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013.個人情報保護はしっかりと
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我が家は共働きの両親と娘の私という、三人家族でした。
ペットも飼っておらず、家に帰るといつもひとりでした。
私が中学二年生だったかと思います。いつも通り学校の授業が終わり、部活動が休みだったこともあり、やや早めに家に帰りました。
いつも通り誰もいない家。物音一つない家で、私は時間を持て余していました。
少し先にテストも控えているし、勉強でもしようかな、と立ち上がったときに、家の電話が鳴りました。
珍しいことでもないですし、両親共働きということもあって、電話を取ることには慣れていました。
逡巡することも無く受話器を手に取り、耳に当てました。
「今、君の家の近くにいるんだ」
男性の声で、そう言われました。
最初は何を言われているのか理解出来ず、少し固まってしまいました。
返事がないからか、電話口からは再度、家の近くにいる、と男性の声が聞こえました。
少し時間が経つと、私は冷静さを取り戻しました。
どうせイタズラ電話だろう。暇な人もいるもんだ、と。
「イタズラ電話はやめてください。切ります」
そういって電話を切ろうとしたときに、ふと違和感を感じました。
電話越しに聞こえる音。今、私の耳に直接聞こえる音。
外で工事をしている音が、電話越しからも聞こえていたのです。
電話を切ろうとしていましたが、またしても体は硬直してしまいました。
「君のことは卒業アルバムで見つけたんだ」
男はそう言いました。
この時に私は正常な判断ができませんでした。
すぐに電話を切ればいいものを、その男と会話を続けてしまいました。
「あなたは誰? なぜ卒業アルバムを持っているの?」
友人のイタズラかもしれない、むしろそうであってくれと、その時は思っていました。
「それはね」
しかし、私の思いとは裏腹に、男は驚くべき言葉を続けました。
「僕がPTA役員だからさ。アルバムを見て、君のことが気になったんだ」
これを聞いて私は全身がゾワゾワとし、慌てて受話器を叩きつけて電話を切り、家の戸締りを確認して自室に篭もりました。
文章では怖さがイマイチ分からないかも知れませんが、当時は本当に怖くて怖くて仕方がありませんでした。
電話番号が知られている。
住所が知られている。
顔が知られている。
名前が知られている。
相手はPTA役員。つまりは大人。
既婚者の可能性が高い。
私と十歳も離れていない子供がいる。
子供に手を出そうとしている。
色々と頭の中でぐるぐるとまわりました。
以上が私の人生で一番ゾッとしたヒトコワです。
今は卒アルに住所の記載や電話番号の記載もなくなったと聞きました。
昔よりも個人情報の保護が厳しい時代ですので、このようなことが起こる可能性は低いと思いますが、皆さまもどうかお気をつけください。
ペットも飼っておらず、家に帰るといつもひとりでした。
私が中学二年生だったかと思います。いつも通り学校の授業が終わり、部活動が休みだったこともあり、やや早めに家に帰りました。
いつも通り誰もいない家。物音一つない家で、私は時間を持て余していました。
少し先にテストも控えているし、勉強でもしようかな、と立ち上がったときに、家の電話が鳴りました。
珍しいことでもないですし、両親共働きということもあって、電話を取ることには慣れていました。
逡巡することも無く受話器を手に取り、耳に当てました。
「今、君の家の近くにいるんだ」
男性の声で、そう言われました。
最初は何を言われているのか理解出来ず、少し固まってしまいました。
返事がないからか、電話口からは再度、家の近くにいる、と男性の声が聞こえました。
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どうせイタズラ電話だろう。暇な人もいるもんだ、と。
「イタズラ電話はやめてください。切ります」
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外で工事をしている音が、電話越しからも聞こえていたのです。
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すぐに電話を切ればいいものを、その男と会話を続けてしまいました。
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友人のイタズラかもしれない、むしろそうであってくれと、その時は思っていました。
「それはね」
しかし、私の思いとは裏腹に、男は驚くべき言葉を続けました。
「僕がPTA役員だからさ。アルバムを見て、君のことが気になったんだ」
これを聞いて私は全身がゾワゾワとし、慌てて受話器を叩きつけて電話を切り、家の戸締りを確認して自室に篭もりました。
文章では怖さがイマイチ分からないかも知れませんが、当時は本当に怖くて怖くて仕方がありませんでした。
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相手はPTA役員。つまりは大人。
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