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一章 門番との出会い
8話 三毒の姉妹
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流石に一日寝ていたからか、昨日よりは体の調子は良かった。
完全に治ったとは言えないけど、これなら普通に生活ができそうだ。
家を出ると、焔さんと鬼石さんが迎えに来てくれていた。
「体は平気か? 今日はおぶって行ってやってもいいぞ」
「あはは、そんな大げさなことは必要ないですって」
「笑ってるけど、お姉ちゃんは本気であんたを背負っていくつもりだったわよ」
ぼそりと鬼石さんが漏らした言葉で、なんで鞄から紐がはみ出しているのかわかった。
赤ちゃんを背負うための紐だった。
しかも、たぶんだけど、若干ぼろいし焔さんが使ってたやつだと思う。
「いや、マジで大丈夫です。自分の足で走れるくらいには回復したので、そんな恥ずかしいことされなくても平気です」
ただでさえ、焔さんと付き合っているってだけで、不良にも絡まれたのに、そこからさらにおんぶされて登校したなんて噂まで流れたら、どうなるかわからない。
「恥ずかしいって、道場で抱きかかえた時はそんな様子はなかっただろ?」
「お姉ちゃんに抱きかかえられた?」
どっちみち僕は殺されるのかもしれない……。
†
僕達が通う喜門第一中学は、週の初めに全校集会が行われる。
別段変わった所はなく、いつも通り、今週の行事予定や、学生らしい行動を心掛けてくださいって話をされるだけのはずだった。
いつもは誰も出てこない、生徒からの連絡事項の時間に、手が真直ぐ挙げられた。
「どうも、一年一組の百目木現です。実は、今私漫画を描いてるんです。神が落とした鍵を隠している門番を倒して、その鍵を取り返して世界を救うって話なんですけどね」
えっ? 門番に鍵?
その言葉はあまりにも聞き覚えがありすぎる。
この百目木って女子はカルマの仲間なのか? いやそんな訳ないよな……。
その女子から目を放せないでいると、彼女と視線がぶつかった。
笑顔のはずなのに、その笑顔が仮面の様で恐ろしい。
「百目木、そういう話は友達としなさい」
「やっぱりそうですか? じゃあ、これで終わります」
今のってやっぱりそう言うことだよな。
鍵や門番ってワードで反応する人を探してたんだ。
そして僕はそれに反応してしまった。
全校集会が終わってすぐに、焔さんに呼び止められた。
「ごめんなさい、反応しちゃいました」
「わかってる。でもそれは気にしなくていい、さっきのはあたしも予想外だったからな。問題はこれからだ」
「やっぱり狙われるってことですか?」
「あんなに堂々とやってのけてきたから、今この瞬間に襲われてもおかしくない」
「でも、相手は人間でした。気のせいってことはないですか?」
カルマにしてもコベットにしても、人間の姿じゃなかった。
焔さんの反応からして、それはないとわかっていてもわずかな希望にすがりたい。
「あれはカルマよりも上、三毒か十纏だろうな。そいつらは人として生まれるし、今回みたいなこともできる」
カルマの更に上がまだいる、その言葉が僕の気を重くする。
「気を落とすな。何が来てもあたしの方が強い。三毒でも十纏でも関係ない」
「そうですよね」
それが気休めだと、僕にはわかる。
僕の肩に置かれた右手がわずかにだが、震えている。
「お姉ちゃん、やっと見つけた。さっきのことだけど、あの百目木ってやっぱり三毒か十纏だよね」
「その話をしてたんだ。それで、氷美湖に頼みたいことがある。秋良を守ってやってくれないか?」
