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第4話 違和感
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大城に挨拶して教室を出ようとした瞬間、扉の影から人が飛び出してきて俺にぶつかる。
だが体格差にのあまり、ぶつかった相手の方が弾き飛ばされて転んだ。
「うわっ」
「(コイツは…)」
俺より頭一つ分小さい身長に凡庸だが悪くはない見た目、間違いない──
「(コイツが主人公か。)わりぃな、立てるか?」
「…だ、大丈夫。」
進藤は差し出された俺の手を取ることはなく、警戒心の滲んだ視線を向けてきた。
「…そうか、じゃあな。」
「……」
進藤のあからさまに敵意ある態度に俺は違和感を覚えた。
「(清廉潔白、とまではいかないまでも善良でちょっとスケベな普通の高校生ってイメージだったが…まるで仇でも見てる目だったな。)」
「雪音!一緒に帰ろうぜ!」
俺の横を通り抜けて氷室へ声をかける進藤の様子にやはり違和感を感じる。
「(たしか氷室と進藤のフラグが立つのは2年に上がってからのはず…でも進藤のあの感じは恐らく2年になる前から関わりがあったように見える。)」
俺が進藤に感じる違和感を深め、思案していると──
「…進藤君、だったかしら?私、貴方と一緒に下校するような仲ではなかったと思うのだけれど?」
まさかの展開だった、進藤の奴たいして仲良くもない女の子に一緒に帰ろうって誘ったのか?
「え!?で、でも1年の頃は同じ図書委員でよく話してたし…」
「それは貴方が事ある毎に話しかけてきたからでしょう?私は何度も委員会の業務に集中してとお願いしてた気がするのだけれど。」
「そ、それは…」
「それに、今日は先約があるの。」
そう言って氷室は立ち上がるとツカツカと歩き出す。
そして廊下にいた俺の手をとった。
「「は?」」
奇しくも俺と進藤の反応が重なる。
「帰りましょう、龍峰君。」
「お、おい氷室──」
氷室はそのまま俺の手を引いて歩き出す。
チラッと進藤の方を見るとその目に宿る感情は嫉妬どころか憎悪にすら見て取れた。
──校門を出てしばらく歩いてから徐に氷室は立ち止まった。
「ごめんなさい、龍峰君。」
「俺は構わんが、理由は聞かせてもらえるか?」
「ふぅ…さっきのやり取りは見ていたでしょう?」
「まぁな。」
「ハッキリ言うけれど、彼、初対面のときから下心全開で私に近付いてきたの。」
「と言うと?」
「さっきも言ったけど去年私と彼は図書委員会に所属していたわ、委員はクラス内から1人ずつでうちの学校は5クラス、つまり委員会には私以外にあと3人いたのよ。」
「ああ、だろうな。」
「…彼ね、私と同じ作業ばかりを申し出て、挙句に作業中は私のプライベートを根掘り葉掘り聞いてくる始末だったの。」
俺の記憶にある通りなら原作にそんな描写はない、だがここは現実の世界だ、ゲームの世界ではない…だがそれでも大筋から逸れることはない、はず。
故に、俺が思い至ったひとつの可能性──
「(進藤 誠吾、転生者か?)」
それならばあの憎悪の視線も説明がつく。
「…ん?ちょっと待て、そんな浅く短い関係で名前呼びなのか?」
「ええ、私も驚いたわ。ちなみに名前呼びをされたのは今日が初めてよ。」
「距離の詰め方ヘタか?」
「んふっ」
俺が思わず毒づくと氷室は耐え切れず笑った。
「まぁそれは分かったけどさ、なんで俺を連れてきたんだよ?」
「そうね…とくに理由はないわ、強いて言うなら今日1日貴方の行動を観察していて興味が湧いたから、かしら?」
「ほぉ…」
「不満かしら?」
「いんや?光栄だね。」
