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幽くんと肝試し
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幽くんは霊感があるので、肝試しはしたことがないようです。
毎日見ているのでわざわざする必要が無いのでしょう。
「そんなわけで肝試しなんだけど、いまいち盛り上がらないね」
海に行った当日の夜、私達は六人で神社に来ています。
夏といえば夏休み、夏休みと言えば肝試しというわけで来たのはいいんですが……。
なぜか私と幽くんだけが鳥居の前で待機しています。
最初は男女の数が合わないので現さんと美琴ちゃんがお化け役をやってくれると先にいなくなり、湯布院くんとのペアを嫌がった小夜ちゃんも離脱。
男が多い三人なんてやってられるか。と映画では死に一直線のセリフを言い残し湯布院くんも離脱。
結果お化け役四名、脅かされ役二名というよくわからない別れ方をしました。
準備が出来たと連絡を受け、スマホの明かりを頼りに進んで行きます。
「桜一つ聞きたいんだけど、肝試しって何が面白いんだ?」
「その場のテンションで決めたから言いにくいけど、幽くんには面白くないかもね」
幽霊がいるかもという非日常感を楽しむのが肝試しの醍醐味なので、日常的に幽霊を見ている幽くんには面白くないのかもしれません。
「暗い道を歩くってよく考えると危険だよな」
「そうだね、大抵肝試しをする場所って足元悪いし」
石畳だったり砂利道だったりするので危険が付き物です。
「それが、醍醐味か。いつ幽霊が転ばせに来るかのドキドキを楽しむんだな」
「うん。ドキドキを楽しむ行事だよ」
普通は幽霊が出るかもを楽しむんですよ幽くん。
でも大発見だと喜んでいる幽くんに水は差せません。
「そうなると静達は他人の足を引っ張るために隠れているんだな」
「せめて幽霊役って言ってあげて」
他人の足を引っ張る役とか可哀想です。
「ほら、突然そこの茂みから驚かしたりするのも幽霊役の仕事だから」
「あそこには隠れる必要ないんじゃないか?」
「なんでかな? なんで隠れる必要ないのかな!?」
あそこの茂みに誰かいるらしいです。そこには誰もいないことを祈ります。
「たぶん隠れるならあそこじゃないか?」
「なんで? もしかして背中が見えてたりするの?」
「あそこに何もいないし」
肝試しで本職の人が気を使っているようです。
誰かは知りませんがいるとわかっていては驚きようもありません。
「うらめしやー」
茂みの前を通ると湯布院くんが勢いよく飛び出してきました。
準備ができていなかったのか何の衣装も着ていない素の湯布院くんです。
もう少し気合いを入れてもらいたいです。
「なんだよ、二人とも全然驚かないな」
「だって、そんな明るい黄色の幽霊とか怖くないよ」
「そうだぞ。後ろの火の玉くらいは頑張れよ」
私と湯布院くんは同じように後ろを確認してから幽くんを見ました。
もちろん湯布院くんの後ろには何もありません。
「火は消しから来いよ。桜行こうか」
「待てよ幽! 火の玉って何? 何か俺の後ろにいるの?」
テンパりすぎてその場でこけてしまう湯布院くんを置いて私と幽くんは歩き始めました。
大丈夫でしょうか、憑りつかれたりしていないでしょうか。
「幽くんさっきの火の玉って本当なの?」
流石に怖くなり、幽くんの腕にしがみつきます。
「その感じはあれ本物だったのか。どおりで糸とか見えないと思った、よっと」
「今何を避けたの!? なんで避けたの?」
「転びたくないだろ?」
本当に転ばせに来ているらしいです。
どうしましょう。私に来た場合避けようがありません。
「あそこも誰か隠れてるな」
もう二回目ですからネタバレには驚きません。
いい加減リアクションも疲れてきました。
そこで私はふと思いました。驚かす人の場所がわかるなら逆に驚かせることもできるんじゃないでしょうか?
