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後編
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勉強会もついに終わり、来週の期末に向けて、出来ることはやった。
「はい、ここまでね。お疲れ様。今の調子なら、来週のテストもきっと良い結果になると思うよ。頑張ってね」
「はい。桜井先輩、勉強を教えてくれて、ありがとうございました。先輩は教え方が上手で、すごく分かりやすくて、助かりました」
「そう? なら、良かった」
「はい。来週も頑張ります! それじゃあまた……」
帰り支度をしながら、お礼を伝え、帰りの挨拶をしようとしたところで、話を遮られた。
「待って、藤崎さん。あのさ、8月6日の土曜日って忙しい?」
「8月6日ですか?」
「うん。もし、良かったら、一緒に花火大会行かない?」
……は?
一瞬、先輩が何を言っているのか、訳がわからなかった。その場で固まってしまったが、なんとか頭を動かそうとした。
今、先輩はなんて言った?
花火大会と聞こえた気がする……。
花火大会に一緒に行かないか、と誘われた?
いや、そんなバカな! 幻聴だよね……と聞き返す。
「えっと、すみません、何か聞き間違えたみたいで、もう一度言ってくれませんか?」
「うん、8月6日の花火大会に一緒に行かない?」
ん?
聞き直したのに、やっぱり花火大会に誘われている?
なんで!? 先輩には彼女居るでしょ!
しかも、振った私を花火大会に誘うなんて、どういう神経してるの?! 嫌がらせ? 何なの?
頭の中で段々と怒りと悲しみが大きくなりながら、
先輩の誘いを断ろうと、口を開きかけたその時ーー
「あ、やっと見つけた。海里~!」
誰かが先輩を呼んだ。
足音でその人物が近づいてきているのがわかった。
そちらを見ると、桜井先輩が居た。
え!? 何?!
どういうこと?! 夢? 幽霊?!
それとも、ドッペルゲンガーか何かなの!?
パニックになった。
よく見ると、一緒に居た桜井先輩は眼鏡を掛けており、登場した桜井先輩は、眼鏡がない。
あれ、これ、間違い探し?
間違い探しなら、最初は眼鏡でしょ!
えっと、他には……。
半ば現実逃避しかけた私に浴びせられた言葉で、一気に正気に戻った。
「あれ? この前、俺に告白してくれた子だよね~? 名前聞こうとしてたのに、聞けなかったから。こんなところで会えるとは」
「ちょっと待て! お前、今何て言った?」
「え? こんなところで会えるとは?」
「違う。その前だ」
「名前聞こうと」
「それじゃない! お前に告白って言ったか?」
「うん、そうだよ~」
「は? 藤崎さんと面識あったのか?」
「いや、ないよ~。その時、初めて会ったと思うけど」
目の前で繰り広げられる会話で、段々と状況が掴めてきた。そして、ダラダラと冷や汗が止まらない……。
目の前には、同じ顔が2人。
私が告白したのは、この眼鏡を掛けていない方らしい。ここから考えられる結論は1つだけ。
勇気を出して、聞いてみる。
「あ、あの、桜井先輩……。つかぬ事をお伺いしますが、先輩ってもしかして、双子、だったりします?」
「そうだよ、こっちは弟の空我。見てわかる通り、一卵性双生児だよ」
あぁっ、肯定されてしまった!
……ということは、私が先輩だと思って告白したのは、先輩ではなく弟さんだったと。
じゃあ、ショッピングモールで見かけたのは?
ちょっと待って! 告白後に、先輩が何もなかった様な態度だったのは、本当に何もなかったからだったってこと?
