復しました……あっ!?
もう、妖魔たちが妖魔結晶石に到達しているようです。
急いで向かいましょう』
珍しく、イノリさんが少し焦っている。
俺たちは急いで、その部屋へと向かうことにした。
§
スパイダーマンのように、手からワイヤーが射出される。
だが、出るのは手首からではなく手の甲だ。
それで離れた位置にいるコボルトを拘束し、引き寄せる。
手元まで近づけると、俺はダガーでとどめを刺した。
「しかし、これって便利だね」
『ワイヤーもオリハルコン製なので、コウゾウの意思で軌道の制御、長さの調整など様々な操作が可能です。
あらゆる状況で、汎用的に利用できる装備と言えるでしょう』
「オリハルコンって便利。
もう、なんでもオリハルコンのお陰でいいじゃん」
『実際、便利ですよ。
精神感応性があるので、使用者の意思を反映するのが容易です。
しかし、それは、ワタクシどもの技術から見てもオーパーツでした。我々が使用しているのは、超文明遺跡より発掘したものしかありません。
換えはありませんので、大切に使ってください』
俺は苦笑いで返事をする。
イノリさん、これ以上プレッシャーかけないでください……。
まあ、そんなわけで俺たちは制御室から移動し、妖魔結晶石がある部屋の前まで来ていた。
隔壁は開け放たれているので、こっそりと隠れながら中の様子を探る。
部屋の天井はガラスで覆われ、ぐるりと宇宙が見えるドーム状だった。
ドームの中央。だだっ広い所に妖魔結晶石はあった。
妖魔結晶石のあった部屋と同じように、その結晶石は円筒状のガラスケースに収められている。
ただ、少し様子が違うのはその見た目は漆黒で、生きているかのように脈打っていた。
それを見ていると正直、なぜか不安になってくる。
なんせその妖魔結晶石を見ていると、無性に守らねばと使命感のようなものが湧いてくるからなのだ。
何でそんなものにそんな気持ちを抱くのか……。
俺はそれに不安を感じるのだった。
「イノリさん、あれって……その……。
本当に妖魔結晶石……?」
『はい、あれは妖魔結晶石ですね。
少し特殊なもので、神話レベルの妖魔のものなのです。
その力は強力で闇の属性の魔力を蓄えており、この船の結界を張るために活用されています。
あれを敵対妖魔に回収されると、この船を守るための結界は効力を失います』
なるほど、だからアレをどうしても守りたいのか――
見れば見るほど吸い込まれそうになっていく……しかも、少し優しさのような、温かいものまで感じ始めていた。
――っだめだ、深く考えるのはやめよう。
妖魔結晶石から目をそらし、装置の周辺をよく見る。
コボルトが五体に……明らかに毛色が違う人影が一体。
こちらに気がついてないのか、その影は中央の装置を眺めていた。
――ゾクッ
俺の体に悪寒が走る。
「ニンゲンを見ていると思うが、自らの罪を知らないということほど大きな罪はないな」
幼くて高い声……。
しかし、それに似合わない威圧を含んだ迫力で、人影が声を発した。
――気がつかれてたか。
「己があくまで賢し、己があくまで清し、己がどこまでも善なりと信ずるものほど罪深いものはない。
人間の持つその傲慢さと無知が、まさに大罪だとボクは思うのだよ」
その人影は、黒い翼の生えた人間。
中性的な外見……しかし、ボクといっていたので、おそらく少年だろう。年の頃は小学の高学年ほどに見える。
前下がりのおかっぱで、青っぽく輝く銀髪。
彫刻のように整った顔。
肌は少し青みがかった薄いグレー。
その肌は青白く、深く黒い衣装を纏う出で立ち。
黒い美少年の姿は、コボルトという獣達の群れにあって、美しく異様だった。
「見るがいいッ!