「幽くん幽くん。幽霊役の人達を逆に驚かしてみない?」
「面白そうだな」
後ろから回り込むために茂みに入った瞬間の事でした。
「二人でどこに行くつもりだ! 幽に大人の階段はまだ早い、お姉ちゃん許さないよ!」
そんな叫び声と共に、現さんと思われる物体が反対の茂みから全力で走ってきました。
「きゃああぁぁああ!」
「桜安心しろあれは姉さんだ」
「安心できない形相だよ!」
「誰が山姥だ!」
「言ってないです!」
そのまま山姥もとい現さんの突撃は隠れていた小夜ちゃんが受け止めてくれました。
「茂みに誰か隠れてたから驚かそうと思ったんだよ」
「私がバレてたのか。だからって驚かすのはやめてよ。こっちにも作戦があったんだからさ」
「ごめんね小夜ちゃん。ちょっとしたイタズラ心なんだ。でもすごい怖かったよ」
「俺もかなりビビった。本当に殺されるかと思った」
「ですって。よかったですね現さん」
「嬉しくない!」
拗ねた現さんを小夜ちゃんに任せ、先に進みます。
「最後は美琴ちゃんだけど。美琴ちゃんの場所はわからないよね」
すでに幽霊と話し合い済みだと誰もいない場所ってないわけですし。
「足元に気をつけないといけないな」
まだ足を引っ張る遊びだと思っているようです。
「足元って何のことですか?」
「ひゃん! み、美琴ちゃんビックリしたよ」
今までで一番肝試しっぽかったです。
「肝試しですので驚かせてみました」
「うん。一番びっくりした」
シンプルな驚きでした。
「でもお前どうやって出てきたんだ? 気配もなかったけど」
そう言われれば歩いてきたのは石畳ですが、周囲は砂利と草むらで歩けば音がする様な場所です。
もしかしたら幽霊の力とかそういう何かでしょうか?
「姉さんの騒ぎに便乗して後ろを着けてきただけ」
「そうですか……」
一番の驚きはビックリするほど単純な方法でした。
「肝試しって驚かせる遊びだったのか」
最後の最後でようやく幽くんは肝試しが何かを理解してくれたらしいです。
でももう肝試しはやらないと思います。
毎日見ているのでわざわざする必要が無いのでしょう。
「そんなわけで肝試しなんだけど、いまいち盛り上がらないね」
海に行った当日の夜、私達は六人で神社に来ています。
夏といえば夏休み、夏休みと言えば肝試しというわけで来たのはいいんですが……。
なぜか私と幽くんだけが鳥居の前で待機しています。
最初は男女の数が合わないので現さんと美琴ちゃんがお化け役をやってくれると先にいなくなり、湯布院くんとのペアを嫌がった小夜ちゃんも離脱。
男が多い三人なんてやってられるか。と映画では死に一直線のセリフを言い残し湯布院くんも離脱。
結果お化け役四名、脅かされ役二名というよくわからない別れ方をしました。
準備が出来たと連絡を受け、スマホの明かりを頼りに進んで行きます。
「桜一つ聞きたいんだけど、肝試しって何が面白いんだ?」
「その場のテンションで決めたから言いにくいけど、幽くんには面白くないかもね」
幽霊がいるかもという非日常感を楽しむのが肝試しの醍醐味なので、日常的に幽霊を見ている幽くんには面白くないのかもしれません。
「暗い道を歩くってよく考えると危険だよな」
「そうだね、大抵肝試しをする場所って足元悪いし」
石畳だったり砂利道だったりするので危険が付き物です。
「それが、醍醐味か。いつ幽霊が転ばせに来るかのドキドキを楽しむんだな」
「うん。ドキドキを楽しむ行事だよ」
普通は幽霊が出るかもを楽しむんですよ幽くん。
でも大発見だと喜んでいる幽くんに水は差せません。
「そうなると静達は他人の足を引っ張るために隠れているんだな」
「せめて幽霊役って言ってあげて」
他人の足を引っ張る役とか可哀想です。
「ほら、突然そこの茂みから驚かしたりするのも幽霊役の仕事だから」
「あそこには隠れる必要ないんじゃないか?」
