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幽くんとお弁当
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幽くんの家族はお父さんと現さんを除いて霊感があります。
そこまで霊感がある人がたくさんいると、一般的な普通と結城家の普通にズレが生じることもたまにあります。
この日は初めて私が幽くんにお弁当を作りました。
ほとんどが冷凍食品ですが、卵焼きと身にハンバーグだけは自分で作り喜んでもらえるといいな。なんて考えていました。
もちろん前日の内に幽くんにはお弁当を作ることは伝えています。サプライズで持って行って二個食べさせるなんてへまはしません。
四時限目の授業が終わり、私と幽くんは人の出入りが比較的少ない空き教室に向かいました。
「頑張って作ってみました。まだまだ、修行中ですが、愛情は詰まっていますので……食べて」
「いただきます」
昨日の夜練習していた時は恋人だしこれくらい言ったほうがいいよね。なんて考えていましたが本人を目の前にすると馬鹿みたいに恥ずかしいです。
恥ずかしさはうつるらしく幽くんも顔が赤いです。
これはもう二人とも照れたので引き分けではないでしょうか?
「うん。普通だ」
えっ……、今なんて……?
お弁当の蓋を開けただけで普通呼ばわりされてしまいました。
冷凍食品の野菜、卵焼き、ミニハンバーグ、それとカットされたフルーツ。確かに普通です。普通ですが、こういう時に普通って普通言いますか?
「どうかした? 早く食べようぜ。桜の手作り楽しみにしてたんだから」
「え、あ、うん。そうだね、食べようか」
さっきの発言は幽くんの中で無かったことになったのでしょうか? さっきのをなかったことにする広い心を残念なことに私は持ち合わせていません。
でも幽くんはそんな私に気付くことなく卵焼きを口にしています。
「美味い。桜って料理美味いんだな。これ冷凍じゃなくて手作りだろ?」
「うん。そうだよー」
なぜその冷凍か否かには敏感で、私の気持ちには鈍感なのでしょう。
どんなに褒めてくれても最初に普通と言われてしまったせいで全ての言葉に普通と付いている気がしてしまいます。
普通に美味しい、普通に料理上手。下手ではないが決して上手ではない普通……。
作ってこない方が良かった気さえしています。
「ご馳走様。桜が食べてる間に弁当箱洗ってくるよ」
気が付くと幽くんの弁当箱の中身は空になっていました。
どうやら本当に普通の美味しさだったらしいです。
「いいよ、私が帰ってから洗うから」
「作ってもらったんだからせめて洗うくらいはするよ。逃げない弁当箱なんて簡単に洗えるから」
「待って、普通のお弁当箱は逃げないよ!」
予想外の言葉に幽くんの腕を掴みました。
私には聞き逃すことができない言葉が幽くんの口から飛び出ました。
「そうみたいだな。中学の時に初めて知ったよ」
「待って、幽くんはなんで弁当箱をそこまで洗いたいの?」
急いで教室を飛び出そうとする幽くんは私の腕を振り払う勢いです。
「逃げるのは弁当箱じゃなくて俺だって言いたいのか?」
「急にどうしたの? 別に上手いこと言えてないのになんでそんなドヤ顔なのさ」
「汚れたまま弁当箱がニ三日失踪したら腐るぞ」
「ツッコミどころしかないよ。お弁当箱がニ三日失踪ってどういう状態なの? お弁当箱は普通失踪しないから」
そこまで言ってようやく幽くんは落ち着いたのか座りました。