「この状況で嫌とは言えないね。お姉ちゃんはどうするの?」
「あたしは授業をサボって、遠くから百目木ってのは見張るよ」
「そのことだけど、百目木って双子だよ。さっき壇上にいたのが妹の現、見てた通りに能天気が取り柄の馬鹿だね。それと同じクラスにいる姉は真逆で暗い虚ってのがいる」
「すぐに調べてくれたんですか?」
「こんなに早くは無理よ。ただ、双子で同じクラスって珍しいから個人的に調べてただけよ」
どうやったら焔さんと同じクラスになるか、考えてたんだろうな。
「同じクラスなのは朗報だな。見張る場所も一つでいい」
「お姉ちゃん一人で平気なの? 相手は三毒かもしれないよ」
「氷美湖が見張る方が危険だ。契約者がいないと、まともな戦いにはならないだろ」
「それは、そうだけど……」
暗に足手纏いだと言われ、鬼石さんがそれ以上食い下がることはなかった。
「僕はどうしたらいいんですか?」
「普通に生活してればいい。だけど、今日はできるだけ氷美湖と同じ空間にいろ。あたしの時みたいに隣にいなくてもいい、同じ教室内にはいてくれ。氷美湖もなるべくそうなるように行動してくれ」
「わかりました」
なんか、嫌な感じだ。
空気が悪いとかじゃなく、そうしないといけないって感じで、後手に回ってるというか、そんな逃げ道を潰されている感じがした。
†
こちらが警戒していることに気がついたのか、授業中や休み時間に相手が動くことはなく、放課後になった。
「なんの行動も起こさなかったな」
早退したことになっている焔さんと落ち合うため、部活に使われない視聴覚室に移動した。
「本当にただの偶然だってことですかね?」
「そんな偶然はあるはずないでしょ。現にもそれくらいわかるよ」
その声と同時に、世界から音が消えた。
領分が僕達を飲み込んだ証拠だ。
「ねえ、誰が門番なのかな?」
友達を尋ねに来たように笑みを浮かべながら、百目木現は僕達に近づいてくる。
「あたしに勝てるつもりなのか?」
「うん。現は強いからね。顕現装束 鉄槌」
腰に巻かれていた制服が一瞬で大きなハンマーに変わり、躊躇いなく地面に振り下ろす。
地鳴りと変わらない衝撃が視聴覚室を激しく揺らし、ひしゃげるどころか紙のように潰された机があった。
これがカルマより上の存在。
「二人はそこで待ってて、こいつを殺したら順番に殺してあげるから」
笑う百目木現には、なぜか殺意を感じなかった。
殺意も無く人を殺せる、その事実が恐怖心を煽る。
「それは無理だな、お前はあたしが倒す」
「カッコいいね、その衣装。それに刀もカッコいいな。鉄槌も好きだけどたまには別ので戦おうかな。顕現装束 大太刀」
また一瞬でハンマーが百目木現よりも大きな太刀に変わった。
「デカければ強いわけじゃないぞ」
「門番は馬鹿だね、デカければ強いんだよ」
「危ない!」
横に振るわれた大太刀の切れ味は、僕の予想を超えていた。
物を切る音が聞こえない。
風を切る音だけが聞こえ、黒板も窓も壁も切り後だけが残る。
鬼石さんが咄嗟に伏せさせてくれなけば真っ二つにされていた。
「ありがとうございます」
「逃げるよ。私達がいると邪魔になる」
「逃げちゃダメだって言ってるでしょ」
「それはお前が決めることじゃないな」
「強者がルールなんだから現がルールでしょ」
背後から聞こえる戦闘音は、しばらく続いた。
聞こえなくなる距離まで逃げ、ようやく一段落つくことができた。
「今のうちに呼吸を整えておきなさい、お姉ちゃんが勝つまで私達は逃げないといけないのよ」
「捕まって鍵を取られるわけにはいかないですから」
