餅太郎の恐怖箱【一話完結 短編集】

008.消えゆく魂

　放課後、学校の校舎は静まり返っていた。

　生徒たちのほとんどはすでに帰宅し、教室は寂しい雰囲気に包まれている。

　そんな放課後の教室で不気味な出来事が起きた。
　
　ある生徒、ケンは学校の図書室で本を読んでいた。窓の外は既に暗く、夜が迫っているような時間であった。

　そんな時突然、彼は何か変な気配を感じた。教室の中に誰かいるような気がしたのだ。

　けれども、教室を見渡しても周りには誰もいない。ケンは気のせいだと思って、本に集中しようとした。
　
　しかし、次第に気配は強くなり、教室のドアがゆっくりと開かれた。外からは見知らぬ少女が現れた。

　彼女は青白い肌をしており、目は真っ赤で光っていた。ケンは恐怖に震えながら、勇気を振り絞って彼女に声をかけた。

「誰ですか？　何をしているんですか？」
　
　少女は微笑んで答えた。

「私はこの学校の生徒よ。放課後、昨日の友達と遊んでいる最中に友達がいなくなってしまったから探しているの。色んな人に聞いて回ろうと思って声をかけていたのだけど、ほとんどの人には無視をされて、残りの人達は私を見ると走って言ってしまうの」
　
　ケンは驚きと同時に、哀れみの気持ちが湧き上がってきた。

　彼女が既に死んでおり、この世の者ではないと理解するのに時間がかからなかった。
　
「私は助けが必要なの。もうこの学校には知っている人が居なくなってしまったわ。たぶん、私はここにいてはいけないのね」
　
　ケンは恐怖と同情の入り混じった心境で彼女を見つめた。彼は決断し、彼女を導くことを決意した。

　彼は祈りを捧げ、少女の魂を成仏させる手伝いをした。

　少女の顔は安らかな表情に変わり、彼女は光り輝いて消えていった。
　
　その後、学校では放課後に異変はなくなり、平穏な日々が戻った。

　しかし、ケンはその出来事を忘れることはできなかった。

　彼はその経験から、死者の魂が安らかに成仏できるように手助けすることの大切さを知った。
　
　成長した私は今でも、この世に留まる全ての死者が安らかに成仏できることを祈っている。