「あれ? 双子だって知らなかった? なら、もしかして、あの告白」
「あ、あ、あ、あの、すみません! 私ちょっと急用を思い出したので、これで失礼します」
まさか先輩が双子で、間違って別の人に告白してしまっていたなんて恥ずかしすぎる! 穴があったら入りたい! 今までの自分の勘違いや、やらかしていた事が色々と発覚し、叫びたくなる衝動を何とか抑え、とりあえず逃げようと思った。
その場から急いで立ち去ろうと、振り返って一歩踏み出したところで、手首を掴まれ、引っ張られた。
先輩の胸に倒れこむ様な形となり、気づいたら、桜井海里先輩の腕の中だった。
先輩の両腕が私の腰に回っている。軽く抱きしめられる様な感じで、逃げようとしても、先輩の手に軽く力が入っていて、逃げられない。
「逃さない」
耳元で囁かれて、一気に顔に熱が集中した。
ひゃあと叫びそうになったのを、咄嗟に両手で口を塞ぎ、押し留めた。
「あ~、なんか、俺、お邪魔虫っぽいね。帰るわ~。じゃあ、海里、夜に時間作っといてね。じゃあね~」
ひらひらと右手を振って、桜井空我先輩は去っていった。
至近距離で先輩の顔を見る事はできず俯いたままでいたら、先輩が話掛けてきた。
「ねぇ、藤崎さんは、空我の事が好きなの?」
「ち、違います」
「じゃあ、空我に告白したのは、俺だと思ったから? 俺のこと好き?」
「……」
うぅ、恥ずかしい。
答えるのに戸惑っていたら、別の問いかけをされた。
「俺のこと、嫌い?」
「そ、そんな事は」
「ねぇ、顔上げて」
そんなに切なそうな声で言われたら、従わざるを得ない! ゆっくり顔を上げ、先輩と目を合わせる。
「俺は、佳純ちゃんが好きだよ」
優しく蕩けそうな笑顔だった。でも、先輩の耳が少し赤くなっていて、それが嬉しかった。
「俺のこと、どう思ってるか、聞かせて」
「す、好きです」
「じゃあ、俺の彼女になってくれる?」
「は、はい」
「花火大会ももちろん一緒に行けるよね? ところで、告白したのっていつ?」
「えっと、7月に入ってすぐなので、大体2週間ほど前です」
「あぁ、だから、ちょっと様子がおかしかったんだね」
「気づいてたんですか?」
「もちろん。佳純ちゃんのこと見てたからね」
そうして、悪戯っぽく笑う先輩に聞かれて、一連の流れを説明することとなった。
図書館近くでの告白。彼女がいると振られたこと。その後の先輩の態度は何もなかったかの様に変わらず、ショックを受けたこと。ショッピングモールで彼女といるところを目撃したことを話した。
「なるほどね。もし、佳純ちゃんが俺が双子だって気付かないままだったら、振られてたのは、俺の方だったんだね……」
先輩にギュッと抱きしめられ、続いてホッとした様に呟かれた。
「危なかった……。手遅れにならなくて良かった。……でも、空我ってモテるし、学校内でも有名らしいけど、知らなかったの?」
「はい、全く。噂に疎くてすみません」
「いや、それで空我を好きになってたら、俺が困るから良かったよ。でも、間違えて空我に告白は、ちょっと悲しいけど」
「す、すみません。告白の時、ちゃんと顔見れてなくて。一瞬違和感があったんですけど、あの時はいっぱいいっぱいで……ごめんなさい」
「いいよ、許してあげる。だから、俺のことは、海里って呼んでね」
「か、海里先輩」
先輩は、よく出来ましたと、私の頭を数回撫でた。
「でも、次からは絶対に間違えないで。眼鏡以外に違うところあるから。アイツの方が少し垂れ目で、俺はピアスあけてない。ほら、ここにもわかりやすい黒子あるから」
左手でシャツの襟を掴み、首元を少しはだけさせ、右手でうなじに近い部分を指して見せてくれた。
その仕草がセクシーで、思わず赤面してしまった。私の顔を見て、先輩の口角が少し上がり、嬉しそうな表情で『帰ろっか』とさり気なく、恋人繋ぎをされた。私が狼狽えているのは構わず、図書室を出る。
これ本当に桜井先輩?
