私が壊した宝物

キンネス

文字の大きさ
12 / 21
2章

嘆くは籠の鳥

しおりを挟む


「蝶姫ちゃん。蝶姫ちゃん。今日のご飯は僕が作ったんだぁ。今日こそは味わってよぉ。」

かちゃりと食器の音がする。目を向ければ美味しそうなシチューと簡素なパンがあった。


「嫌だよ。お前が作ったもの食べて酷い目みたのはまだ忘れてないからな。」


「やだなぁ、毒薬も睡眠薬もいれてないよぉ。」


そう、こいつは経験者。神経麻痺の毒を後遺症が残らない程度に盛り一日中ベッドの上だったり、睡眠薬で気付けば見知らぬ場所だったりした記憶はまだある。


「ほらぁ、なぁんにも薬いれてないよぉ。おいしいよぉ。」


瑠璃くんは毒見として一口シチューを飲み込んでにこにこ説得してくる。いや、それ私が使うスプーン。


「瑠璃くん。お前が毒に慣れてるのは知ってるんだからね。」

瑠璃くんは小さい頃からこの組織にいるせいか妙に変なことに慣れている。毒もその一つだ。他には血とか内臓とかドラッグとか。ドラッグは中毒になるはずなのに慣れたとか意味わからなすぎて正直もう最初からヤバかったんじゃないかと思う。

「えぇー。僕じゃ毒見にならなぁいのぉ?しょがないなぁ、紅葉ぃ、あれとってきてぇー」


紅葉?あぁ、あいつこっちに戻ってきたのか。


「紅葉ぃ、ついでにジャンクフード持ってきてぇー」


「えぇー。僕のシチューは食べてくれないのぉ?」


「毒見なしで食べれるか!しつこい!」


ベタベタしてくる瑠璃くんをあしらってれば紅葉がやってきた。


「ほらほら、珊瑚様。毒見役連れて参りましたよ。」


そう言って入ってきたのは、痩せこけた少女と政府でもよく会っていた眼鏡だった。恭しく頭を垂れて、


「お久しぶりです。蝶姫様。」


挨拶をするその顔は政府ではみることがなかった、普段の彼だった。


「は?久しぶり?なにいってんの。まだ一晩も経ってないのに。」


「そうでした?それより、私が持ってきたジャンクフードはお召し上がりになりますか?」

眼鏡はハンバーガーやポテトなどのジャンクフードがのせられたトレーを持っていた。

「毒見通したらね。つっても、シチューで既にやられてる感じだけど。これは毒というよりも久しぶりの食事に胃が驚いたのかな。可哀想に。」

痩せこけた少女はげぼっごほっと咳き込み、口からシチューと唾液が垂れ流しで見るに耐えない。

「えぇー。毒見のために連れてこさせたのにぃ。意味ないじゃん。せっかく新作の薬使ったのにぃ。使えないならぁ、もういらなぁい。」

少女はばたりと倒れた。シチューには衰弱した彼女には耐えきれない何かが入ってたのだろう。
少女はゆっくりと息絶えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

【完結】アル中の俺、転生して断酒したのに毒杯を賜る

堀 和三盆
ファンタジー
 前世、俺はいわゆるアル中だった。色んな言い訳はあるが、ただ単に俺の心が弱かった。酒に逃げた。朝も昼も夜も酒を飲み、周囲や家族に迷惑をかけた。だから。転生した俺は決意した。今世では決して酒は飲まない、と。  それなのに、まさか無実の罪で毒杯を賜るなんて。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

処理中です...