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第2章 共同戦線スタート

ダンジョンアタック -1-

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『おとうさま。おかあさま。わたくしとアリューシャちゃんは、しゅぎょうにいってまいります。しばらくしたらちゃんとかえってきますから、さがさないでください。フランソワーヌ』

「これでよし!」

 自分で書いた内容へ満足気に頷いて、意気揚々とその紙を家令であり、執事長でもあるグレイディスに差し出した。

「……お嬢様。これでは、微妙に家出臭が……」
「そこのところは、グレイディスがうまいこといっておいてくださいまし」

 記された内容に目を通した執事長から入ったツッコミに、わたくしは握った両手を腰に当てて、そう言い切った。

「さ! まいりますわよ!」
「はい、お嬢様」

 同伴してくれる護衛とメイド達にそう声をかけ、アリューシャちゃんと共に玄関先へと回されて来たわたくし専用の馬車に乗り込んだ。

 例の初級ダンジョンは、この邸から2日半の距離にあるダータルヘッジ領との領境近くにある。

 もう昼を過ぎてしまったこの時間では、途中にある小さな町と村でそれぞれ一泊して、ギリ、明々後日の夕方にダンジョン到着くらいの感じになるだろう。

 けど、それで丁度いい。

 何故なら、このダンジョンで3年の夏季休暇時、女神サーシャエール様から聖女の称号を受け取る為に訪れる最下層の隠し部屋、その秘密の入口は、早朝にしか現れないからだ。

 これが攻略情報として出回るまで、15chと呼ばれる匿名掲示板の専用攻略スレに於けるプレイヤーの阿鼻叫喚ったら半端なかった。

 当該攻略情報を公式が提供しなかったのもあったけど、入口が時限出現なのだと知れたのは本当に偶然で。

 部活の試合会場に向かう為に乗った始発電車で毎朝5時に行われる定期リセット後にアプリへログインし、たまたまそれをみつけてしまった某学生プレイヤーは「普段だったらガチ寝しとるわ! しかも10分だけとか短っ⁈ 朝日が登った瞬間だけ有効ってこと⁈ こんな時だけリアル時間適用とかアホか公式ぃ!」と半ば暴言、半ば心の叫びみたいなコメントと共に情報を投稿し、それ以降「定時リセット直後ログイン必須、10分後消失確定イベント」略して「リセット5-10ファイブテン」として有名になった。

 勿論、その時間にダンジョン最下層のボス部屋、ボスを倒した後にダンジョンを脱出する為の魔法陣に乗らず、最奥の壁前に待機していなければ絶対に見つからないレベルの隠蔽度合いで、本当の意味でのガチ隠し部屋だった為、よく見つけた! と当時、そのプレイヤーはリアル救世主扱いされていた。

 今回、わたくし達が挑むのは、そのダンジョンのガチ隠し部屋。

 早朝5時より10分間のみ有効の「女神の間」へのアタックとなるのだ。

 当然、最弱とはいえボスに挑まなくてはならない都合上、わたくしもアリューシャちゃんもレベルアップするのは最優先。

 途中、宿泊の為に立ち寄った町や村でも無理しない程度、狩れるだけ狩ってアリューシャちゃんは見事、適正レベルである10に到達。

 わたくしも何とかレベル7までは辿り着けた辺りで、目的の初級ダンジョン「昏森塚くらもりづかの地下迷宮」へと到着した。


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