3 / 29
俺の彼氏には特別に大切なヒトがいる〜B面〜
B面3
しおりを挟む
「コータぁ、俺あんまし上手くないから後ろの方やっとくね。前の方コータ行って」
「おけ。なっちゃん2もあんまプレイしてないって言ってたもんね」
「うん。買ってからちょっとは練習したんだけど」
「いーよ、いーよ。じゃ始めよっか」
二人でコータのベッドに並んでゲームを始める。
黒がベースのコータの部屋。シンプルだけど、キラキラのコータの髪がよく映える彼の部屋はいつものシトラスがちょっとだけ甘くて俺はそれだけでヤラれてしまいそうだった。
ドキドキする胸を抑えてゲームのスイッチをオンにする。
「真琴のこと待たなくてもいいの?」
「うーん。まこちゃん後輩に宿題教えてって頼まれたからちょっと遅くなるって。待ってても暇だし、やろ」
そう言って俺たちはカラフルなゲームの世界に入っていった。
「もー、なっちゃんヘタだなぁ」
何度もキルされてばかりの俺をコータが笑う。
「だって、買ったばっかだもん。前のやつコータみたいにやってたわけじゃないし」
ちょっとだけ頬を膨らます。
「ごめん、ごめん。拗ねないで。じゃ、一旦抜けてなっちゃんに教えてあげるから許して」
そう言って綺麗な瞳で俺を覗き込むから、また俺の心臓はどきりと脈打つ。
「しょ……しょうがないなぁ。それで許してやるよ」
コータはかっこよくてそれでいて可愛くて。怒れるわけなんてないんだけど、俺はちょっとだけ調子に乗ってそう言ってみた。
「んじゃ、ココきて。なっちゃん」
そう言ってコータが移動を指示した場所は、何とコータの脚の間だった。
「そこぉ?!」
驚いて俺は目を丸める。
「うん。後ろからなら、なっちゃんのプレイしてる指と画面同時に見れるからアドバイスしやすいでしょ」
いいから、おいで。
コータの目が優しく細められた。
そっと手招きされた俺は、魔法の呪文に掛けられたようにフラフラと立ち上がって、少し広げられたコータの脚の間に座った。
「よし。じゃあちょっとプレイしてみ?」
そう言ってコータは俺の肩に顎を乗せた。
頬が触れ合いそうなほど近い。
まるで背中から抱き締められているみたいな体勢。
プレイが始まったけれど、コータの吐息が頬をくすぐって、シトラスが強く香って正直それどころじゃない。
「なっちゃんのブキ、飛距離短いから相手との距離考えて上手く隠れて……っほら、敵こっち来たから隠れて……っ」
コータが俺の手に自分の手を重ねるようにして、俺のゲームを操作する。
コータの逞しい胸がぴったり俺の背に合わさって、後ろから抱き締められているみたいで、心臓が壊れてしまいそうだった。
「そんで、相手が近付いてきたらギリギリのとこまで我慢して……」
説明してくれる声もいつもより低くて、密着したところが熱くて、コータの香りがいつもより濃厚で……
まるでお風呂でのぼせたみたいになった俺は、何が何だかもうわからなくなる。
「なっちゃん、今っ……今撃って!」
「ふぇ……? いま……?」
「あっほら、今だってっ……」
コータが密着してくるせいでわけがわからなくなった俺がぽやぽやしていると、コータが俺の指を強く押すようにして攻撃のコマンドを出した。
「今の距離とタイミングわかった? 自分のブキの飛距離把握して攻撃のタイミング掴むんだよ」
そう言ってコータは俺をぎゅっと抱き締めるみたいに腕に力を入れた。
「なっちゃん、細いなー。俺の腕の中にすっぽりじゃん」
「え……あ……はぁ?」
あまりのことに俺の頭はショートしたみたいになる。
そのときだった。
「わ……っ」
コータのポケットに入っていたスマホが震えて、くっついていた俺にまで振動が伝わった。
「あ……まこちゃんかな」
コータの口から出たその名前に俺の体はぎくり、と強張った。