「それで何がどうしたらお弁当箱が逃げるなんて話になるの? 十六年生きて初めて聞いたよそんな話」
「本当に弁当箱は逃げないんだな。家の弁当箱は良く逃げるんだよ」
何度聞いても意味がわかりません。これはあれでしょうか? 本当は逃げるのが普通で私だけがおかしくなったのでしょうか……。
「家の弁当箱は漏れなく付喪神が憑いているんだ」
カッコいい顔でこの人は何を言っているのでしょうか……。
「遠足に行けば弁当箱が先に付いていたり、給食が無い日は職員室の冷蔵庫に入っていたりしてよく怒られてたな」
だから中学の終わりに弁当は冷蔵庫に入れてはいけません。と注意があったんでしょう。
誰がそんなことしているのかと思ったら幽くんでした。
「付喪神っていうくらいだからプラのお弁当箱じゃないんだよね?」
「ああ、アルミ製の奴。写真もあるぞ。探すときに写真があると便利だし」
差し出されたスマホに映っているのはボロボロのお弁当箱でした。何度も落としたような凹みに所々塗装が剥がれている資料館に展示されている様なボロボロさで、挙句の果てには平仮名でゆうきと書いています。
もはやお弁当箱ではなくペットのような感覚です。
たわしを散歩させている人ももしかしたら霊感があるのかもしれません。
「言いたくないけど、捨てた方がいいよ。衛生面が危ない」
幽くんの言い方だと最低でも一度はカビが生えているはずです。
それを使い続けるのは良くないと思います。
「でも捨てても必ず戻ってくるんだよ」
「それは確実に呪われてるよ。お寺にお払いしてもらおう」
「別に悪さするわけじゃないしいいかなと思ってるよ」
流石霊感一家です。不気味なお弁当箱にも愛着があるらしいです。
そして一段落したところで予鈴が鳴り、話しもそこそこに片づけを始めました。
お弁当箱を包みなおし午後の授業を終え、自宅に戻り、お弁当箱を洗うために包みを開けます。
そこには一つ銀色のお弁当箱が増えていました。それはまごうことなく結城家のお弁当箱です。
私は悲鳴を上げ、幽くんに連絡し取りに来てもらいました。
「ごめんな。家の弁当箱が迷惑かけたみたいで、しっかり言い聞かせるから」
「うん。お願いね」
霊感のある幽くんの家にいるペットは古びた弁当箱でした。
そこまで霊感がある人がたくさんいると、一般的な普通と結城家の普通にズレが生じることもたまにあります。
この日は初めて私が幽くんにお弁当を作りました。
ほとんどが冷凍食品ですが、卵焼きと身にハンバーグだけは自分で作り喜んでもらえるといいな。なんて考えていました。
もちろん前日の内に幽くんにはお弁当を作ることは伝えています。サプライズで持って行って二個食べさせるなんてへまはしません。
四時限目の授業が終わり、私と幽くんは人の出入りが比較的少ない空き教室に向かいました。
「頑張って作ってみました。まだまだ、修行中ですが、愛情は詰まっていますので……食べて」
「いただきます」
昨日の夜練習していた時は恋人だしこれくらい言ったほうがいいよね。なんて考えていましたが本人を目の前にすると馬鹿みたいに恥ずかしいです。
恥ずかしさはうつるらしく幽くんも顔が赤いです。
これはもう二人とも照れたので引き分けではないでしょうか?
「うん。普通だ」
えっ……、今なんて……?
お弁当の蓋を開けただけで普通呼ばわりされてしまいました。
冷凍食品の野菜、卵焼き、ミニハンバーグ、それとカットされたフルーツ。確かに普通です。普通ですが、こういう時に普通って普通言いますか?