新たな一面にドキドキが止まらないよ!
うぅ……心臓持つかなぁ?
やっぱり恋って大変なのね!?
「はい、ここまでね。お疲れ様。今の調子なら、来週のテストもきっと良い結果になると思うよ。頑張ってね」
「はい。桜井先輩、勉強を教えてくれて、ありがとうございました。先輩は教え方が上手で、すごく分かりやすくて、助かりました」
「そう? なら、良かった」
「はい。来週も頑張ります! それじゃあまた……」
帰り支度をしながら、お礼を伝え、帰りの挨拶をしようとしたところで、話を遮られた。
「待って、藤崎さん。あのさ、8月6日の土曜日って忙しい?」
「8月6日ですか?」
「うん。もし、良かったら、一緒に花火大会行かない?」
……は?
一瞬、先輩が何を言っているのか、訳がわからなかった。その場で固まってしまったが、なんとか頭を動かそうとした。
今、先輩はなんて言った?
花火大会と聞こえた気がする……。
花火大会に一緒に行かないか、と誘われた?
いや、そんなバカな! 幻聴だよね……と聞き返す。
「えっと、すみません、何か聞き間違えたみたいで、もう一度言ってくれませんか?」
「うん、8月6日の花火大会に一緒に行かない?」
ん?
聞き直したのに、やっぱり花火大会に誘われている?
なんで!? 先輩には彼女居るでしょ!
しかも、振った私を花火大会に誘うなんて、どういう神経してるの?! 嫌がらせ? 何なの?
頭の中で段々と怒りと悲しみが大きくなりながら、
先輩の誘いを断ろうと、口を開きかけたその時ーー
「あ、やっと見つけた。海里~!」
誰かが先輩を呼んだ。
足音でその人物が近づいてきているのがわかった。
そちらを見ると、桜井先輩が居た。
え!? 何?!
どういうこと?! 夢? 幽霊?!
それとも、ドッペルゲンガーか何かなの!?
パニックになった。
よく見ると、一緒に居た桜井先輩は眼鏡を掛けており、登場した桜井先輩は、眼鏡がない。
あれ、これ、間違い探し?
間違い探しなら、最初は眼鏡でしょ!
えっと、他には……。
半ば現実逃避しかけた私に浴びせられた言葉で、一気に正気に戻った。
「あれ? この前、俺に告白してくれた子だよね~? 名前聞こうとしてたのに、聞けなかったから。こんなところで会えるとは」
「ちょっと待て! お前、今何て言った?」
「え? こんなところで会えるとは?」
「違う。その前だ」
「名前聞こうと」
「それじゃない! お前に告白って言ったか?」
「うん、そうだよ~」
「は? 藤崎さんと面識あったのか?」
「いや、ないよ~。その時、初めて会ったと思うけど」
目の前で繰り広げられる会話で、段々と状況が掴めてきた。そして、ダラダラと冷や汗が止まらない……。
目の前には、同じ顔が2人。
私が告白したのは、この眼鏡を掛けていない方らしい。ここから考えられる結論は1つだけ。
勇気を出して、聞いてみる。
「あ、あの、桜井先輩……。つかぬ事をお伺いしますが、先輩ってもしかして、双子、だったりします?」
「そうだよ、こっちは弟の空我。見てわかる通り、一卵性双生児だよ」
あぁっ、肯定されてしまった!
……ということは、私が先輩だと思って告白したのは、先輩ではなく弟さんだったと。
じゃあ、ショッピングモールで見かけたのは?
ちょっと待って! 告白後に、先輩が何もなかった様な態度だったのは、本当に何もなかったからだったってこと?
「あれ? 双子だって知らなかった? なら、もしかして、あの告白」
「あ、あ、あ、あの、すみません! 私ちょっと急用を思い出したので、これで失礼します」
まさか先輩が双子で、間違って別の人に告白してしまっていたなんて恥ずかしすぎる! 穴があったら入りたい! 今までの自分の勘違いや、やらかしていた事が色々と発覚し、叫びたくなる衝動を何とか抑え、とりあえず逃げようと思った。
その場から急いで立ち去ろうと、振り返って一歩踏み出したところで、手首を掴まれ、引っ張られた。
先輩の胸に倒れこむ様な形となり、気づいたら、桜井海里先輩の腕の中だった。
先輩の両腕が私の腰に回っている。軽く抱きしめられる様な感じで、逃げようとしても、先輩の手に軽く力が入っていて、逃げられない。
「逃さない」
耳元で囁かれて、一気に顔に熱が集中した。
ひゃあと叫びそうになったのを、咄嗟に両手で口を塞ぎ、押し留めた。
「あ~、なんか、俺、お邪魔虫っぽいね。帰るわ~。じゃあ、海里、夜に時間作っといてね。じゃあね~」
ひらひらと右手を振って、桜井空我先輩は去っていった。
至近距離で先輩の顔を見る事はできず俯いたままでいたら、先輩が話掛けてきた。
「ねぇ、藤崎さんは、空我の事が好きなの?」
「ち、違います」
「じゃあ、空我に告白したのは、俺だと思ったから? 俺のこと好き?」
「……」
うぅ、恥ずかしい。
答えるのに戸惑っていたら、別の問いかけをされた。
「俺のこと、嫌い?」
「そ、そんな事は」
「ねぇ、顔上げて」
そんなに切なそうな声で言われたら、従わざるを得ない! ゆっくり顔を上げ、先輩と目を合わせる。
「俺は、佳純ちゃんが好きだよ」
優しく蕩けそうな笑顔だった。でも、先輩の耳が少し赤くなっていて、それが嬉しかった。
「俺のこと、どう思ってるか、聞かせて」
「す、好きです」
「じゃあ、俺の彼女になってくれる?」
「は、はい」
「花火大会ももちろん一緒に行けるよね? ところで、告白したのっていつ?」
「えっと、7月に入ってすぐなので、大体2週間ほど前です」
「あぁ、だから、ちょっと様子がおかしかったんだね」
「気づいてたんですか?」
「もちろん。佳純ちゃんのこと見てたからね」
そうして、悪戯っぽく笑う先輩に聞かれて、一連の流れを説明することとなった。
図書館近くでの告白。彼女がいると振られたこと。その後の先輩の態度は何もなかったかの様に変わらず、ショックを受けたこと。ショッピングモールで彼女といるところを目撃したことを話した。
「なるほどね。もし、佳純ちゃんが俺が双子だって気付かないままだったら、振られてたのは、俺の方だったんだね……」
先輩にギュッと抱きしめられ、続いてホッとした様に呟かれた。
「危なかった……。手遅れにならなくて良かった。……でも、空我ってモテるし、学校内でも有名らしいけど、知らなかったの?」
「はい、全く。噂に疎くてすみません」
「いや、それで空我を好きになってたら、俺が困るから良かったよ。でも、間違えて空我に告白は、ちょっと悲しいけど」
「す、すみません。告白の時、ちゃんと顔見れてなくて。一瞬違和感があったんですけど、あの時はいっぱいいっぱいで……ごめんなさい」
「いいよ、許してあげる。だから、俺のことは、海里って呼んでね」
「か、海里先輩」
先輩は、よく出来ましたと、私の頭を数回撫でた。
「でも、次からは絶対に間違えないで。眼鏡以外に違うところあるから。アイツの方が少し垂れ目で、俺はピアスあけてない。ほら、ここにもわかりやすい黒子あるから」
左手でシャツの襟を掴み、首元を少しはだけさせ、右手でうなじに近い部分を指して見せてくれた。
その仕草がセクシーで、思わず赤面してしまった。私の顔を見て、先輩の口角が少し上がり、嬉しそうな表情で『帰ろっか』とさり気なく、恋人繋ぎをされた。私が狼狽えているのは構わず、図書室を出る。
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