まさか、我が優しき母上を贄としているとはね。
まったく、ニンゲンとは愚かだ……。
母上の魔力を辿り、ここへ来て……ボクが召還された理由を理解したよ。
母上……、すぐにお助けします……」
美少年は、中央の装置の中にある妖魔結晶石を優しく見つめていた。
物陰に隠れている俺は、ウインドウの中のイノリさんに問いかける。
「イノリさん……、人っぽいのがいるんだけど……。
一応、聞くけど、あれって誰? 船員?」
この船の乗組員? な、わけないよな……
翼、生えてるし、コボルトと一緒にいるし……。
疑問ばかりが、頭に浮かぶ。
『妖魔です……しかも、かなり上位の……。
目的は結界の核に使用されている、妖魔結晶石の強奪にあるようです』
「話しかけてきてるけど……。
やっぱり戦闘になる感じかな?」
『おそらく……。
隠れていれば見逃され、戦闘を避けられるかもしれません。
……が、その場合、妖魔結晶石は奪われ、この船は破壊されます。
隠れる意味もないでしょう。
生き残るためには、撃破、及び撃退しかないと思います』
「で、今の装備で勝てると思う?
あなた、上位とかって言ってるけど……」
『現在、対象妖魔をスキャンしています。
体の構造や魔力の強さによって、ある程度、強さをデータ化できますので――
スキャン完了、対象妖魔のステータスを表示します』
―――――――――――――――――――――――――――
種族:上級妖魔
言語:妖魔言語
サイズ:7
筋力:384
耐久:1850
知覚:7
魔力:23800
機動:7
教育:3
攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・素手:0:384:1
防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・珪素系皮膚外殻:25:35
―――――――――――――――――――――――――――
「あ、俺、死んだ……」
『安心してください。
素早さや知覚力は、能力の高い人間程度です……』
「安心できないって!
数値的に……俺、耐久8だったから……
384とか、貫通しなくても俺の緩衝値20じゃあ全部吸収できなくて……たぶん、ぶん殴られたら死ぬよね? ね、イノリさん?」
『……大丈夫です。
敵も、常に全力で殴るわけではないと思いますので……。
384というのはあくまで目安です……』
「無理無理無理無理! 無理だって!
やだーっ! 絶対やだっ!
地上に脱出できるんでしょ、ほら、逃げよう!
それが一番いいよ、うん、そうしよう!」
――ゾクッ
「汚いネズミが騒いでいるみたいだね……。
こっちへ、出ておいでよ……」
俺は自分の周囲を見渡す。が、誰もいない。
彼、なんか妖魔結晶石から目を離してめっちゃこっち見てるし。
やっぱり俺に言ってるんですよねー。
汚いネズミって、俺ですよねー。
――ゾクッ
「――こいよ」
いちいち俺をビビらせないと、話ができないのか。
正直、威圧するのをやめてほしい。
ものすごい殺気をぶつけられる。
少し漏らしたかもしれない。
俺は足をガクガクさせて、物陰から出た。
「ニンゲン、お前がこの箱船の管理者……。
では、なさそうだね、そっちの幻像がそうなのかな」
いつのまにか、立体映像のイノリさんが俺の横に立っていた。
『警告します。
アナタの行動は、この船を脅かしています。
兵達を連れ、直ちに退去しなさい。
さもなくば実力行使をおこないます』
おいおいおいおい。なんで強気!?
