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1章
12話
しおりを挟む「……っ折角見直そうと思ったのに……っ」
繋げられたところから湧き上がる快感を紛らわしたくて、高弥は憎まれ口を叩く。
「セックスしてる間は仕事のことは忘れられんだろ」
にやり、と笑いながら沢村は腰を揺する。
「ん……っまた……変なこと言って……っ」
「そういうこと、言ってると……」
「あぁ……っ」
「ココばっか突くぞ」
高弥の弱いところをぐりぐりと抉ってくる。
「あっあっ……そこばっかりやだぁ……も、いく……」
そう言って、高弥は沢村の首に腕を伸ばしてぎゅっと抱きついた。
「いいじゃん、イけよ……」
何もわかんなくなっちまえ、と耳元で低く呟いたあと、くちびるを奪われた。
抱き締められながらキスして、舌を絡めて、深いところに沢村を感じて。
男が柄にもなく、自分のことを慰めようとしているのかもしれないと思ったとき、花が綻ぶようにゆっくりと胸に温かいものが広がった。
「あぁっ……」
下腹を震わせたタイミングで絶頂に押し上げられる。
オメガらしい小ぶりなペニスも花が咲きそうなほどに赤く色づいて、うっすらと白く濁る蜜を溢した。
「発情期じゃなくても、簡単にイくのな、お前」
からかうように言ってくるけれど、瞳の奥に思いの外優しい彩沈めているのが見えて、 薄い下腹が痙攣してしまうのが止められない。
「あ……あ……」
沢村に見つめられて、ぴゅくぴゅくと精液が零れるのが止められないし、繋がったところからも透明な体液が沢村が動くたびに溢れてしまう。
思わず縋るように顔の横に突かれた腕を掴むと、この腕がどれほど頼りになる頼もしいものなのか、鮮明に思い出される。
腕に触れると、高弥の胸のずっと奥。自分でも触れられないほどの奥が締め付けられるみたいに苦しくなった。
その苦しみを自覚した途端、高弥は気付いて愕然としてしまった。
なぜ、最初から沢村を拒み通すことがどうしても出来なかったのか。
「高弥?まーた泣いてんじゃん。ほんとお前気持ちいいと涙出るよな」
いつの間にか溢していた涙を人差し指で笑いながら拭われた。心のナカまで気取られないように、慌てて沢村の首筋に顔を埋めた。
「もっと……もっと、 シて……っあ……っ」
気持ちの混乱を隠すために言った誘うような言葉が終わらないうちに胎内で固くてどうしようもなく熱い塊がずくずくと動き出した。
「……っなんだよ、 かわいいじゃん、今日」
笑いながらも、興奮したらしい沢村は、高弥の膝裏をぐっと掴むと、更に奥に入り込んで狂ったようにペニスを敏感な粘膜に擦り立ててきた。
「んんっー……っ」
快楽の甘い海に沈められながら、どうしてこれまで沢村を拒めなかったのか、その理由に震えた。
自分はこの男にどうしようもなく惹かれているのだ。
高弥の上で、快楽をゆっくり味わうために、 眉を寄せる顔が狂おしいくらい艶かしいと思った。
こんなのは叶わない馬鹿げた想いだ。
酷いくせに時折みせる優しさに、自分だけが 特別なんだと勘違いしてしまいそうだが、彼を取り巻く女達もこんなところに惹かれたのだろう。そう思うと火傷しそうなほどに火照る躯と相反して心の何処か端っこの部分が冷たくなった。
そんな高弥のナカをかきまぜながら、大きなてのひらが今日負った高弥の傷を癒すかのように優しく撫でた。
もう止めて欲しい、止めないで欲しい……かきまぜて欲しい、かきまぜないで欲しい……
胸に寄せる想いが苦しくて辛くて、今だけは自分のものにしたくて、男に腕も脚も絡めて、ねだるように腰を揺らすと、腹の奥が熱くなってナカにそのまま吐き出されたのがわかった。
「あー、やっぱそのまま出すのきもちいーわー」
見蕩れてしまうほどの綺麗な顔に恍惚とした表情を浮かべた沢村に、やはり自分は都合がいい相手なんだと高弥は痛感せずにはいられなかったが、自分から手を離すことは出来ないだろうと高弥は思った。
ただどうしようもなく瞳の奥が熱くなって涙が流れるのを止められなかった。
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