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一章 門番との出会い
9話 二度目の契約
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二人の足音は遠くに行ったな。
これで気兼ねなく火力が出せる。
「どうしたの? 突然離れるって、もしかして諦めることにしたの?」
「そんなはずないだろ」
愛刀の槐を納刀し腰を下ろす。
物心ついてから何度も繰り返した動きに、心が落ち着く。
「武器をしまうって、やっぱり戦意喪失? ごめんなさいでもするの? してもいいよ、それでも殺すけど」
「鬼石流炎技 炎王」
体の中心にある小さな種火を一気に燃焼させる。
内から広がる炎は、体を覆い、周囲の備品を溶かし始める。
「炎を纏ったくらいじゃ勝てないよ?」
目の前まで迫る大太刀に抜刀し、大太刀を焼き切る。
「炎と刀で切ったんだ。久しぶりに顕現装束切られちゃったな」
「素直に負けを認めるなら、痛くない様にするぞ?」
「それはこっちのセリフだけどね。顕現装束 天叢雲」
百目木の持つ大太刀が剣に変わった。
日本刀とは違うな、刀身も太いし西洋の剣みたいだ。
武器が切り替わると、ぽつりぽつりと雨が降っては炎で蒸発し、すぐに視聴覚室の中に霧が発生し始めた。
「雨を呼ぶ剣、もちろん雨が降る場所に制限はないよ」
「雨で弱体化させるのが狙いってことか。そのくらいで勝てると思うなよ」
「そう言いながら刀はしまうんだね」
「こういうスタイルだからな」
かなり拙いな、雨に濡れて折角の炎も全力にはならない。
槐は鞘に避難させたけど、それも気休めにしかならないか。
抜刀以外で槐を使えないなら、素手でやらないといけないか。
「弱くなっても強くなっても関係ないけどね」
ふっと百目木は濃くなる霧に消えて行く。
この霧はあたしの弱体化だけが目的じゃないってことか。
濃霧の中からわずかな音が聞こえ、霧がわずかに動いた。
そこに向け一撃を叩き込む。
あたしが叩いたのは投げつけられた教壇だった。
しまったと思った時には背中に痛みが走る。
「現を馬鹿にし過ぎだよね。そんなドジするわけないじゃん」
振り払う時にはまた霧に姿を隠していた。
それから数分、あたしは百目木の攻撃に耐え続けた。
「もう手詰まりなら降参しちゃえばいいのに」
「諦めるつもりはない。大体お前の剣筋は見えてきたから」
「それならやってみなよ!」
さっきまでの動きで、こいつの動き方は読める。
馬鹿の一つ覚えみたいに、あたしの背後から切りかかるだけだ。
そう動くとわかれば対処はできる。
また、一度音が聞こえた。
そこに向けて攻撃を仕掛けるフリをし、一気に体を反転させる。
遠心力を全て使った攻撃だったが、百目木はそれを受け止め、そのまま投げ飛ばしてくる。
「さっきので決めるつもりだったんでしょ? 残念だったね」
「いや、これでいいんだよ」
抜け出したかったのは狭い空間だ。
「ここならお前がはっきり見えるだろ」
降りしきる雨の中、あたしは構えた。
†
この状況は僕達には圧倒的に不利だ。
鬼石さんは僕を庇っている土蜘蛛を抑えるので精いっぱい、僕が逃げようにも百目木虚がそれを阻止する。
「門番も大したことないんだ。私の顕現装束だけで押されるなんて、これなら向こうも早く決着つくかもね」
「お姉ちゃんはあんなのに負けないから」
「それならこっちが早く決着つけようかな」
百目木虚は、おもむろに壁を毟り取り、その瓦礫を僕に目がけて親指で弾いた。
スローのようにゆっくりと瓦礫が僕に迫ってくる。
縦に緩く回転しながら、それを避けようとしても体が思うように動かない。
これが死に際の走馬灯なんだと、初めて知った。
死を悟った僕の前に、鬼石さんが割り込み、三度の衝突音が聞こえる。