実力行使って俺がやるんですよね? イノリさん。
魔法少女の格好した立体映像だけど、目の色が真っ赤になっててこわいし。
周囲の空気が、張りつめる。
殺気が、この広い部屋中を埋め尽くしていた。
そもそも殺気ってなんだ、って聞かれると答えるのは難しい。
ただ、今、俺が感じている殺気というものは、やつから放たれる死の予感だ。
なんだろう。
高所から下を覗き込むと、落ちたら死ぬんだろうなって思うだろ? 落ちても無いのに自分の死を予感してビビっちまう。
肩から首筋。
ゾクゾクとして鳥肌がたっている。
即死攻撃がいつ飛んでくるか分からない気配が、ヤバいよヤバいよと脳で警鐘を鳴らしているのだ。
周りにいるコボルトが、ギャアギャアと騒ぎ始めた。
泡をふいてぶっ倒れているやつもいる。
敵、味方、かまわず威圧してるのかよ……。
ヤツはマジでキチだ。
美少年が、スッと一歩前に出た。
ひぃ。
俺は、一歩後退しようと、体を動かす。
――う、動かない。
いや、動かないのではない。動かせないのだ。
震えているからか、少しでも動かすと力が抜けて崩れ落ちてしまいそうなのだ。
目を離したら殺される。
それが、なにもかも動きを封じているのだ。
さっきまでのコボルトとの戦闘でついたハズの、ささやかな自信などはどっかへいってしまっている。
漆黒の翼をゆらゆらと、艶かしさを感じさせる動きをさせ、一歩、また一歩とものすごい圧力を発し、距離を縮めてきた。
俺は、なにもできないまま、それを眺める。
一歩。
死刑囚が十三階段を登る時は、こんな気分なのか。
一歩。
もうすぐ、そこまで死は近づいている。
一歩。
死は美しい黒翼を広げ、ヌルりっ、と揺らめいていた。
一歩。
このまま死にたくないッ。
威圧感とは不釣り合いに、しゃなり、しゃなりと、モデルがステージを歩くよう歩いてくる姿は妖艶さを孕んでいた。
死ぬ前に、童貞は捨てておきたかったな……。
死を目の前にして急にそんな後悔が頭に浮かぶ。
知っていると思うが、俺はこの年まで童貞だった。
キモいとか言うな、お店とかでも行くの怖かったんだよっ!
プロとすらもナイ。
買ってたエロゲー、やってないのが悔やまれる。
でも、イノリさんと会えたのはよかったと思っていた。
秘密にしていたが、モニタに映ったイノリさんと会話している際、チンチンをちょいちょいっ、と触れていたのだ。
あくまで不自然じゃない程度に、チンポジを変える程度の触れ方だけど……せっかくそれがささやかな楽しみになりそうだったのに……。
――ッ、だめだ思考が、よそ道に逸れている。
現実逃避しすぎだ。
だってしょうがないじゃない。現実が酷すぎる。
だが、現実逃避のお陰で少し冷静になれた。と思う。
目の前には、厨二病をこじらせた美少年が迫ってきているだけだ。めちゃ、怖い目で、こっち見てるけど負けちゃいけない。
――俺は死にたくないッ。
動けっ、俺の体、戦闘術!
悪あがきするように、心臓というエンジンに油を注ぐ。
回せ回せ。
体の震えをエンジンの振動に変える。
「おおおおおおっぉぉぉぉおおぉぉっっっっつ!!!!」
空吹かししているバイクのように、雄叫びをあげる。
一歩ずつ近づいて来る死に向け、逆にコチラから一歩、また一歩と近づいてやった。
とにかく。
とにかくだ。
崩れ落ちるヒマがあったら、一歩、前へ踏み出せばいい。
絶望してるヒマがあったら、一回でも、このダガーで斬りつけてやればいいんだ。
俺は、自分の攻撃可能距離に入ると、目の前の厨二病に自分の出せる最速のスピードで突きを繰りだしていた。
ヤツはダガーをガードするためか、腕を挙げる。手のひらを開いてコチラへ向けていた。
その手のひらに、俺のダガーが突き刺さる。
手のひらに、突き刺さったダガーごと、ヤツは俺の手を握りしめた。
万力に挟まれたように、がっちりと固定される。
「――ッシッ!」
俺は呼吸を吐き、それと同時に蹴りをヤツの股間に叩き込んだ。妖魔についてるかどうかわからないが、ヤツは人型だ。やってやれ。
――ドンッ
か、かてぇ。
鉄の塊が入ったサンドバックを蹴った感覚。
そんなことやったことないが、それが一番近いと思った。
俺の渾身の攻撃に、目前の厨二病は顔色一つも変えてない。
ぐいっ、と、ダガーごと掴まれていた手が引っ張られる――
俺の体が宙に舞った。
ヤツは涼しい顔で、手を振っただけだったのだが――
周囲に灯る無数の明かり。
それらが尾を引くテールランプのごとく伸びる。
浮遊感の後、その光景が目に焼き付き、ものすごい衝撃が体を襲った。
――ドガぁンッッッ
天地がひっくり返ったかと思うほどの衝撃に、チカチカッと目から火花が散った気がする。
息ができない。
肺から空気という空気を空っぽになるまで吐き出した俺は、ヘルメット内に涎をまき散らし苦しみに悶えていた。
「あははははははははははっ、バッカじゃない、ニンゲン。
弱すぎだよっ。
その程度で、どうにかなると思った?
