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2章
眼鏡は本体じゃない
しおりを挟む「眼鏡よ。お前がまさか政府として迎えにきたときは驚いたぞ。」
「眼鏡ではなく、紅葉です。気づいてたんですか、一応変装はしていたのですが。」
「変装?あれが?!眼鏡替えただけじゃん!気付かない方が可笑しいわ!」
本気で言ってるのか?赤から黒にフレームを替えただけで変装になるなら世の有名人はどれだけ楽になるんだ!
「それより、先程のジャンクフードはお召し上がりになりましたか?」
「え?まだだけど。毒見役倒れたし。んー、あぁそうだ。毒見は紅葉がしてよ。はい、あーん。」
「なんでそうなるんですか。毒見役はよろしいですが、何故貴女に食べさせて貰うことになるんですか。」
「私が楽しいから。」
「楽しくありません。まったく、食べればいいのでしょう。」
ぱくりと口にした紅葉はまだ気づいていない。背後にバッドを構えた瑠璃くんがいることに。
「もーみーじぃー!」
ゴッと鈍い音が響いた。
「っ?!!......瑠璃様!」
パリンッと眼鏡が割れる音がした。
瑠璃は先輩に似ている。
「もーみーじぃー、蝶姫は俺のだって......言ったよな?」
ただひとつだけ違うのは
「瑠璃くん。」
「蝶姫ちゃん。君は俺の願い。叶えてくれるよね?」
願いを叶える側じゃなく、願う側であることだ。
「お前は俺の願いを叶えてくれないじゃないか!野心まみれの忠誠なんて、要らないんだよ!俺がほしいのは!」
「瑠璃!」
瑠璃の視界を覆い尽くす。
「瑠璃の願いは、瑠璃の感じ方次第だ。前にもそう言っただろう?」
「感じ方も、生き方も、今更変えられるわけないよ。......だって、今更人殺しの事実が消えるわけないだろ!!気付いた時には!!お前だろ!人殺しが幸せになれないなんて言ったのは!」
瑠璃の願いは幸せ、幸福。
だけれど、私は言ったのだ。
瑠璃が無邪気に幸福を願ったとき、人殺しは幸せになれないってよく言うのにそれを願うんだ?と聞いてしまったのだ。
私の世界では常識だったがために気付かなかったその常識が持つ刃の鋭さに。
それ以来、瑠璃は誰彼構わず人を傷つけた。
可哀想な瑠璃は無知で子供だったから、どうすればいいか解らなかったから。
「お前は本当に。」
幸福なんて、自分の感じ方次第で得られるもの。
でも、誰も変えることができないから。
知っていてなお、実行できない。
瑠璃くんもそうだ。思い込みが変化を拒む。
瑠璃くんは本当に。
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