「人間を狙えば、あんた達は守らないといけないよね。そのせいで、自分が死んだとしても」
瓦礫に撃たれ、土蜘蛛に打たれ、壁にたたきつけられた鬼石さんを、百目木虚は笑って見下す。
「鬼石さん!」
「動かないで? 私がそれを殺すまで大人しくしてれば、痛くない様に殺してあげるからね」
怖い。
体が震えて、動こうとしない。
「良い子だね。私あんたは好きだよ。弱くて情けない、自分の身が一番なところが好き。鍵をくれたらあんたは助けてあげるね」
この鍵を渡せば命は助かる。
しょうがないじゃないか、僕みたいのが一人いてもこんな化け物に勝てるはずがない。
でも、それでも、僕は逃げたくない。
「これは絶対に渡さないし、鬼石さんを殺させもしない!」
「そう、やっぱりあんたも嫌いだ。死ね」
打ち出される瓦礫は避けられる。
最初から来るとわかってれば、避けれなくはないはずだった。
「あんたの考えくらいわかるよ」
僕程度の浅知恵はあっさりとバレ、瓦礫に肩を打ち抜かれる。
燃えるような痛みに襲われた直後、目の前に土蜘蛛の鉄柱の様な足が迫る。
「神流、あんた声が大きいわね。おかげで目が覚めたわ」
鬼石さんのおかげで、土蜘蛛の足は、僕には届かず地面にたたきつけられた。
「その傷でまだ諦めないの?」
「神流が諦めてないのに、私が諦めるわけにはいかないでしょ」
「そう、結果は変わらないのにね」
「神流、力を貸しなさい」
そういわれた直後、冷たく柔らかい感触が唇に触れた。
「あんたを認めてあげる。その鍵を守る覚悟があるなら、私はあんたを守ってあげるわ」
焔さんとは違う青い袴姿、髪が新雪の様な白く淡い色に変わり、手には一本薙刀が握られている。
契約が済み、僕達の周囲に氷の壁が生まれた。
「こんな壁くらいで、私から身を守れると思ってるの!?」
「思ってるわよ。鬼石流薙刀術 濁流」
氷の壁を越えてきた土蜘蛛は、鬼石さんの薙刀の前に一蹴された。
「今度はこっちが聞く番ね。諦めるなら今の内よ」
これで気兼ねなく火力が出せる。
「どうしたの? 突然離れるって、もしかして諦めることにしたの?」
「そんなはずないだろ」
愛刀の槐を納刀し腰を下ろす。
物心ついてから何度も繰り返した動きに、心が落ち着く。
「武器をしまうって、やっぱり戦意喪失? ごめんなさいでもするの? してもいいよ、それでも殺すけど」
「鬼石流炎技 炎王」
体の中心にある小さな種火を一気に燃焼させる。
内から広がる炎は、体を覆い、周囲の備品を溶かし始める。
「炎を纏ったくらいじゃ勝てないよ?」
目の前まで迫る大太刀に抜刀し、大太刀を焼き切る。
「炎と刀で切ったんだ。久しぶりに顕現装束切られちゃったな」
「素直に負けを認めるなら、痛くない様にするぞ?」
「それはこっちのセリフだけどね。顕現装束 天叢雲」
百目木の持つ大太刀が剣に変わった。
日本刀とは違うな、刀身も太いし西洋の剣みたいだ。
武器が切り替わると、ぽつりぽつりと雨が降っては炎で蒸発し、すぐに視聴覚室の中に霧が発生し始めた。
「雨を呼ぶ剣、もちろん雨が降る場所に制限はないよ」
「雨で弱体化させるのが狙いってことか。そのくらいで勝てると思うなよ」
「そう言いながら刀はしまうんだね」
「こういうスタイルだからな」
かなり拙いな、雨に濡れて折角の炎も全力にはならない。
槐は鞘に避難させたけど、それも気休めにしかならないか。
抜刀以外で槐を使えないなら、素手でやらないといけないか。
「弱くなっても強くなっても関係ないけどね」
ふっと百目木は濃くなる霧に消えて行く。
この霧はあたしの弱体化だけが目的じゃないってことか。
濃霧の中からわずかな音が聞こえ、霧がわずかに動いた。
そこに向け一撃を叩き込む。
あたしが叩いたのは投げつけられた教壇だった。
しまったと思った時には背中に痛みが走る。
