僕はここにいるよ

ニッシー

文字の大きさ
2 / 3

Second

しおりを挟む
「春君、ばあばが来たよ。
 ばあばね、今日はね、春君の好きだった
    恐竜チョコ持って来たんよ。いっぱいたべね~」
「あらた、なつみさんの様子はどうね?」
「受け入れることができなくて、今はまだ・・・・」
「ちゃんと、そばについててやるんよ! いいか、あらた」
「わかってるよ。 父さん」

「ママ。見てこれ!」
春君はきれいに折られた折り紙をお母さんに差し出しました。
「わぁ、上手だね! これは何の恐竜?」
「これはね、プテラノドン!
     ママにプレゼント!」
「本当!! ありがとね、春」

「・・春・・・・・」
「なつみ、春のために二人が来てくれたよ」
「・・・・・・・・・・」
「なつみさん、あんたのせいじゃなかよ」
「・・・・・・・・・・」
「あらた、なつみさんと少し外に出てきたらどうや」
「そうだな、なつみ少し外に出ようか」
「・・・・・・・・・・」

しばらくすると、二人は車に乗り込み走り出していきました。
「春のことは、お前のせいじゃないよ」
とあらたが言いましたが、なつみの表情は暗く、何も話しません。
しかし、車が恐竜博物館の前を通りかかった時です、
「声が聞こえる・・・・」
となつみが言いました。
「ねぇ、あそこに行って。春の声が聞こえた気がしたの」
「わかった」

あらたは車を駐車場に止めました。
「春・・・・」
「ここに春がいるのか?」
二人は博物館を少し眺めた後、入り口に向かって歩き始めます。

ガチャ
なつみはドアを開け、中を見渡します。
そこには、春と来ていたいつもの景色が広がっていました。
エントランスには巨大なティラノサウルスの化石標本、天井につられた
巨大なモササウルスの再現模型。
博物館内にある巨大な柱には、有名な恐竜たちのポスターが貼ってあります。
「春?いるの?どこなの?」
「なつみ、春のルートを通ろうか」
春にはおなじみのルートがあり、二人はそこを通ることにしました。
歩いている内に二人は目の前に春がいる時を想像し、胸が苦しくなりました。

しばらく歩いていると、春君の大好きな翼竜である
プテラノドンが見えてきました。
「やっぱり、かっこいいなこいつは」
お父さんがプテラノドンの模型に見とれていると急に
ヒュウーーーーーーーーー
扉が勢いよく開き、すさまじい風が博物館の中に吹き込んできます。
「なんだ、急に!!
    手を離すなよ、なつみ」

すさまじい風で博物館中が包まれている中、館内に突然
甲高い声が響き渡ります。
「なんだ、この声は?」
そういって、あらたが振り向くと
なんと、プテラノドンの模型が動き出したのです。
プテラノドンはゆっくりと首を横に振ると、上の方を見上げました。
すると、風も一気に上の方に移動していき上昇気流が出来上がります。
「急に風が上の方向に?」

その風に乗ってプテラノドンは飛び上がり、館内に再び甲高い声が響き渡ります。
「すごいな、これは。今までこんなのはここに無かったぞ!
        これは春にも、見せてやりたかった」
プテラノドンは天井すれすれのところを風に乗りながら、旋回を続けています。
ただ楽しんでいるのもつかの間、今度は二人に向かってプテラノドンが
向かってくるではありませんか。
「あぶない、なつみ! 逃げるぞ」
二人は急いで別のエリアに逃げていきます。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

あの素晴らしい愛をもう一度

仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは 33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。 家同士のつながりで婚約した2人だが 婚約期間にはお互いに惹かれあい 好きだ!  私も大好き〜! 僕はもっと大好きだ! 私だって〜! と人前でいちゃつく姿は有名であった そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった はず・・・ このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。 あしからず!

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...