どうにかなると思った?」
どうやら俺は床に叩き付けられたようだ。床が盛大に窪んでいる。 痛い、痛い、痛い――
「うぅあぁぁ――」
うめき声しかだせない。
――ごりっ。
ヘルメットの上に足がのったのがわかる。
「ねえ、こんなので、どうにかなると思った?
雑魚すぎるんだけど……。
ホント、ニンゲンって色んな意味で罪だよねっ」
そう言うと、俺の腹を蹴り上げる。
俺はキャプ翼で見た、ボールがゴールに突き刺さる感じに壁面へ叩き付けられたのだった。
§
――かつん。
ヘルメットを被っているのも忘れ、口元を触ってしまう。
手に持っていたダガーの柄。
そこについた金具とヘルメットがぶつかり、硬い音が鳴ったのだ。
フルフェイスなのに息苦しくないので装着感がなさすぎて困る。
「俺、笑ってた?
自分では気がつかなかったよ……。
でも、なんとなく何でだか理由わかるかも……」
俺は周囲を見渡す。
そこにはコボルトの死体、五体が転がっていた。
今、俺たちは第四エリア、そのエリアのシステム制御をつかさどる部屋にきている。
転がるコボルト死体は、この部屋をうろついていた者たちだった。
現在、システム制御を回復するためのタスク進行状況を現しているプログレスリングが左から始まり、ぐるりと一周していた。
俺は戦闘が終わり、リングが満たされていくのを待っているところだったのだ。
――俺って、グロ耐性あがってるな……。
切り刻まれた、凄惨な姿の死体が床に転がっている。
ダガーの攻撃は手数が多いので、どうしても相手につける傷が多くなってくる。血だらけで、グロくなるのはしょうがない。
しかし、こんな状況でも自然に笑ってしまうなんて……。
まあ、理由はわかってるけどね。
答えは単純。戦闘が楽しかったからなのだ。
「完全に力に酔ってたんだな……。
これってヤバいよね? 死に鈍感になってるよ。
やっぱり、戦闘術入れた影響?」
『そうですね……戦闘中、動揺しないために、死に対する感情は戦闘術によって抑えられます。
しかし、楽しいという感情を増幅させることはありませんので、それは、コウゾウから自然とわきあがった感情なのでしょう』
「ぐぬぅ、なるほど……」
見た目通り、俺には体力も無く運動不足ぎみ。
伊達にニートしてない。
それが、こんなにひょいひょいと思い通りに動けてしまうとついつい嬉しくなってくる。
さらに、戦闘術によって死に対する忌避感が薄くなっているので、純粋に体を動かす楽しみをスポーツ感覚で感じてしまっていたのだろう。
うん、そうだよな――
無理矢理、そう納得する。
決して、弱い者いじめが楽しいわけじゃあない――ハズ。
「つい、ゲーム感覚で殺してたよ……。
妖魔だからまだいいけど、人間でこうならないよう気をつけないと……」
『おそらく大丈夫です。
通常、男性は闘争本能が高いので、自然とそういった感情がわいてくるのは不思議ではありません。気になさらずに』
モニタに映っているプログレスリングが一杯となり、ピーと電子音がなる。
『第四エリアの制御が回復しました……あっ!?
