僕はここにいるよ

ニッシー

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「春君、ばあばが来たよ。
 ばあばね、今日はね、春君の好きだった
    恐竜チョコ持って来たんよ。いっぱいたべね~」
「あらた、なつみさんの様子はどうね?」
「受け入れることができなくて、今はまだ・・・・」
「ちゃんと、そばについててやるんよ! いいか、あらた」
「わかってるよ。 父さん」

「ママ。見てこれ!」
春君はきれいに折られた折り紙をお母さんに差し出しました。
「わぁ、上手だね! これは何の恐竜?」
「これはね、プテラノドン!
     ママにプレゼント!」
「本当!! ありがとね、春」

「・・春・・・・・」
「なつみ、春のために二人が来てくれたよ」
「・・・・・・・・・・」
「なつみさん、あんたのせいじゃなかよ」
「・・・・・・・・・・」
「あらた、なつみさんと少し外に出てきたらどうや」
「そうだな、なつみ少し外に出ようか」
「・・・・・・・・・・」

しばらくすると、二人は車に乗り込み走り出していきました。
「春のことは、お前のせいじゃないよ」
とあらたが言いましたが、なつみの表情は暗く、何も話しません。
しかし、車が恐竜博物館の前を通りかかった時です、
「声が聞こえる・・・・」
となつみが言いました。
「ねぇ、あそこに行って。春の声が聞こえた気がしたの」
「わかった」

あらたは車を駐車場に止めました。
「春・・・・」
「ここに春がいるのか?」
二人は博物館を少し眺めた後、入り口に向かって歩き始めます。

ガチャ
なつみはドアを開け、中を見渡します。
そこには、春と来ていたいつもの景色が広がっていました。
エントランスには巨大なティラノサウルスの化石標本、天井につられた
巨大なモササウルスの再現模型。
博物館内にある巨大な柱には、有名な恐竜たちのポスターが貼ってあります。
「春?いるの?どこなの?」
「なつみ、春のルートを通ろうか」
春にはおなじみのルートがあり、二人はそこを通ることにしました。
歩いている内に二人は目の前に春がいる時を想像し、胸が苦しくなりました。

しばらく歩いていると、春君の大好きな翼竜である
プテラノドンが見えてきました。
「やっぱり、かっこいいなこいつは」
お父さんがプテラノドンの模型に見とれていると急に
ヒュウーーーーーーーーー
扉が勢いよく開き、すさまじい風が博物館の中に吹き込んできます。
「なんだ、急に!!
    手を離すなよ、なつみ」

すさまじい風で博物館中が包まれている中、館内に突然
甲高い声が響き渡ります。
「なんだ、この声は?」
そういって、あらたが振り向くと
なんと、プテラノドンの模型が動き出したのです。
プテラノドンはゆっくりと首を横に振ると、上の方を見上げました。
すると、風も一気に上の方に移動していき上昇気流が出来上がります。
「急に風が上の方向に?」

その風に乗ってプテラノドンは飛び上がり、館内に再び甲高い声が響き渡ります。
「すごいな、これは。今までこんなのはここに無かったぞ!
        これは春にも、見せてやりたかった」
プテラノドンは天井すれすれのところを風に乗りながら、旋回を続けています。
ただ楽しんでいるのもつかの間、今度は二人に向かってプテラノドンが
向かってくるではありませんか。
「あぶない、なつみ! 逃げるぞ」
二人は急いで別のエリアに逃げていきます。



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