幽くんは噛み合わない

柚木

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幽くんと代理人

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 幽くんには兄妹がいます。
 一人は姉の結城 現ゆうき うつつさん。ブラコンの変態で背の小さい金髪。
 もう一人は妹の結城 美琴ゆうき みことちゃん。黒髪のショートヘアで幽くん曰く日本人形っぽいと言われていました。
 そして妹ちゃんにも霊感があるらしいです。結城家で霊感が無いのはお父さんと現さんだけらしいです。

 今日は土曜日で、幽くんとデートです。
 今日から上映がされる映画を見に行く予定です。アクション映画で話題作なのでデートと合わせてテンションが上がり、待ち合わせ時間より早く来てしまいました。
 駅前の大時計の前には私の他にもたくさん人が待っています。
 その待ち合わせの人達の中で、一際目立つ存在がいます。
 綺麗な黒髪でショートヘアの女性。少しつり目できつそうな印象もありますが、そこがより綺麗さを際立たせています。
 その女性はスマホを見ながら辺りを見渡しています。
 誰かと待ち合わせでしょうか? 見比べているってことはオフ会なのでしょう。これから来る人が変な男じゃなければいいのですが。

 そんな風にその女性を見守っていると、その女性と目が合いました。
 それはもうゲームなら勝負を挑まれる位にばっちり視線がぶつかりました。
 数秒目が離せず見つめ合っていると女性はこちらに近づいてきました。おそらく彼女はトレーナーです。大人のお姉さんです。勝てたらおこづかいを沢山くれるのだと思います。

「柳下桜さんですか?」
「はい。そうですが、どちら様でしょうか?」

 なぜか私の名前がバレています。これはどこで情報が漏洩したのでしょうか? いつの間にかスマホを落としていたのでしょうか?

「ごめんなさい。私は結城 美琴。結城幽の妹です」

 予想外でした。言われれば確かに以前聞いた容姿と一致します。黒髪のショートヘアで日本人形っぽい。ですが身長がこんなに高いとは思っていませんでした。
 現さんと年齢が逆なんじゃないでしょうか。逆であれば私が以前勘違いすることはなかったと思います。

「いつも兄がお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそいつも幽くんにはお世話になっています」

 なんでしょうかこの社交辞令は……。
 美琴ちゃんは独特の雰囲気を持っているので対応が難しい子の様です。

「私がここに来た用件なのですが、兄が風邪を引いてしまい待ち合わせに来れないので、代わりに来ました」
「幽くんが風邪って大丈夫なの? 今からお見舞いに行った方がいいのかな?」

 それならそうと連絡をくれればいいのに。もしかして私が気づいてなかった?
 そう思ってスマホを見ても、連絡はありませんでした。

「連絡もできないほどってことはお見舞いに行かない方がいいのかな?」
「兄から伝言です。俺の事は気にせず美琴と一緒に映画を楽しんでくれ。だそうです」

 幽くんは風邪のせいで混乱しているらしいです。
 普通は行けなくなったからまた別の日にしよう。でよくありませんか? なぜデートだったはずなのに初対面である彼氏の妹さんと一緒に映画を見ることになるのでしょうか……。

「それでは桜さん、映画に行きましょう。開場に間に合いません」

 そして代理のはずの美琴ちゃんはちょっとテンションが上がっている様な気がします。
 心なしか目がキラキラしていてとても楽しそうです。

「えっと美琴ちゃんは、私と二人でいいの? 今日見るのアクション映画だけど」
「はい、アクション映画大好きですから!」

 見間違いではなく本当に楽しそうです。
 日本人形と言われている割にはかなり表情豊かなようです。

 結局彼氏の妹と二時間の映画を存分に楽しんでしまいました。

「楽しかったですね。爆発も派手でしたしやっぱり映画はアクションですよね」
「そうだね。映画館で見るならアクションとか派手なのがいいね」

 見終わった後に美琴ちゃんと二人でファミレスに入り、一時間近く映画の感想を言い合い晩ご飯の時間だからと別れました。



 休みが明け、すっかり体調が戻った幽くんに土曜日の事を話しました。

「美琴ちゃん可愛いね。感情表現も豊かだし、日本人形っぽいっていうからもっと無表情なのかなって思ってたよ。全然違うじゃん」
「日本人形って無表情じゃないだろ。結構顔が変わるぞ。笑ってたり泣いてたり怒ってたりする」

 幽くんは何を言っているのでしょうか? 日本人形ってそんなに感情表現豊かではないと思います。

「そんな感情表現が豊かなところと髪型が一緒だからそう紹介したんだけど」
「幽くん、普通の日本人形はそこまで呪われてないよ」

 幽くんの中で日本人形は呪われている物らしいです。
 今度呪われていない日本人形を見に行くことにしました。
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