「現を馬鹿にし過ぎだよね。そんなドジするわけないじゃん」
振り払う時にはまた霧に姿を隠していた。
それから数分、あたしは百目木の攻撃に耐え続けた。
「もう手詰まりなら降参しちゃえばいいのに」
「諦めるつもりはない。大体お前の剣筋は見えてきたから」
「それならやってみなよ!」
さっきまでの動きで、こいつの動き方は読める。
馬鹿の一つ覚えみたいに、あたしの背後から切りかかるだけだ。
そう動くとわかれば対処はできる。
また、一度音が聞こえた。
そこに向けて攻撃を仕掛けるフリをし、一気に体を反転させる。
遠心力を全て使った攻撃だったが、百目木はそれを受け止め、そのまま投げ飛ばしてくる。
「さっきので決めるつもりだったんでしょ? 残念だったね」
「いや、これでいいんだよ」
抜け出したかったのは狭い空間だ。
「ここならお前がはっきり見えるだろ」
降りしきる雨の中、あたしは構えた。
†
この状況は僕達には圧倒的に不利だ。
鬼石さんは僕を庇っている土蜘蛛を抑えるので精いっぱい、僕が逃げようにも百目木虚がそれを阻止する。
「門番も大したことないんだ。私の顕現装束だけで押されるなんて、これなら向こうも早く決着つくかもね」
「お姉ちゃんはあんなのに負けないから」
「それならこっちが早く決着つけようかな」
百目木虚は、おもむろに壁を毟り取り、その瓦礫を僕に目がけて親指で弾いた。
スローのようにゆっくりと瓦礫が僕に迫ってくる。
縦に緩く回転しながら、それを避けようとしても体が思うように動かない。
これが死に際の走馬灯なんだと、初めて知った。
死を悟った僕の前に、鬼石さんが割り込み、三度の衝突音が聞こえる。
「人間を狙えば、あんた達は守らないといけないよね。そのせいで、自分が死んだとしても」
瓦礫に撃たれ、土蜘蛛に打たれ、壁にたたきつけられた鬼石さんを、百目木虚は笑って見下す。
「鬼石さん!」
「動かないで? 私がそれを殺すまで大人しくしてれば、痛くない様に殺してあげるからね」
怖い。
体が震えて、動こうとしない。
「良い子だね。私あんたは好きだよ。弱くて情けない、自分の身が一番なところが好き。鍵をくれたらあんたは助けてあげるね」
この鍵を渡せば命は助かる。
しょうがないじゃないか、僕みたいのが一人いてもこんな化け物に勝てるはずがない。
でも、それでも、僕は逃げたくない。
「これは絶対に渡さないし、鬼石さんを殺させもしない!」
「そう、やっぱりあんたも嫌いだ。死ね」
打ち出される瓦礫は避けられる。
最初から来るとわかってれば、避けれなくはないはずだった。
「あんたの考えくらいわかるよ」
僕程度の浅知恵はあっさりとバレ、瓦礫に肩を打ち抜かれる。
燃えるような痛みに襲われた直後、目の前に土蜘蛛の鉄柱の様な足が迫る。
「神流、あんた声が大きいわね。おかげで目が覚めたわ」
鬼石さんのおかげで、土蜘蛛の足は、僕には届かず地面にたたきつけられた。
「その傷でまだ諦めないの?」
「神流が諦めてないのに、私が諦めるわけにはいかないでしょ」
「そう、結果は変わらないのにね」
「神流、力を貸しなさい」
そういわれた直後、冷たく柔らかい感触が唇に触れた。
「あんたを認めてあげる。その鍵を守る覚悟があるなら、私はあんたを守ってあげるわ」
焔さんとは違う青い袴姿、髪が新雪の様な白く淡い色に変わり、手には一本薙刀が握られている。
契約が済み、僕達の周囲に氷の壁が生まれた。
「こんな壁くらいで、私から身を守れると思ってるの!?」
「思ってるわよ。鬼石流薙刀術 濁流」
氷の壁を越えてきた土蜘蛛は、鬼石さんの薙刀の前に一蹴された。
「今度はこっちが聞く番ね。諦めるなら今の内よ」
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