幽くんは噛み合わない

柚木

文字の大きさ
17 / 18

桜と夏祭り

しおりを挟む
 かすかくんは賑やかなのを見ているのが好きらしいです。
 人でも幽霊でも楽しそうにしているのを見ると嬉しいらしいのですが、自分がはしゃぐのはどうも苦手らしいです。

 そんなわけで今日は夏祭りです。
 近くの神社でやるお祭りで、出店も出ます。
 残念ながら花火まではやらないので本当に地元のお祭りですが、幽くんと一緒ということもありとても楽しみです。
 夕方からお母さんに浴衣を着せてもらいこれから出発します。

玲爾れいじ準備できたの?」

 残念ながら出発は幽くんとではなく弟の玲爾と一緒です。

「いや、姉ちゃん待ちだっただろ。なんで俺が遅いみたいに言われないといけないんだ」
「弟だから当然だと私は思います」
「最低の姉だな」

 そんな姉弟らしい会話をしながら神社に向かいます。

「あんたそんな格好だとモテないでしょ。センスない」
「友達と遊ぶのにそこまでセンスはいらないだろ」
「友達と歩いてて同じクラスの好きな子にばったり会ったらどうするの?『えー、柳下くんってファッションセンスなさすぎてマジ引くんですけどー』って言われても知らないよ」

 近所の祭りですからありえない話ではないと思います。
 伝い伝わり私までセンス無の烙印らくいnを押されたくはありません。

「そもそもそんなこと言う女子に好かれたくないし」
「あんたの言う通りだよ」

 正論でした……。
 明らかに悪目立ちしているグループの女子の真似になっていました。
 私もそういう人たちと一緒にいたくはありません。

「姉ちゃんも気合入れてるけど、気合い入れ過ぎて彼氏に引かれるなよ? そんなかんざしどこに会ったんだよ」
「おばあちゃん家に行った時にもらった。小野小町って呼んでもいいんだよ」
「呼ばれたいの? 明らかに名前負けだけど」
「殴られたいならそう言えばいいのにいくらでも殴ってあげるから」

 今なら殴っても文句は言われないと思います。

「殴られたら姉ちゃんの彼氏に言いつけに行く」
「それは卑怯ひきょうじゃない!?」

 それは姉弟でも反則技だと思います。

「なら私もあんたの好きな人を探し当ててあることないこと言いふらすしかないか」
「いや、さっきから俺に好きな人がいる感じで話が進んでるけどいないからな」
「それは嘘だよ。わかるよ、お姉ちゃんは全てお見通しだよ。中学生男子が恋愛しないなんてありえないってことはお姉ちゃん知ってるよ」

 欲の塊である中学生男子が人間の三大欲求に勝てるわけはありません。
 勝てるならそれは中学生とは呼べません。仙人のたぐいです。

「それって姉かどうかは関係ないじゃん。一般論って言うんじゃない?」
「恋愛大好きな私から見たらあんたは恋をしているんだよ。確定事項だから。ほらさっさと吐いちゃいなよ、それをネタにこれから散々いじり倒してあげるから」
「それを聞いて、俺の好きな人はねあの人なんだ。とか言ってたら俺頭おかしいだろ」

 そう言われてしまうと返す言葉はありません。
 確実にM気質があるので逆に喜ばれてしまいそうです。

「それなら私が誠心誠意恋の応援をしてあげるから洗いざらい白状してみなよ」

 とびっきりの笑顔で親指を立てます。
 もうどこからどう見ても頼りになるお姉さんです。

「さっきの発言をなかったことにして話を進めてどうする。第一俺に好きな――」
「ごめん、幽くん見つけたからもう行くから。犯罪には手を染めないように以上!」

 玲爾が何かを言っていますが、幽くんを見つけてしまった今、そんなのは些細な問題です。
 ダサい家族よりもカッコいい彼氏です。

「幽くん、ごめん待たせちゃった?」
「いや、そこまで待ってないけど、あれって桜の弟だよな。いいのか?」
「あいつも友達と遊ぶんだって。大体同じ時間だから一緒だっただけ」
「美琴もさっきまで一緒だったんだけど、友達との待ち合わせがあるからってどっか行ったんだよな」

 その時、私は感じ取りました。
 この感じは恋の空気です。ラヴですLOVE。

「美琴ちゃんどっちに行ったかわかる?」
「あっちの方だけどどうかしたのか?」

 幽くんが指さした方角はさっき玲爾が向かった方向です。
 これはもしかするともしかするかもしれません。

「ちょっと楽しいことになりそうなんだよね」

 もうニヤニヤが止まりません。
 あいつが友達としか言わないのがどこか引っかかっていましたがそう言うことなのでしょう。
 玲爾も美琴ちゃんも確か同じ学園だったはずです。

「桜凄い悪い顔してるよ」
「弟の恋愛模様が見れるかもしれないからね」
「やめときなよ、桜も自分が頑張ってるのを他人に見られたら嫌だろ」

 幽くんに止められては仕方ありません。
 今回はやめておきましょうか。

「それよりも早く行こうぜ」

 あまりにも自然に差し出された手を掴み、私達は祭りに向かいました。
 そして祭りの人ごみを歩く途中、中学生の一団を見つけます。
 その集団の中には玲爾も居て、照れくさそうに美琴ちゃんの隣を歩いていました。
 そして私は心の中でほくそ笑みます。

 弟を弄るネタができたと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

断罪された挙句に執着系騎士様と支配系教皇様に目をつけられて人生諸々詰んでる悪役令嬢とは私の事です。

甘寧
恋愛
断罪の最中に前世の記憶が蘇ったベルベット。 ここは乙女ゲームの世界で自分がまさに悪役令嬢の立場で、ヒロインは王子ルートを攻略し、無事に断罪まで来た所だと分かった。ベルベットは大人しく断罪を受け入れ国外追放に。 ──……だが、追放先で攻略対象者である教皇のロジェを拾い、更にはもう一人の対象者である騎士団長のジェフリーまでがことある事にベルベットの元を訪れてくるようになる。 ゲームからは完全に外れたはずなのに、悪役令嬢と言うフラグが今だに存在している気がして仕方がないベルベットは、平穏な第二の人生の為に何とかロジェとジェフリーと関わりを持たないように逃げまくるベルベット。 しかし、その行動が裏目に出てロジェとジェフリーの執着が増していく。 そんな折、何者かがヒロインである聖女を使いベルベットの命を狙っていることが分かる。そして、このゲームには隠された裏設定がある事も分かり…… 独占欲の強い二人に振り回されるベルベットの結末はいかに? ※完全に作者の趣味です。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

処理中です...