「どうかした? 早く食べようぜ。桜の手作り楽しみにしてたんだから」
「え、あ、うん。そうだね、食べようか」
さっきの発言は幽くんの中で無かったことになったのでしょうか? さっきのをなかったことにする広い心を残念なことに私は持ち合わせていません。
でも幽くんはそんな私に気付くことなく卵焼きを口にしています。
「美味い。桜って料理美味いんだな。これ冷凍じゃなくて手作りだろ?」
「うん。そうだよー」
なぜその冷凍か否かには敏感で、私の気持ちには鈍感なのでしょう。
どんなに褒めてくれても最初に普通と言われてしまったせいで全ての言葉に普通と付いている気がしてしまいます。
普通に美味しい、普通に料理上手。下手ではないが決して上手ではない普通……。
作ってこない方が良かった気さえしています。
「ご馳走様。桜が食べてる間に弁当箱洗ってくるよ」
気が付くと幽くんの弁当箱の中身は空になっていました。
どうやら本当に普通の美味しさだったらしいです。
「いいよ、私が帰ってから洗うから」
「作ってもらったんだからせめて洗うくらいはするよ。逃げない弁当箱なんて簡単に洗えるから」
「待って、普通のお弁当箱は逃げないよ!」
予想外の言葉に幽くんの腕を掴みました。
私には聞き逃すことができない言葉が幽くんの口から飛び出ました。
「そうみたいだな。中学の時に初めて知ったよ」
「待って、幽くんはなんで弁当箱をそこまで洗いたいの?」
急いで教室を飛び出そうとする幽くんは私の腕を振り払う勢いです。
「逃げるのは弁当箱じゃなくて俺だって言いたいのか?」
「急にどうしたの? 別に上手いこと言えてないのになんでそんなドヤ顔なのさ」
「汚れたまま弁当箱がニ三日失踪したら腐るぞ」
「ツッコミどころしかないよ。お弁当箱がニ三日失踪ってどういう状態なの? お弁当箱は普通失踪しないから」
そこまで言ってようやく幽くんは落ち着いたのか座りました。
「それで何がどうしたらお弁当箱が逃げるなんて話になるの? 十六年生きて初めて聞いたよそんな話」
「本当に弁当箱は逃げないんだな。家の弁当箱は良く逃げるんだよ」
何度聞いても意味がわかりません。これはあれでしょうか? 本当は逃げるのが普通で私だけがおかしくなったのでしょうか……。
「家の弁当箱は漏れなく付喪神が憑いているんだ」
カッコいい顔でこの人は何を言っているのでしょうか……。
「遠足に行けば弁当箱が先に付いていたり、給食が無い日は職員室の冷蔵庫に入っていたりしてよく怒られてたな」
だから中学の終わりに弁当は冷蔵庫に入れてはいけません。と注意があったんでしょう。
誰がそんなことしているのかと思ったら幽くんでした。
「付喪神っていうくらいだからプラのお弁当箱じゃないんだよね?」
「ああ、アルミ製の奴。写真もあるぞ。探すときに写真があると便利だし」
差し出されたスマホに映っているのはボロボロのお弁当箱でした。何度も落としたような凹みに所々塗装が剥がれている資料館に展示されている様なボロボロさで、挙句の果てには平仮名でゆうきと書いています。
もはやお弁当箱ではなくペットのような感覚です。
たわしを散歩させている人ももしかしたら霊感があるのかもしれません。
「言いたくないけど、捨てた方がいいよ。衛生面が危ない」
幽くんの言い方だと最低でも一度はカビが生えているはずです。
それを使い続けるのは良くないと思います。
「でも捨てても必ず戻ってくるんだよ」
「それは確実に呪われてるよ。お寺にお払いしてもらおう」
「別に悪さするわけじゃないしいいかなと思ってるよ」
流石霊感一家です。不気味なお弁当箱にも愛着があるらしいです。
そして一段落したところで予鈴が鳴り、話しもそこそこに片づけを始めました。
お弁当箱を包みなおし午後の授業を終え、自宅に戻り、お弁当箱を洗うために包みを開けます。
そこには一つ銀色のお弁当箱が増えていました。それはまごうことなく結城家のお弁当箱です。
私は悲鳴を上げ、幽くんに連絡し取りに来てもらいました。
「ごめんな。家の弁当箱が迷惑かけたみたいで、しっかり言い聞かせるから」
「うん。お願いね」
霊感のある幽くんの家にいるペットは古びた弁当箱でした。
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