筋肉痛が酷いとか、肺が苦しいとか言ってる場合じゃないな。
ここで捕まったら鍵は向こうの物になってしまう。
でも、鬼石さんもいるし、取られる心配はないはずだ。
「ごめん、やっぱりあんたが一人で逃げて」
「それって、どういう――、っ!?」
領分の中にいるはずなのに、廊下から足音が聞こえた。
間違いなく、百目木現の仲間だ。
「現はちゃんと私の言う通りにしたんだ。やっぱり現は凄いね、羨ましいくらいだよ」
「百目木、虚……」
全身を黒い服で固めた小柄な少女。
これがさっきの百目木現の姉妹? 顔は似ているけど、雰囲気は似ても似つかないな。
「なんで私の名前知ってるの? 生徒会長だからか、美人でスタイルが良くて頭も運動神経もいい、その上生徒会長なんでしょ? 不公平だよね、嫉妬しちゃうな」
「これでも努力家なのよ」
「努力も才能だよね。何もない私とは全然違うね」
そう言って幼い顔は笑う。
百目木現の無邪気さとは別種の恐怖に、僕の体は咄嗟に動けない。
「そんなに独り占めするのは許せない、だから殺すね。顕現装束 黒虎」
制服は黒い虎に変わる。
背が天井に着きそうな大きな虎は、ぎゃりぎゃりと大きな爪で削りながら振り下ろす。
しかしその爪は鬼石さんに触れた直後、軌道を変え、床を削り取った。
「鬼石流柔術 落葉」
「やっぱりこの程度じゃ殺せないよね。顕現装束 土蜘蛛」
黒い虎は顔だけを残し体を蜘蛛に変えた。
百目木現は武器だったけど、こっちは生き物か……。
二対二ではあるけど、僕が役に立たないせいで一対二だ……。
「今度は防げる?」
土蜘蛛は六本の足を使い、連撃を仕掛けてきた。
その攻撃を鬼石さんは何とか凌げているらしい。
「早くどっかに逃げて、あんたを守りながらじゃやりにくいから」
「いいの? 私は自由に動けるんだよ?」
ひゅんと、僕の顔を何かが掠める。
足元にはパチンコ玉がコロコロと転がる。
「逃げるなら次は当てるよ。どうする?」
完全に足手纏いだ。
逃げる事も出来ない状況に、頭の中には「死」という一文字が浮かんだ。
完全に治ったとは言えないけど、これなら普通に生活ができそうだ。
家を出ると、焔さんと鬼石さんが迎えに来てくれていた。
「体は平気か? 今日はおぶって行ってやってもいいぞ」
「あはは、そんな大げさなことは必要ないですって」
「笑ってるけど、お姉ちゃんは本気であんたを背負っていくつもりだったわよ」
ぼそりと鬼石さんが漏らした言葉で、なんで鞄から紐がはみ出しているのかわかった。
赤ちゃんを背負うための紐だった。
しかも、たぶんだけど、若干ぼろいし焔さんが使ってたやつだと思う。
「いや、マジで大丈夫です。自分の足で走れるくらいには回復したので、そんな恥ずかしいことされなくても平気です」
ただでさえ、焔さんと付き合っているってだけで、不良にも絡まれたのに、そこからさらにおんぶされて登校したなんて噂まで流れたら、どうなるかわからない。
「恥ずかしいって、道場で抱きかかえた時はそんな様子はなかっただろ?」
「お姉ちゃんに抱きかかえられた?」
どっちみち僕は殺されるのかもしれない……。
†
僕達が通う喜門第一中学は、週の初めに全校集会が行われる。
別段変わった所はなく、いつも通り、今週の行事予定や、学生らしい行動を心掛けてくださいって話をされるだけのはずだった。
いつもは誰も出てこない、生徒からの連絡事項の時間に、手が真直ぐ挙げられた。
「どうも、一年一組の百目木現です。実は、今私漫画を描いてるんです。神が落とした鍵を隠している門番を倒して、その鍵を取り返して世界を救うって話なんですけどね」
えっ? 門番に鍵?
