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2章
無自覚
しおりを挟むあの一件以来、瑠璃くん以外の人を見かけない。だいたい予想はできるが、大方瑠璃くんが私の生活範囲から人を追い払ってるのだろう。あーんがなんで駄目だったのかいまだに理解できない私にはストレスでしかない。私が日を重ねるにつれて、元気がなくなっていくのは瑠璃くんも気付いていたのだろう。
「蝶姫ちゃーん。一緒にお昼寝しよぉー!」
ある日突然、瑠璃くんが名案だと言わんばかりに顔を輝かせて部屋に入ってきた。
「は?やだ。」
「なんでなんでなんでぇー?」
冷たくあしらえば、子供のように駄々をこねる。ほんと、小さな子供を相手にしてる気分でやりづらい。私は自分より年下の子を相手にする機会があまりなかったから対処に困る。
「逆に聞くけど一緒に寝る必要ある?」
「たくさんあるよ?僕が安眠できるしぃ、僕が楽しいしぃ、僕が」
「いやまて。それお前にしか必要ないからな。私必要ない。私が承諾する理由ない。どぅーゆーあんだーすたんど?」
「ふっふっふぅん。最近は蝶姫ちゃんの前の世界の言葉も解るようになってきたからねぇ!ずばり、理解した?だ!」
得意気に指を指してくる瑠璃くんの手を下げながら、適当に相槌を打って流そうとする。
「あーはいはい。あってる。あってる。じゃあ、ばいばい。さようなら。またねはなしね。」
「だぁかぁらぁー!お昼寝、したいの!蝶姫ちゃんと!どぅーゆーあんだーすたんど?」
「のー。」
それすらも拒否すればついに我慢がきかなくなり
「もぉー!いいよ!勝手に蝶姫ちゃんと寝るぅ!」
そう言って私を道連れにしてベットへとダイビングした。
「っっ?!おっまえ!よくも!!」
抗議の声を上げようと横にいる瑠璃くんを見れば息がかかるほどの至近距離で一瞬息を止めてしまった。
「んふふ~。これが幸せってやつなのかなぁ!」
「絶対違う。」
瑠璃くんに幸せは訪れない。たとえ私が彼を幸せにしたいと思っても。
「君の知ってる幸せってどんな幸せぇ?」
「私が知ってる日常は学校に行って、授業を受けて、放課後に部活動したり、友達と遊んだりすることだよ。」
「それって幸せぇ?日常が幸せなのぉ?」
「今からしたら、幸せだったよ。幸せって2パターンあってね。自分の基準が低くなった時に解る幸せと心の底から満たされる幸せがあるんだよ。」
「ふーん。よく解んないけどぉ、君といるとぉ嬉しいよぉ。」
瑠璃くんは気付かない。
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