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2章
嘆くは籠の鳥
しおりを挟む「蝶姫ちゃん。蝶姫ちゃん。今日のご飯は僕が作ったんだぁ。今日こそは味わってよぉ。」
かちゃりと食器の音がする。目を向ければ美味しそうなシチューと簡素なパンがあった。
「嫌だよ。お前が作ったもの食べて酷い目みたのはまだ忘れてないからな。」
「やだなぁ、毒薬も睡眠薬もいれてないよぉ。」
そう、こいつは経験者。神経麻痺の毒を後遺症が残らない程度に盛り一日中ベッドの上だったり、睡眠薬で気付けば見知らぬ場所だったりした記憶はまだある。
「ほらぁ、なぁんにも薬いれてないよぉ。おいしいよぉ。」
瑠璃くんは毒見として一口シチューを飲み込んでにこにこ説得してくる。いや、それ私が使うスプーン。
「瑠璃くん。お前が毒に慣れてるのは知ってるんだからね。」
瑠璃くんは小さい頃からこの組織にいるせいか妙に変なことに慣れている。毒もその一つだ。他には血とか内臓とかドラッグとか。ドラッグは中毒になるはずなのに慣れたとか意味わからなすぎて正直もう最初からヤバかったんじゃないかと思う。
「えぇー。僕じゃ毒見にならなぁいのぉ?しょがないなぁ、紅葉ぃ、あれとってきてぇー」
紅葉?あぁ、あいつこっちに戻ってきたのか。
「紅葉ぃ、ついでにジャンクフード持ってきてぇー」
「えぇー。僕のシチューは食べてくれないのぉ?」
「毒見なしで食べれるか!しつこい!」
ベタベタしてくる瑠璃くんをあしらってれば紅葉がやってきた。
「ほらほら、珊瑚様。毒見役連れて参りましたよ。」
そう言って入ってきたのは、痩せこけた少女と政府でもよく会っていた眼鏡だった。恭しく頭を垂れて、
「お久しぶりです。蝶姫様。」
挨拶をするその顔は政府ではみることがなかった、普段の彼だった。
「は?久しぶり?なにいってんの。まだ一晩も経ってないのに。」
「そうでした?それより、私が持ってきたジャンクフードはお召し上がりになりますか?」
眼鏡はハンバーガーやポテトなどのジャンクフードがのせられたトレーを持っていた。
「毒見通したらね。つっても、シチューで既にやられてる感じだけど。これは毒というよりも久しぶりの食事に胃が驚いたのかな。可哀想に。」
痩せこけた少女はげぼっごほっと咳き込み、口からシチューと唾液が垂れ流しで見るに耐えない。
「えぇー。毒見のために連れてこさせたのにぃ。意味ないじゃん。せっかく新作の薬使ったのにぃ。使えないならぁ、もういらなぁい。」
少女はばたりと倒れた。シチューには衰弱した彼女には耐えきれない何かが入ってたのだろう。
少女はゆっくりと息絶えた。
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