腕の中の俺の様子には気付かないコータはポケットからスマホを取り出して、受け取ったメッセージに目を走らせる。
「えー……まじか……」
明らかに落胆したコータの声。
「ど……どうしたの……?」
「まこちゃん、今日来れないって……」
悲しそうにコータが言う。
「へ……っ? 何で?」
真琴は先約を反故したりするようなタイプじゃないので、驚いて俺は聞いた。
「後輩くんちにお泊りだってさ……」
コータが吐いた溜息に深い悲しみを感じて、俺の胸はずきり、と痛んだ。友達が他の友達の家に泊まるからと言って、普通はこんなに悲しそうにしない。
そして、俺はコータが真琴の家に泊まると聞くと胸が痛むから、コータの気持ちがわかりすぎるほどわかってしまった。
元々真琴に敵うはずがないとわかってるのに、はっきり突きつけられるのはいつもきつい。
コータはぎゅうぅっと俺を抱き締めて溜息を吐く。
「元気だしてよ、コータ……ゲーム続きしよ? お菓子も食べようよ」
俺だって改めて失恋を突き付けられて泣きたいくらい辛かったけど、悲痛な顔をするコータを励ましたくて声を絞り出す。
「まこちゃん、俺らよりもアイツといる方が楽しいのかなぁ……」
コータの声を聞いて、泣いているのかと思って俺は慌てて振り返る。
「うわっ……っ」
くるりと世界が回ったかと思うと、コータのベッドの上に転がされた俺の胸の辺りにコータは顔を埋めていた。
「……寂しいよ……なっちゃん、慰めて……」
俺の目の前にはキラキラのコータの髪。
ベッドからはコータのシトラスがいっぱい香って、でも、胸はずきずき痛くって、わけがわからなくなる。
「おけ。なっちゃん2もあんまプレイしてないって言ってたもんね」
「うん。買ってからちょっとは練習したんだけど」
「いーよ、いーよ。じゃ始めよっか」
二人でコータのベッドに並んでゲームを始める。
黒がベースのコータの部屋。シンプルだけど、キラキラのコータの髪がよく映える彼の部屋はいつものシトラスがちょっとだけ甘くて俺はそれだけでヤラれてしまいそうだった。
ドキドキする胸を抑えてゲームのスイッチをオンにする。
「真琴のこと待たなくてもいいの?」
「うーん。まこちゃん後輩に宿題教えてって頼まれたからちょっと遅くなるって。待ってても暇だし、やろ」
そう言って俺たちはカラフルなゲームの世界に入っていった。
「もー、なっちゃんヘタだなぁ」
何度もキルされてばかりの俺をコータが笑う。
「だって、買ったばっかだもん。前のやつコータみたいにやってたわけじゃないし」
ちょっとだけ頬を膨らます。
「ごめん、ごめん。拗ねないで。じゃ、一旦抜けてなっちゃんに教えてあげるから許して」
そう言って綺麗な瞳で俺を覗き込むから、また俺の心臓はどきりと脈打つ。
「しょ……しょうがないなぁ。それで許してやるよ」
コータはかっこよくてそれでいて可愛くて。怒れるわけなんてないんだけど、俺はちょっとだけ調子に乗ってそう言ってみた。
「んじゃ、ココきて。なっちゃん」
そう言ってコータが移動を指示した場所は、何とコータの脚の間だった。
「そこぉ?!」
驚いて俺は目を丸める。
「うん。後ろからなら、なっちゃんのプレイしてる指と画面同時に見れるからアドバイスしやすいでしょ」
いいから、おいで。
コータの目が優しく細められた。
そっと手招きされた俺は、魔法の呪文に掛けられたようにフラフラと立ち上がって、少し広げられたコータの脚の間に座った。
「よし。じゃあちょっとプレイしてみ?」
そう言ってコータは俺の肩に顎を乗せた。
頬が触れ合いそうなほど近い。
まるで背中から抱き締められているみたいな体勢。
プレイが始まったけれど、コータの吐息が頬をくすぐって、シトラスが強く香って正直それどころじゃない。
