僕は男の子

坂本餅太郎

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僕たちは男友達

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「ねえ、今日の僕の格好どう思う?」

 彼の言葉を聞いて、少し気分も晴れたので、思い切って聞いてみた。
 彼は何も感じていないのか、何も思っていないのか。

「最高に可愛い。今すぐ抱きしめてお持ち帰りしたい。結婚して欲しい」

 想定していたものとは違い、変な回答だった。
 彼をカッコイイと思っていた自分が少し揺らぎそうだ。

「でもな、お前は俺の数少ない友達だ。ほとんど居ない友達の一人だ。故にお前のことならなんでも知ってる」

 そんなに友達がいないことを強調しなくても、僕は知っている。
 初めて会った中学生の時から、大学生に至るまで仲良くしていた友人なんて数える程しかいないくらい知っている。
 ただ、最後の言葉は聞き捨てならない。

「へえ。でも僕、君にまだ教えてないことがあるんだけどなあ」

「は?! なんだ?! もしかして本当は女だったのか?!」

 彼の困惑ぶりは面白い。さっきまで色々変な事を言われて、僕が固まったり狼狽したりした仕返しだ。

「実はね、ぼく結構お酒に強いみたいなんだ」

「なんだと?! それじゃあお持ち帰り難易度が高いじゃないか! ちょろくお持ち帰りされる状況を想像していたのに……!」

 なんだか雲行きが怪しくなってきた気がするなあ。カッコ悪い人になってきているよ。

「サークルの新歓で飲まされたんだけど、その時に知ったんだ」

 なんてことない発言だったと思うのだけど、彼の目の色が変わった。

「は? 誰に飲まされたの? お前のことをお持ち帰りしようとした野郎は誰だ? 生まれてきたことを後悔させてやるぞ」

「ちょっ! 待って! 僕に飲ませた人たちは早々にダウンしちゃったから! それに、僕は男の子だからね?!」

 あの時を思い出すと少し笑える。新歓で断りきれずに飲んだが、僕の酔いが回る前には男の子はみんな潰れていた。
 中には本当にお持ち帰りしたいと思っていた人もいたのかもしれないが、僕はお酒が強いからそんなことにはならないと分かった。
 ちなみに新歓の翌日は、潰れた男の子たちの後片付けをした女の子たちに冷めた目で見られる男の子たちという、なかなかに面白い場面を見ることが出来た。

「よく聞け。この世には男じゃなければダメな奴と男でも構わない奴の二種類しかいない。ちなみに俺は、どちらにも当てはまらない。お前じゃなきゃダメな奴、だ」

「何その二択?! 僕はそのどちらでもないんだけど?! 世の中の男の人みんながそんなんじゃないって!」

 地獄か地獄みたいな二択だ。
 つい笑みが零れる。
 彼とこういったふざけた話をするのは楽しいから。

 これからも、僕たちは男友達として、時にはふざけ合って、時には悩みを吐露して、ずっと仲良く、共にいたいと思う。

 彼の言うような二人の関係も、彼とならいいかもしれないと思ったのは秘密である。
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