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帰宅
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友人と別れ、帰路に着く。
さて、どうやって母と仲直りをしようか。今までも小さな喧嘩はしてきたが、家を出ることは無かった。
冷静になると少しやりすぎたかなという気持ちになる。
「どうすっかな……」
朝にも通った商店街を歩きながら一人呟く。
いい案は簡単には思いつかない。
「そこの兄ちゃん! 今セールやってんだ、見ていかねえか?」
声を掛けられ、立ち止まる。店主だか従業員だかはわからないが、元気のいいおっさんだ。
「すみません。今現金持ってないので……」
「おおそうか! それがな! うちはあれが出来るんだ! えーと、パイパイ? だったか? 兄ちゃんやってないんか?!」
「PayPayですか? インストールしてますよ」
「おお! なら平気じゃねえか! ちょいと見て行ってくれや!」
おっさんの勢いに負けて、店に入ることにした。見ない顔だなと思ったら開店したばかりらしく、今日のセールは開店セールであったらしい。
「あ、きつねとたぬきだ。」
目玉商品であるのか、赤いきつねと緑のたぬきが大量に陳列されている。それも定価の半額である。
「これ、買って帰るか。」
そう呟いてからは早かった。緑のたぬきを2つ手に取り、購入する。
母に一言いえば済むのだが、仲直りの品を持って帰るのもいいと思ったのだ。それで、母が好きな緑のたぬきを選んだ。
「まいどあり! また来てくれよ! 兄ちゃん!」
おっさんの言葉に手を振りこたえ、緑のたぬきが二つ入った袋を持って再び帰路につく。
『あと十分くらいで家に着く』
一応、母に連絡を入れておく。もしかしたら急に家を飛び出した俺を心配してるかもしれないから。
『了解』
いつも通りの淡白な返事が返ってくる。
特に何も思っていなかったのか。メッセージのやり取りだけではイマイチ分からない。
帰ってからどう話を切り出そうかと考えていると、いつの間にか自宅の前に着いていた。
その場の勢いで、臨機応変にいけばいいと思い、鍵を開ける。
「ただいま」
いつも通りの玄関だ。いや、1日も経っていないのに変化があっては困るが。
「おかえり。ご飯できてるよ」
リビングから母が姿を現す。そして俺の手にある袋を見て、少し笑った。
「あんたも買ってきたのね」
言葉の意味が最初はわからなかったが、リビングに行くと直ぐにわかった。
テーブルの上には、すぐにでも食べられそうな赤いきつねが二つ置いてあった。
「母さんも買ってたんだ」
親子で同じようなことを考えていたと思うと、笑ってしまう。
「朝はごめん。俺、言い過ぎた。」
「別に、私も言いすぎたし。ごめん。」
仲直りは簡単だった。お互いに謝って終わりだ。
うちの親子喧嘩なんて大抵こんなもんだ。
お互いが謝って終わり。
そして、お互いを仲を取り持ったものが今回は赤いきつねと緑のたぬきであった。ただそれだけだ。
「ほら、食べよ。」
「うん、いただきます。」
さて、どうやって母と仲直りをしようか。今までも小さな喧嘩はしてきたが、家を出ることは無かった。
冷静になると少しやりすぎたかなという気持ちになる。
「どうすっかな……」
朝にも通った商店街を歩きながら一人呟く。
いい案は簡単には思いつかない。
「そこの兄ちゃん! 今セールやってんだ、見ていかねえか?」
声を掛けられ、立ち止まる。店主だか従業員だかはわからないが、元気のいいおっさんだ。
「すみません。今現金持ってないので……」
「おおそうか! それがな! うちはあれが出来るんだ! えーと、パイパイ? だったか? 兄ちゃんやってないんか?!」
「PayPayですか? インストールしてますよ」
「おお! なら平気じゃねえか! ちょいと見て行ってくれや!」
おっさんの勢いに負けて、店に入ることにした。見ない顔だなと思ったら開店したばかりらしく、今日のセールは開店セールであったらしい。
「あ、きつねとたぬきだ。」
目玉商品であるのか、赤いきつねと緑のたぬきが大量に陳列されている。それも定価の半額である。
「これ、買って帰るか。」
そう呟いてからは早かった。緑のたぬきを2つ手に取り、購入する。
母に一言いえば済むのだが、仲直りの品を持って帰るのもいいと思ったのだ。それで、母が好きな緑のたぬきを選んだ。
「まいどあり! また来てくれよ! 兄ちゃん!」
おっさんの言葉に手を振りこたえ、緑のたぬきが二つ入った袋を持って再び帰路につく。
『あと十分くらいで家に着く』
一応、母に連絡を入れておく。もしかしたら急に家を飛び出した俺を心配してるかもしれないから。
『了解』
いつも通りの淡白な返事が返ってくる。
特に何も思っていなかったのか。メッセージのやり取りだけではイマイチ分からない。
帰ってからどう話を切り出そうかと考えていると、いつの間にか自宅の前に着いていた。
その場の勢いで、臨機応変にいけばいいと思い、鍵を開ける。
「ただいま」
いつも通りの玄関だ。いや、1日も経っていないのに変化があっては困るが。
「おかえり。ご飯できてるよ」
リビングから母が姿を現す。そして俺の手にある袋を見て、少し笑った。
「あんたも買ってきたのね」
言葉の意味が最初はわからなかったが、リビングに行くと直ぐにわかった。
テーブルの上には、すぐにでも食べられそうな赤いきつねが二つ置いてあった。
「母さんも買ってたんだ」
親子で同じようなことを考えていたと思うと、笑ってしまう。
「朝はごめん。俺、言い過ぎた。」
「別に、私も言いすぎたし。ごめん。」
仲直りは簡単だった。お互いに謝って終わりだ。
うちの親子喧嘩なんて大抵こんなもんだ。
お互いが謝って終わり。
そして、お互いを仲を取り持ったものが今回は赤いきつねと緑のたぬきであった。ただそれだけだ。
「ほら、食べよ。」
「うん、いただきます。」
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