その言葉はあまりにも聞き覚えがありすぎる。
この百目木って女子はカルマの仲間なのか? いやそんな訳ないよな……。
その女子から目を放せないでいると、彼女と視線がぶつかった。
笑顔のはずなのに、その笑顔が仮面の様で恐ろしい。
「百目木、そういう話は友達としなさい」
「やっぱりそうですか? じゃあ、これで終わります」
今のってやっぱりそう言うことだよな。
鍵や門番ってワードで反応する人を探してたんだ。
そして僕はそれに反応してしまった。
全校集会が終わってすぐに、焔さんに呼び止められた。
「ごめんなさい、反応しちゃいました」
「わかってる。でもそれは気にしなくていい、さっきのはあたしも予想外だったからな。問題はこれからだ」
「やっぱり狙われるってことですか?」
「あんなに堂々とやってのけてきたから、今この瞬間に襲われてもおかしくない」
「でも、相手は人間でした。気のせいってことはないですか?」
カルマにしてもコベットにしても、人間の姿じゃなかった。
焔さんの反応からして、それはないとわかっていてもわずかな希望にすがりたい。
「あれはカルマよりも上、三毒か十纏だろうな。そいつらは人として生まれるし、今回みたいなこともできる」
カルマの更に上がまだいる、その言葉が僕の気を重くする。
「気を落とすな。何が来てもあたしの方が強い。三毒でも十纏でも関係ない」
「そうですよね」
それが気休めだと、僕にはわかる。
僕の肩に置かれた右手がわずかにだが、震えている。
「お姉ちゃん、やっと見つけた。さっきのことだけど、あの百目木ってやっぱり三毒か十纏だよね」
「その話をしてたんだ。それで、氷美湖に頼みたいことがある。秋良を守ってやってくれないか?」
「この状況で嫌とは言えないね。お姉ちゃんはどうするの?」
「あたしは授業をサボって、遠くから百目木ってのは見張るよ」
「そのことだけど、百目木って双子だよ。さっき壇上にいたのが妹の現、見てた通りに能天気が取り柄の馬鹿だね。それと同じクラスにいる姉は真逆で暗い虚ってのがいる」
「すぐに調べてくれたんですか?」
「こんなに早くは無理よ。ただ、双子で同じクラスって珍しいから個人的に調べてただけよ」
どうやったら焔さんと同じクラスになるか、考えてたんだろうな。
「同じクラスなのは朗報だな。見張る場所も一つでいい」
「お姉ちゃん一人で平気なの? 相手は三毒かもしれないよ」
「氷美湖が見張る方が危険だ。契約者がいないと、まともな戦いにはならないだろ」
「それは、そうだけど……」
暗に足手纏いだと言われ、鬼石さんがそれ以上食い下がることはなかった。
「僕はどうしたらいいんですか?」
「普通に生活してればいい。だけど、今日はできるだけ氷美湖と同じ空間にいろ。あたしの時みたいに隣にいなくてもいい、同じ教室内にはいてくれ。氷美湖もなるべくそうなるように行動してくれ」
「わかりました」
なんか、嫌な感じだ。
空気が悪いとかじゃなく、そうしないといけないって感じで、後手に回ってるというか、そんな逃げ道を潰されている感じがした。
†
こちらが警戒していることに気がついたのか、授業中や休み時間に相手が動くことはなく、放課後になった。
「なんの行動も起こさなかったな」
早退したことになっている焔さんと落ち合うため、部活に使われない視聴覚室に移動した。
「本当にただの偶然だってことですかね?」
「そんな偶然はあるはずないでしょ。現にもそれくらいわかるよ」
その声と同時に、世界から音が消えた。
領分が僕達を飲み込んだ証拠だ。
「ねえ、誰が門番なのかな?」
友達を尋ねに来たように笑みを浮かべながら、百目木現は僕達に近づいてくる。
「あたしに勝てるつもりなのか?」
「うん。現は強いからね。顕現装束 鉄槌」
