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006.犬の守り神
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これは私がまだ学生時代の話だ。
ある日、俺たちは街まで遊びに行くために自転車で山越えをしようと計画していた。
今考えれば無謀すぎることだが、そのときは皆、無茶してなんぼだろ! と思っていたため、山越えに自転車で行くということに意味を見出していたのだ。
当日、無事に自転車で山を超えた俺たちは街へ遊びに行った。
山をいくつも超えた甲斐があって、街での遊びはとても楽しかった。
山越えをしたこともあってあまり遊ぶ時間が取れなかったが、翌日には学校に行かなければならなかったため、夕方には俺たちは帰り始めた。
最後の山に辿り着いた頃には午後8時を過ぎ、もうあたりは真っ暗だった。
その最後の山を登っている最中、友人のひとりが横に鳥居があることに気づいた。
道を逸れ、階段が上に続いている。
行きにこんなものを見た記憶がないが、山越えが楽しみで見落としていただけだったのかもしれない。
別の友人が「せっかくだしこの神社にお参りに行こうぜ」と言い出し、みんなでお参りに行くことにした。
階段はかなり長く、途中で帰りたいと思うほどだった。
やっと登り終えたその階段は全部で240段あった。そんなに長ければ帰りたくもなるだろう。
たどり着いた先にあったのは無人の神社だった。
境内は殺風景で、そこに賽銭箱はなく、あたりに小さな祠がたくさんあった。
お参りする気満々の私たちだったが、賽銭箱がないことで少し気持ちがそがれてしまったが、どうせならとその神社の前に五円玉を置き、手を叩いてから帰宅することにした。
皆が適当に名も知らぬ神社で願いを告げ、その後は何事もなく家に着くことが出来た。
そして数日後、その日は塾からの帰りが遅くなっていた。
午後九時過ぎ頃だっただろうか。一人で薄暗い道を歩いていると、前から黒いパーカーをはおり、フードを深く被った男が歩いてきた。
こちらに向かってくる。
こちらに包丁を向けて。
彼は通り魔だった。
恐怖で立ち尽くしているとき、急にたくさんの野良犬たちが飛び出してきて、その男に飛びかかった。
男は倒れ、包丁を手放し、逃げていった。
犬に襲われる彼を見て、俺は数日前に神社でした願い事を思い出した。
"人に殺されるようなつまんない死に方をしませんように"
あの神社に祀られた神が、その願いを聞き入れてくれたのだろうか。
次の休日、俺はその神社に再び行くことにした。
朧気な記憶を頼りに歩くと割とすぐに神社にたどり着くことが出来た。
あの時置いたお賽銭の5円は、なくなっていた。
神社の名前を確認したが、ボロボロになっていて読みにくかったが、"戌護神社"と、書かれてあった。
また次の休日、お礼のお供物を持って神社に行っが、そこにあったはずの神社は、跡形もなく消えていた。
それはまるで、最初からそこにはなかったかのように。
近隣の人に神社のことを聞いても、誰も知らないとのことだった。
しかし、俺は確かに神社にお参りに行った記憶がある。
そして、そこでの願いは聞き届けられ、犬が死から救ってくれた。
たとえ他の人たちがあそこには神社がないと、神などいないと言ったとしても、俺は神を信じる。
ある日、俺たちは街まで遊びに行くために自転車で山越えをしようと計画していた。
今考えれば無謀すぎることだが、そのときは皆、無茶してなんぼだろ! と思っていたため、山越えに自転車で行くということに意味を見出していたのだ。
当日、無事に自転車で山を超えた俺たちは街へ遊びに行った。
山をいくつも超えた甲斐があって、街での遊びはとても楽しかった。
山越えをしたこともあってあまり遊ぶ時間が取れなかったが、翌日には学校に行かなければならなかったため、夕方には俺たちは帰り始めた。
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道を逸れ、階段が上に続いている。
行きにこんなものを見た記憶がないが、山越えが楽しみで見落としていただけだったのかもしれない。
別の友人が「せっかくだしこの神社にお参りに行こうぜ」と言い出し、みんなでお参りに行くことにした。
階段はかなり長く、途中で帰りたいと思うほどだった。
やっと登り終えたその階段は全部で240段あった。そんなに長ければ帰りたくもなるだろう。
たどり着いた先にあったのは無人の神社だった。
境内は殺風景で、そこに賽銭箱はなく、あたりに小さな祠がたくさんあった。
お参りする気満々の私たちだったが、賽銭箱がないことで少し気持ちがそがれてしまったが、どうせならとその神社の前に五円玉を置き、手を叩いてから帰宅することにした。
皆が適当に名も知らぬ神社で願いを告げ、その後は何事もなく家に着くことが出来た。
そして数日後、その日は塾からの帰りが遅くなっていた。
午後九時過ぎ頃だっただろうか。一人で薄暗い道を歩いていると、前から黒いパーカーをはおり、フードを深く被った男が歩いてきた。
こちらに向かってくる。
こちらに包丁を向けて。
彼は通り魔だった。
恐怖で立ち尽くしているとき、急にたくさんの野良犬たちが飛び出してきて、その男に飛びかかった。
男は倒れ、包丁を手放し、逃げていった。
犬に襲われる彼を見て、俺は数日前に神社でした願い事を思い出した。
"人に殺されるようなつまんない死に方をしませんように"
あの神社に祀られた神が、その願いを聞き入れてくれたのだろうか。
次の休日、俺はその神社に再び行くことにした。
朧気な記憶を頼りに歩くと割とすぐに神社にたどり着くことが出来た。
あの時置いたお賽銭の5円は、なくなっていた。
神社の名前を確認したが、ボロボロになっていて読みにくかったが、"戌護神社"と、書かれてあった。
また次の休日、お礼のお供物を持って神社に行っが、そこにあったはずの神社は、跡形もなく消えていた。
それはまるで、最初からそこにはなかったかのように。
近隣の人に神社のことを聞いても、誰も知らないとのことだった。
しかし、俺は確かに神社にお参りに行った記憶がある。
そして、そこでの願いは聞き届けられ、犬が死から救ってくれた。
たとえ他の人たちがあそこには神社がないと、神などいないと言ったとしても、俺は神を信じる。
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