私が壊した宝物

キンネス

文字の大きさ
14 / 21
2章

無自覚

しおりを挟む


あの一件以来、瑠璃くん以外の人を見かけない。だいたい予想はできるが、大方瑠璃くんが私の生活範囲から人を追い払ってるのだろう。あーんがなんで駄目だったのかいまだに理解できない私にはストレスでしかない。私が日を重ねるにつれて、元気がなくなっていくのは瑠璃くんも気付いていたのだろう。


「蝶姫ちゃーん。一緒にお昼寝しよぉー!」



ある日突然、瑠璃くんが名案だと言わんばかりに顔を輝かせて部屋に入ってきた。



「は?やだ。」


「なんでなんでなんでぇー?」


冷たくあしらえば、子供のように駄々をこねる。ほんと、小さな子供を相手にしてる気分でやりづらい。私は自分より年下の子を相手にする機会があまりなかったから対処に困る。


「逆に聞くけど一緒に寝る必要ある?」



「たくさんあるよ?僕が安眠できるしぃ、僕が楽しいしぃ、僕が」



「いやまて。それお前にしか必要ないからな。私必要ない。私が承諾する理由ない。どぅーゆーあんだーすたんど?」


「ふっふっふぅん。最近は蝶姫ちゃんの前の世界の言葉も解るようになってきたからねぇ!ずばり、理解した?だ!」


得意気に指を指してくる瑠璃くんの手を下げながら、適当に相槌を打って流そうとする。


「あーはいはい。あってる。あってる。じゃあ、ばいばい。さようなら。またねはなしね。」


「だぁかぁらぁー!お昼寝、したいの!蝶姫ちゃんと!どぅーゆーあんだーすたんど?」


「のー。」

それすらも拒否すればついに我慢がきかなくなり

「もぉー!いいよ!勝手に蝶姫ちゃんと寝るぅ!」


そう言って私を道連れにしてベットへとダイビングした。



「っっ?!おっまえ!よくも!!」


抗議の声を上げようと横にいる瑠璃くんを見れば息がかかるほどの至近距離で一瞬息を止めてしまった。


「んふふ~。これが幸せってやつなのかなぁ!」



「絶対違う。」



瑠璃くんに幸せは訪れない。たとえ私が彼を幸せにしたいと思っても。



「君の知ってる幸せってどんな幸せぇ?」


「私が知ってる日常は学校に行って、授業を受けて、放課後に部活動したり、友達と遊んだりすることだよ。」


「それって幸せぇ?日常が幸せなのぉ?」


「今からしたら、幸せだったよ。幸せって2パターンあってね。自分の基準が低くなった時に解る幸せと心の底から満たされる幸せがあるんだよ。」


「ふーん。よく解んないけどぉ、君といるとぉ嬉しいよぉ。」


瑠璃くんは気付かない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

【完結】アル中の俺、転生して断酒したのに毒杯を賜る

堀 和三盆
ファンタジー
 前世、俺はいわゆるアル中だった。色んな言い訳はあるが、ただ単に俺の心が弱かった。酒に逃げた。朝も昼も夜も酒を飲み、周囲や家族に迷惑をかけた。だから。転生した俺は決意した。今世では決して酒は飲まない、と。  それなのに、まさか無実の罪で毒杯を賜るなんて。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

処理中です...