腰に巻かれていた制服が一瞬で大きなハンマーに変わり、躊躇いなく地面に振り下ろす。
地鳴りと変わらない衝撃が視聴覚室を激しく揺らし、ひしゃげるどころか紙のように潰された机があった。
これがカルマより上の存在。
「二人はそこで待ってて、こいつを殺したら順番に殺してあげるから」
笑う百目木現には、なぜか殺意を感じなかった。
殺意も無く人を殺せる、その事実が恐怖心を煽る。
「それは無理だな、お前はあたしが倒す」
「カッコいいね、その衣装。それに刀もカッコいいな。鉄槌も好きだけどたまには別ので戦おうかな。顕現装束 大太刀」
また一瞬でハンマーが百目木現よりも大きな太刀に変わった。
「デカければ強いわけじゃないぞ」
「門番は馬鹿だね、デカければ強いんだよ」
「危ない!」
横に振るわれた大太刀の切れ味は、僕の予想を超えていた。
物を切る音が聞こえない。
風を切る音だけが聞こえ、黒板も窓も壁も切り後だけが残る。
鬼石さんが咄嗟に伏せさせてくれなけば真っ二つにされていた。
「ありがとうございます」
「逃げるよ。私達がいると邪魔になる」
「逃げちゃダメだって言ってるでしょ」
「それはお前が決めることじゃないな」
「強者がルールなんだから現がルールでしょ」
背後から聞こえる戦闘音は、しばらく続いた。
聞こえなくなる距離まで逃げ、ようやく一段落つくことができた。
「今のうちに呼吸を整えておきなさい、お姉ちゃんが勝つまで私達は逃げないといけないのよ」
「捕まって鍵を取られるわけにはいかないですから」
筋肉痛が酷いとか、肺が苦しいとか言ってる場合じゃないな。
ここで捕まったら鍵は向こうの物になってしまう。
でも、鬼石さんもいるし、取られる心配はないはずだ。
「ごめん、やっぱりあんたが一人で逃げて」
「それって、どういう――、っ!?」
領分の中にいるはずなのに、廊下から足音が聞こえた。
間違いなく、百目木現の仲間だ。
「現はちゃんと私の言う通りにしたんだ。やっぱり現は凄いね、羨ましいくらいだよ」
「百目木、虚……」
全身を黒い服で固めた小柄な少女。
これがさっきの百目木現の姉妹? 顔は似ているけど、雰囲気は似ても似つかないな。
「なんで私の名前知ってるの? 生徒会長だからか、美人でスタイルが良くて頭も運動神経もいい、その上生徒会長なんでしょ? 不公平だよね、嫉妬しちゃうな」
「これでも努力家なのよ」
「努力も才能だよね。何もない私とは全然違うね」
そう言って幼い顔は笑う。
百目木現の無邪気さとは別種の恐怖に、僕の体は咄嗟に動けない。
「そんなに独り占めするのは許せない、だから殺すね。顕現装束 黒虎」
制服は黒い虎に変わる。
背が天井に着きそうな大きな虎は、ぎゃりぎゃりと大きな爪で削りながら振り下ろす。
しかしその爪は鬼石さんに触れた直後、軌道を変え、床を削り取った。
「鬼石流柔術 落葉」
「やっぱりこの程度じゃ殺せないよね。顕現装束 土蜘蛛」
黒い虎は顔だけを残し体を蜘蛛に変えた。
百目木現は武器だったけど、こっちは生き物か……。
二対二ではあるけど、僕が役に立たないせいで一対二だ……。
「今度は防げる?」
土蜘蛛は六本の足を使い、連撃を仕掛けてきた。
その攻撃を鬼石さんは何とか凌げているらしい。
「早くどっかに逃げて、あんたを守りながらじゃやりにくいから」
「いいの? 私は自由に動けるんだよ?」
ひゅんと、僕の顔を何かが掠める。
足元にはパチンコ玉がコロコロと転がる。
「逃げるなら次は当てるよ。どうする?」
完全に足手纏いだ。
逃げる事も出来ない状況に、頭の中には「死」という一文字が浮かんだ。
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