「なんでかな? なんで隠れる必要ないのかな!?」
あそこの茂みに誰かいるらしいです。そこには誰もいないことを祈ります。
「たぶん隠れるならあそこじゃないか?」
「なんで? もしかして背中が見えてたりするの?」
「あそこに何もいないし」
肝試しで本職の人が気を使っているようです。
誰かは知りませんがいるとわかっていては驚きようもありません。
「うらめしやー」
茂みの前を通ると湯布院くんが勢いよく飛び出してきました。
準備ができていなかったのか何の衣装も着ていない素の湯布院くんです。
もう少し気合いを入れてもらいたいです。
「なんだよ、二人とも全然驚かないな」
「だって、そんな明るい黄色の幽霊とか怖くないよ」
「そうだぞ。後ろの火の玉くらいは頑張れよ」
私と湯布院くんは同じように後ろを確認してから幽くんを見ました。
もちろん湯布院くんの後ろには何もありません。
「火は消しから来いよ。桜行こうか」
「待てよ幽! 火の玉って何? 何か俺の後ろにいるの?」
テンパりすぎてその場でこけてしまう湯布院くんを置いて私と幽くんは歩き始めました。
大丈夫でしょうか、憑りつかれたりしていないでしょうか。
「幽くんさっきの火の玉って本当なの?」
流石に怖くなり、幽くんの腕にしがみつきます。
「その感じはあれ本物だったのか。どおりで糸とか見えないと思った、よっと」
「今何を避けたの!? なんで避けたの?」
「転びたくないだろ?」
本当に転ばせに来ているらしいです。
どうしましょう。私に来た場合避けようがありません。
「あそこも誰か隠れてるな」
もう二回目ですからネタバレには驚きません。
いい加減リアクションも疲れてきました。
そこで私はふと思いました。驚かす人の場所がわかるなら逆に驚かせることもできるんじゃないでしょうか?
「幽くん幽くん。幽霊役の人達を逆に驚かしてみない?」
「面白そうだな」
後ろから回り込むために茂みに入った瞬間の事でした。
「二人でどこに行くつもりだ! 幽に大人の階段はまだ早い、お姉ちゃん許さないよ!」
そんな叫び声と共に、現さんと思われる物体が反対の茂みから全力で走ってきました。
「きゃああぁぁああ!」
「桜安心しろあれは姉さんだ」
「安心できない形相だよ!」
「誰が山姥だ!」
「言ってないです!」
そのまま山姥もとい現さんの突撃は隠れていた小夜ちゃんが受け止めてくれました。
「茂みに誰か隠れてたから驚かそうと思ったんだよ」
「私がバレてたのか。だからって驚かすのはやめてよ。こっちにも作戦があったんだからさ」
「ごめんね小夜ちゃん。ちょっとしたイタズラ心なんだ。でもすごい怖かったよ」
「俺もかなりビビった。本当に殺されるかと思った」
「ですって。よかったですね現さん」
「嬉しくない!」
拗ねた現さんを小夜ちゃんに任せ、先に進みます。
「最後は美琴ちゃんだけど。美琴ちゃんの場所はわからないよね」
すでに幽霊と話し合い済みだと誰もいない場所ってないわけですし。
「足元に気をつけないといけないな」
まだ足を引っ張る遊びだと思っているようです。
「足元って何のことですか?」
「ひゃん! み、美琴ちゃんビックリしたよ」
今までで一番肝試しっぽかったです。
「肝試しですので驚かせてみました」
「うん。一番びっくりした」
シンプルな驚きでした。
「でもお前どうやって出てきたんだ? 気配もなかったけど」
そう言われれば歩いてきたのは石畳ですが、周囲は砂利と草むらで歩けば音がする様な場所です。
もしかしたら幽霊の力とかそういう何かでしょうか?
「姉さんの騒ぎに便乗して後ろを着けてきただけ」
「そうですか……」
一番の驚きはビックリするほど単純な方法でした。
「肝試しって驚かせる遊びだったのか」
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