もう、妖魔たちが妖魔結晶石に到達しているようです。
急いで向かいましょう』
珍しく、イノリさんが少し焦っている。
俺たちは急いで、その部屋へと向かうことにした。
§
スパイダーマンのように、手からワイヤーが射出される。
だが、出るのは手首からではなく手の甲だ。
それで離れた位置にいるコボルトを拘束し、引き寄せる。
手元まで近づけると、俺はダガーでとどめを刺した。
「しかし、これって便利だね」
『ワイヤーもオリハルコン製なので、コウゾウの意思で軌道の制御、長さの調整など様々な操作が可能です。
あらゆる状況で、汎用的に利用できる装備と言えるでしょう』
「オリハルコンって便利。
もう、なんでもオリハルコンのお陰でいいじゃん」
『実際、便利ですよ。
精神感応性があるので、使用者の意思を反映するのが容易です。
しかし、それは、ワタクシどもの技術から見てもオーパーツでした。我々が使用しているのは、超文明遺跡より発掘したものしかありません。
換えはありませんので、大切に使ってください』
俺は苦笑いで返事をする。
イノリさん、これ以上プレッシャーかけないでください……。
まあ、そんなわけで俺たちは制御室から移動し、妖魔結晶石がある部屋の前まで来ていた。
隔壁は開け放たれているので、こっそりと隠れながら中の様子を探る。
部屋の天井はガラスで覆われ、ぐるりと宇宙が見えるドーム状だった。
ドームの中央。だだっ広い所に妖魔結晶石はあった。
妖魔結晶石のあった部屋と同じように、その結晶石は円筒状のガラスケースに収められている。
ただ、少し様子が違うのはその見た目は漆黒で、生きているかのように脈打っていた。
それを見ていると正直、なぜか不安になってくる。
なんせその妖魔結晶石を見ていると、無性に守らねばと使命感のようなものが湧いてくるからなのだ。
何でそんなものにそんな気持ちを抱くのか……。
俺はそれに不安を感じるのだった。
「イノリさん、あれって……その……。
本当に妖魔結晶石……?」
『はい、あれは妖魔結晶石ですね。
少し特殊なもので、神話レベルの妖魔のものなのです。
その力は強力で闇の属性の魔力を蓄えており、この船の結界を張るために活用されています。
あれを敵対妖魔に回収されると、この船を守るための結界は効力を失います』
なるほど、だからアレをどうしても守りたいのか――
見れば見るほど吸い込まれそうになっていく……しかも、少し優しさのような、温かいものまで感じ始めていた。
――っだめだ、深く考えるのはやめよう。
妖魔結晶石から目をそらし、装置の周辺をよく見る。
コボルトが五体に……明らかに毛色が違う人影が一体。
こちらに気がついてないのか、その影は中央の装置を眺めていた。
――ゾクッ
俺の体に悪寒が走る。
「ニンゲンを見ていると思うが、自らの罪を知らないということほど大きな罪はないな」
幼くて高い声……。
しかし、それに似合わない威圧を含んだ迫力で、人影が声を発した。
――気がつかれてたか。
「己があくまで賢し、己があくまで清し、己がどこまでも善なりと信ずるものほど罪深いものはない。
人間の持つその傲慢さと無知が、まさに大罪だとボクは思うのだよ」
その人影は、黒い翼の生えた人間。
中性的な外見……しかし、ボクといっていたので、おそらく少年だろう。年の頃は小学の高学年ほどに見える。
前下がりのおかっぱで、青っぽく輝く銀髪。
彫刻のように整った顔。
肌は少し青みがかった薄いグレー。
その肌は青白く、深く黒い衣装を纏う出で立ち。
黒い美少年の姿は、コボルトという獣達の群れにあって、美しく異様だった。
「見るがいいッ!
まさか、我が優しき母上を贄としているとはね。
まったく、ニンゲンとは愚かだ……。
母上の魔力を辿り、ここへ来て……ボクが召還された理由を理解したよ。
母上……、すぐにお助けします……」
美少年は、中央の装置の中にある妖魔結晶石を優しく見つめていた。
物陰に隠れている俺は、ウインドウの中のイノリさんに問いかける。
「イノリさん……、人っぽいのがいるんだけど……。
一応、聞くけど、あれって誰? 船員?」
この船の乗組員? な、わけないよな……
翼、生えてるし、コボルトと一緒にいるし……。
疑問ばかりが、頭に浮かぶ。
『妖魔です……しかも、かなり上位の……。
目的は結界の核に使用されている、妖魔結晶石の強奪にあるようです』
「話しかけてきてるけど……。
やっぱり戦闘になる感じかな?」
『おそらく……。
隠れていれば見逃され、戦闘を避けられるかもしれません。
……が、その場合、妖魔結晶石は奪われ、この船は破壊されます。
隠れる意味もないでしょう。
生き残るためには、撃破、及び撃退しかないと思います』
「で、今の装備で勝てると思う?
あなた、上位とかって言ってるけど……」
『現在、対象妖魔をスキャンしています。
体の構造や魔力の強さによって、ある程度、強さをデータ化できますので――
スキャン完了、対象妖魔のステータスを表示します』
―――――――――――――――――――――――――――
種族:上級妖魔
言語:妖魔言語
サイズ:7
筋力:384
耐久:1850
知覚:7
魔力:23800
機動:7
教育:3
攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・素手:0:384:1
防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・珪素系皮膚外殻:25:35
―――――――――――――――――――――――――――
「あ、俺、死んだ……」
『安心してください。
素早さや知覚力は、能力の高い人間程度です……』
「安心できないって!
数値的に……俺、耐久8だったから……
384とか、貫通しなくても俺の緩衝値20じゃあ全部吸収できなくて……たぶん、ぶん殴られたら死ぬよね? ね、イノリさん?」
『……大丈夫です。
敵も、常に全力で殴るわけではないと思いますので……。
384というのはあくまで目安です……』
「無理無理無理無理! 無理だって!
やだーっ! 絶対やだっ!
地上に脱出できるんでしょ、ほら、逃げよう!
それが一番いいよ、うん、そうしよう!」
――ゾクッ
「汚いネズミが騒いでいるみたいだね……。
こっちへ、出ておいでよ……」
俺は自分の周囲を見渡す。が、誰もいない。
彼、なんか妖魔結晶石から目を離してめっちゃこっち見てるし。
やっぱり俺に言ってるんですよねー。
汚いネズミって、俺ですよねー。
――ゾクッ
「――こいよ」
いちいち俺をビビらせないと、話ができないのか。
正直、威圧するのをやめてほしい。
ものすごい殺気をぶつけられる。
少し漏らしたかもしれない。
俺は足をガクガクさせて、物陰から出た。
「ニンゲン、お前がこの箱船の管理者……。
では、なさそうだね、そっちの幻像がそうなのかな」
いつのまにか、立体映像のイノリさんが俺の横に立っていた。
『警告します。
アナタの行動は、この船を脅かしています。
兵達を連れ、直ちに退去しなさい。
さもなくば実力行使をおこないます』
おいおいおいおい。なんで強気!?
実力行使って俺がやるんですよね? イノリさん。
魔法少女の格好した立体映像だけど、目の色が真っ赤になっててこわいし。
周囲の空気が、張りつめる。
殺気が、この広い部屋中を埋め尽くしていた。
そもそも殺気ってなんだ、って聞かれると答えるのは難しい。
ただ、今、俺が感じている殺気というものは、やつから放たれる死の予感だ。
なんだろう。
高所から下を覗き込むと、落ちたら死ぬんだろうなって思うだろ? 落ちても無いのに自分の死を予感してビビっちまう。
肩から首筋。
ゾクゾクとして鳥肌がたっている。
即死攻撃がいつ飛んでくるか分からない気配が、ヤバいよヤバいよと脳で警鐘を鳴らしているのだ。
周りにいるコボルトが、ギャアギャアと騒ぎ始めた。
泡をふいてぶっ倒れているやつもいる。
敵、味方、かまわず威圧してるのかよ……。
ヤツはマジでキチだ。
美少年が、スッと一歩前に出た。
ひぃ。
俺は、一歩後退しようと、体を動かす。
――う、動かない。
いや、動かないのではない。動かせないのだ。
震えているからか、少しでも動かすと力が抜けて崩れ落ちてしまいそうなのだ。
目を離したら殺される。
それが、なにもかも動きを封じているのだ。
さっきまでのコボルトとの戦闘でついたハズの、ささやかな自信などはどっかへいってしまっている。
漆黒の翼をゆらゆらと、艶かしさを感じさせる動きをさせ、一歩、また一歩とものすごい圧力を発し、距離を縮めてきた。
俺は、なにもできないまま、それを眺める。
一歩。
死刑囚が十三階段を登る時は、こんな気分なのか。
一歩。
もうすぐ、そこまで死は近づいている。
一歩。
死は美しい黒翼を広げ、ヌルりっ、と揺らめいていた。
一歩。
このまま死にたくないッ。
威圧感とは不釣り合いに、しゃなり、しゃなりと、モデルがステージを歩くよう歩いてくる姿は妖艶さを孕んでいた。
死ぬ前に、童貞は捨てておきたかったな……。
死を目の前にして急にそんな後悔が頭に浮かぶ。
知っていると思うが、俺はこの年まで童貞だった。
キモいとか言うな、お店とかでも行くの怖かったんだよっ!
