夢の中で魔王軍を率いる!・・・しっくりこない。

SAIKAI

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話がかみあわんのじゃー

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 「なっ!なにが起きた!?あれ?」
 勇者を覆っていた土の壁はすぐ崩れた。
 そして、そこには、さっきまでいなかった者がいた。
 「だ、誰ですか?」
 勇者は戸惑いながらも聞く。
 その人は、勇者よりも、威厳に溢れた、見るだけで強いと分かる、最強の団長だった。
 「俺か?俺はー」
 名乗る名はまだないので言う。
 「お前らの最大の敵だよ。」
 俺は少しずつ、近づく。
 勇者はあとずさり、困った表情で言う。
 「待ってください。僕は戦う気はありません。」
 戦う気がない。勇者がなにいってるんだか。
 「それじゃ、どうする?」
 「話し合いましょう。」
 なるほど、当然といえば当然か。
 このご時世。喧嘩より、話し合いのほうがいいに決まってる。
 だが、俺から言わせてもらうと、実に
 「くっだらな。」
 「くだらない!?」
 勇者は、さっきよりも驚いていた。
 だってな?話し合いとか、結局意味無いのにやってもな。
 どっちにしろ、俺が勇者君を襲うのは、決定事項である。
 それに、そんな、俺、真面目ですよアピールとか興味ない。
 こいつら勇者の敵になるやつが、真面目に話し合いして、納得するわけないし、ただ暴れたいだけだから、やる気も一切ない。
 「正義感の高い勇者様達とは違うんですよ。てことで消えな。」
 俺はとにかく、当てる為に速いパンチを出す。
 「クッ!ハァ!」
 これは雷。
 俺はジャンプして、ゴム手袋で、雷を全て受けきる。
 ちなみに、ジャンプしたのは、雷は地面に行くとかどうのこうの聞いたことあるから。
 俺は空中で体制をなんとか変え、首に蹴りを入れる。
 それを勇者は避ける。
 さっきのパンチの時もそうだったが、こいつ、異様に速い。
 俺の攻撃を避けるとか、姐さんでもなかなかキツいぞ。
 ああ、こいつ、神様になんかしてもらったか。ただの一般人が、夢の中で、いきなり速くなるなんて、難しすぎる。俺や姐さんみたいな化け物だって、なかなかいないし。
 とりあえず隙をつくろうか。
 俺は能力を使う。
 「なっ!?消えた!?」
 こいつ驚いてばっかだな。
 ちょんちょん
 勇者は肩をつつかれ後ろをむく。
 そこには、例の姐さんがいた。
 「大丈夫かい?」
 「あっはい。ところで、貴女は?勇者の中にはいなかったはずですが。」
 「ああ。なんたって俺は、アイツの相棒だからな。」
 勇者は能力を使おうとするが、前後で拳に挟まれる。
 「ナイス。姐さん。」
 「お前も、こんな作戦思い付くなんてな。」
 俺は能力を使い、姐さんのなかにはいる。
 すると、勇者は俺を探し、左右を見て、後ろを見る。
 そしたら、姐さんからもとのいちに戻るように出て、後ろから殴る。ただそれだけだ。
 「勇者も大したことないな。」
 「おう。俺と姐さんなら、勇者の身体能力を使わせないように出来るしな。」
 それにしても、こいつ、しぶといな。
 「倒したんだろ?なんでこいつ消えないんだ?」
 モンスターは消えたが、こいつはポリゴンにならなくて、疑問なんだろう。
 「ガイドブックには、勇者は気絶、もしくは、死亡したら、拠点に戻されるって書いてあった。」
 「てことは。」
 そう、こいつ、まだ意識がある。
 俺ほどではないが、まあまあ固い。これも神様のお陰か?
 「うう、僕はまだ戻れない。」
 なんか事情があるらしい。
 でも俺達には関係ない。
 「そんじゃ帰るぞ。」
 「もう帰るのかー。」
 「待て!まだ聞くことがある!」
 知らんがな。それはそっちの事情だろ。
 「なんでこんなことした!」
 暴れたいからだよな。他になにがあるってんだ。
 こいつ、凄い真剣な顔してるし、面倒だなぁ。
 「喧嘩したかった。ただそれだけだ。」
 勇者はわなわなと震えだした。
 そんなに怒るのか。
 「そんな理由で僕達を監禁したのか!どんな理由があっても、監禁なんて絶対しちゃいけない!」
 なに言ってんだ。
 いきなり監禁って、怖いなこいつ。
 「よく分からんがそんなん知らん。」
 正直な感想を言った。
 「知らんって、少しは人の気持ちを考えろ!」
 いや、関係ないやつの気持ちなんて、なんで考えないかんのだ。
 「なあ。」
 姐さんが手を引いて、勇者から離れる。
 「お前、監禁なんてしてたのか。」
 「なわけあるか。」
 そんなものに興味ない。
 なんで俺を疑うのか。
 「してない。」
 「してない。」
 俺達は勇者のところに戻る。
 「夢はお前が操っていいものじゃない!夢は自由だ!」
 せやなー。
 俺も普通にそう思う。
 そこで、姐さんが勇者の近くでしゃがむ。
 「なあ、勇者君。こいつは監禁なんてしてない。というか被害者だ。」
 「・・・被害者?」
 勇者の顔がひきつり始めた。
 「俺達は寝たら、ここに来るようになった。あの神なんて言われたのか知らないけど、そんな力、そもそも人間にない。」
 「監禁して」
 「ない。お前らと違うのは、この状況をありがたく受け入れさせてもらっている。」
 いいよなー。こんな警察がいなくて、暴れられるところ。
 「え?えぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!」
 うるさ。
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