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2章
宵月と契約
しおりを挟む「ねーえ、蝶姫ちゃん機嫌なおしてよー。確かにあんな運び方したのは謝るよぉ。」
さて、あのあとの説明をいたしましましょう。私はこの野郎....いや、この男、瑠璃に拐われたのだ。顔パスとか言ってたくせに警備に追いかけ回された。しかも米俵のように担がれて!正直、吐きそうでした。
「......いい加減その呼び名やめてくれるかな。瑠璃くん。私ターゲットから外れたんですけど!無関係なんですけど!!」
「えーだって本名知らなぁい。そういう蝶姫ちゃんだってぇ、あのときのままの呼び名じゃん。僕幹部にまで出世したからぁ、もう瑠璃じゃないよぉ。」
これだから最近の若手は優秀だから嫌いなんだよ!
この組織、『宵月』は私のあの1週間と密接に関係してる。とゆーか全てこの組織のせいだ。
そーだそーだ。特にこいつにはいい思いでがない。こいつ瑠璃は私が追われる原因となった7割がこいつのせいだ。
「幹部になったら名前変わるとか、もしかして瑠璃ってコードネームとかそーゆう?厨二くっさ。マジムリ。」
「えぇ、なにその言葉ぁ。また、前の世界の言葉ぁ?もっと共通語話してよぉ。」
ぷくぷくフグのように膨らます瑠璃はパッと見可愛いが私は知っている。こいつ組織裏切ったやつの体綺麗に解体して保管するの趣味なの知ってる。騙されないぞ。
「共通語とか笑うんですけどぉ。あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ。」
「えぇ、余計わかんなぁい。」
「つーかまじなんで拐われたのか意味わかんない。今の私には手を出さないよう言われてないの?」
「そうだよぉ。だから、他のみんなも追いかけっこやめちゃったしぃ。でもねー、中途半端に投げだしたくないからぁ、僕だけ機会を伺ってたんだぁ。」
くるくると自分の癖毛を弄る瑠璃くんの瞳はしっかり獲物を見据えている。流石は幹部。
「え、なにそれ。間延びしたふざけた口調のくせに一丁前にそんなこといいやがって。潔く諦めろよ。男だろ!」
「だって、蝶姫ちゃん。知ってるでしょ?契約の仕方。」
契約の仕方。そう、この組織は知りたいのだ。私だけが知っている、契約。
「......契約。ねぇ?そんなものして何になるの?」
「だってぇ、契約すれば何でもお願いごと叶えてくれるんでしょ?そんなの誰でも欲しいよぉ。」
きらきら。いや、ギラギラした目が私を貫く。息苦しいとすら感じるその願いの強さが少し羨ましい。
だって、もう、私は。
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