プロとすらもナイ。
買ってたエロゲー、やってないのが悔やまれる。
でも、イノリさんと会えたのはよかったと思っていた。
秘密にしていたが、モニタに映ったイノリさんと会話している際、チンチンをちょいちょいっ、と触れていたのだ。
あくまで不自然じゃない程度に、チンポジを変える程度の触れ方だけど……せっかくそれがささやかな楽しみになりそうだったのに……。
――ッ、だめだ思考が、よそ道に逸れている。
現実逃避しすぎだ。
だってしょうがないじゃない。現実が酷すぎる。
だが、現実逃避のお陰で少し冷静になれた。と思う。
目の前には、厨二病をこじらせた美少年が迫ってきているだけだ。めちゃ、怖い目で、こっち見てるけど負けちゃいけない。
――俺は死にたくないッ。
動けっ、俺の体、戦闘術!
悪あがきするように、心臓というエンジンに油を注ぐ。
回せ回せ。
体の震えをエンジンの振動に変える。
「おおおおおおっぉぉぉぉおおぉぉっっっっつ!!!!」
空吹かししているバイクのように、雄叫びをあげる。
一歩ずつ近づいて来る死に向け、逆にコチラから一歩、また一歩と近づいてやった。
とにかく。
とにかくだ。
崩れ落ちるヒマがあったら、一歩、前へ踏み出せばいい。
絶望してるヒマがあったら、一回でも、このダガーで斬りつけてやればいいんだ。
俺は、自分の攻撃可能距離に入ると、目の前の厨二病に自分の出せる最速のスピードで突きを繰りだしていた。
ヤツはダガーをガードするためか、腕を挙げる。手のひらを開いてコチラへ向けていた。
その手のひらに、俺のダガーが突き刺さる。
手のひらに、突き刺さったダガーごと、ヤツは俺の手を握りしめた。
万力に挟まれたように、がっちりと固定される。
「――ッシッ!」
俺は呼吸を吐き、それと同時に蹴りをヤツの股間に叩き込んだ。妖魔についてるかどうかわからないが、ヤツは人型だ。やってやれ。
――ドンッ
か、かてぇ。
鉄の塊が入ったサンドバックを蹴った感覚。
そんなことやったことないが、それが一番近いと思った。
俺の渾身の攻撃に、目前の厨二病は顔色一つも変えてない。
ぐいっ、と、ダガーごと掴まれていた手が引っ張られる――
俺の体が宙に舞った。
ヤツは涼しい顔で、手を振っただけだったのだが――
周囲に灯る無数の明かり。
それらが尾を引くテールランプのごとく伸びる。
浮遊感の後、その光景が目に焼き付き、ものすごい衝撃が体を襲った。
――ドガぁンッッッ
天地がひっくり返ったかと思うほどの衝撃に、チカチカッと目から火花が散った気がする。
息ができない。
肺から空気という空気を空っぽになるまで吐き出した俺は、ヘルメット内に涎をまき散らし苦しみに悶えていた。
「あははははははははははっ、バッカじゃない、ニンゲン。
弱すぎだよっ。
その程度で、どうにかなると思った?
どうにかなると思った?」
どうやら俺は床に叩き付けられたようだ。床が盛大に窪んでいる。 痛い、痛い、痛い――
「うぅあぁぁ――」
うめき声しかだせない。
――ごりっ。
ヘルメットの上に足がのったのがわかる。
「ねえ、こんなので、どうにかなると思った?
雑魚すぎるんだけど……。
ホント、ニンゲンって色んな意味で罪だよねっ」
そう言うと、俺の腹を蹴り上げる。
俺はキャプ翼で見た、ボールがゴールに突き刺さる感じに壁面へ叩き付けられたのだった。
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