「フフ、これからも観察しててあげる。」
俺が不敵に笑って見せると、氷室も口元に手を添えて冷たくも綺麗に微笑んだ。
だが体格差にのあまり、ぶつかった相手の方が弾き飛ばされて転んだ。
「うわっ」
「(コイツは…)」
俺より頭一つ分小さい身長に凡庸だが悪くはない見た目、間違いない──
「(コイツが主人公か。)わりぃな、立てるか?」
「…だ、大丈夫。」
進藤は差し出された俺の手を取ることはなく、警戒心の滲んだ視線を向けてきた。
「…そうか、じゃあな。」
「……」
進藤のあからさまに敵意ある態度に俺は違和感を覚えた。
「(清廉潔白、とまではいかないまでも善良でちょっとスケベな普通の高校生ってイメージだったが…まるで仇でも見てる目だったな。)」
「雪音!一緒に帰ろうぜ!」
俺の横を通り抜けて氷室へ声をかける進藤の様子にやはり違和感を感じる。
「(たしか氷室と進藤のフラグが立つのは2年に上がってからのはず…でも進藤のあの感じは恐らく2年になる前から関わりがあったように見える。)」
俺が進藤に感じる違和感を深め、思案していると──
「…進藤君、だったかしら?私、貴方と一緒に下校するような仲ではなかったと思うのだけれど?」
まさかの展開だった、進藤の奴たいして仲良くもない女の子に一緒に帰ろうって誘ったのか?
「え!?で、でも1年の頃は同じ図書委員でよく話してたし…」
「それは貴方が事ある毎に話しかけてきたからでしょう?私は何度も委員会の業務に集中してとお願いしてた気がするのだけれど。」
「そ、それは…」
「それに、今日は先約があるの。」
そう言って氷室は立ち上がるとツカツカと歩き出す。
そして廊下にいた俺の手をとった。
「「は?」」
奇しくも俺と進藤の反応が重なる。
「帰りましょう、龍峰君。」
「お、おい氷室──」
氷室はそのまま俺の手を引いて歩き出す。
チラッと進藤の方を見るとその目に宿る感情は嫉妬どころか憎悪にすら見て取れた。
──校門を出てしばらく歩いてから徐に氷室は立ち止まった。
「ごめんなさい、龍峰君。」
「俺は構わんが、理由は聞かせてもらえるか?」
「ふぅ…さっきのやり取りは見ていたでしょう?」
「まぁな。」
「ハッキリ言うけれど、彼、初対面のときから下心全開で私に近付いてきたの。」
「と言うと?」
「さっきも言ったけど去年私と彼は図書委員会に所属していたわ、委員はクラス内から1人ずつでうちの学校は5クラス、つまり委員会には私以外にあと3人いたのよ。」
「ああ、だろうな。」
「…彼ね、私と同じ作業ばかりを申し出て、挙句に作業中は私のプライベートを根掘り葉掘り聞いてくる始末だったの。」
俺の記憶にある通りなら原作にそんな描写はない、だがここは現実の世界だ、ゲームの世界ではない…だがそれでも大筋から逸れることはない、はず。
故に、俺が思い至ったひとつの可能性──
「(進藤 誠吾、転生者か?)」
それならばあの憎悪の視線も説明がつく。
「…ん?ちょっと待て、そんな浅く短い関係で名前呼びなのか?」
「ええ、私も驚いたわ。ちなみに名前呼びをされたのは今日が初めてよ。」
「距離の詰め方ヘタか?」
「んふっ」
俺が思わず毒づくと氷室は耐え切れず笑った。
「まぁそれは分かったけどさ、なんで俺を連れてきたんだよ?」
「そうね…とくに理由はないわ、強いて言うなら今日1日貴方の行動を観察していて興味が湧いたから、かしら?」
「ほぉ…」
「不満かしら?」
「いんや?光栄だね。」
「フフ、これからも観察しててあげる。」
俺が不敵に笑って見せると、氷室も口元に手を添えて冷たくも綺麗に微笑んだ。
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