「なっちゃんのブキ、飛距離短いから相手との距離考えて上手く隠れて……っほら、敵こっち来たから隠れて……っ」
コータが俺の手に自分の手を重ねるようにして、俺のゲームを操作する。
コータの逞しい胸がぴったり俺の背に合わさって、後ろから抱き締められているみたいで、心臓が壊れてしまいそうだった。
「そんで、相手が近付いてきたらギリギリのとこまで我慢して……」
説明してくれる声もいつもより低くて、密着したところが熱くて、コータの香りがいつもより濃厚で……
まるでお風呂でのぼせたみたいになった俺は、何が何だかもうわからなくなる。
「なっちゃん、今っ……今撃って!」
「ふぇ……? いま……?」
「あっほら、今だってっ……」
コータが密着してくるせいでわけがわからなくなった俺がぽやぽやしていると、コータが俺の指を強く押すようにして攻撃のコマンドを出した。
「今の距離とタイミングわかった? 自分のブキの飛距離把握して攻撃のタイミング掴むんだよ」
そう言ってコータは俺をぎゅっと抱き締めるみたいに腕に力を入れた。
「なっちゃん、細いなー。俺の腕の中にすっぽりじゃん」
「え……あ……はぁ?」
あまりのことに俺の頭はショートしたみたいになる。
そのときだった。
「わ……っ」
コータのポケットに入っていたスマホが震えて、くっついていた俺にまで振動が伝わった。
「あ……まこちゃんかな」
コータの口から出たその名前に俺の体はぎくり、と強張った。
腕の中の俺の様子には気付かないコータはポケットからスマホを取り出して、受け取ったメッセージに目を走らせる。
「えー……まじか……」
明らかに落胆したコータの声。
「ど……どうしたの……?」
「まこちゃん、今日来れないって……」
悲しそうにコータが言う。
「へ……っ? 何で?」
真琴は先約を反故したりするようなタイプじゃないので、驚いて俺は聞いた。
「後輩くんちにお泊りだってさ……」
コータが吐いた溜息に深い悲しみを感じて、俺の胸はずきり、と痛んだ。友達が他の友達の家に泊まるからと言って、普通はこんなに悲しそうにしない。
そして、俺はコータが真琴の家に泊まると聞くと胸が痛むから、コータの気持ちがわかりすぎるほどわかってしまった。
元々真琴に敵うはずがないとわかってるのに、はっきり突きつけられるのはいつもきつい。
コータはぎゅうぅっと俺を抱き締めて溜息を吐く。
「元気だしてよ、コータ……ゲーム続きしよ? お菓子も食べようよ」
俺だって改めて失恋を突き付けられて泣きたいくらい辛かったけど、悲痛な顔をするコータを励ましたくて声を絞り出す。
「まこちゃん、俺らよりもアイツといる方が楽しいのかなぁ……」
コータの声を聞いて、泣いているのかと思って俺は慌てて振り返る。
「うわっ……っ」
くるりと世界が回ったかと思うと、コータのベッドの上に転がされた俺の胸の辺りにコータは顔を埋めていた。
「……寂しいよ……なっちゃん、慰めて……」
俺の目の前にはキラキラのコータの髪。
ベッドからはコータのシトラスがいっぱい香って、でも、胸はずきずき痛くって、わけがわからなくなる。
291
あなたにおすすめの小説
幼馴染は俺がくっついてるから誰とも付き合えないらしい
中屋沙鳥
BL
井之原朱鷺は幼馴染の北村航平のことを好きだという伊東汐里から「いつも井之原がくっついてたら北村だって誰とも付き合えないじゃん。親友なら考えてあげなよ」と言われて考え込んでしまう。俺は航平の邪魔をしているのか?実は片思いをしているけど航平のためを考えた方が良いのかもしれない。それをきっかけに2人の関係が変化していく…/高校生が順調(?)に愛を深めます
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる