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三章
二十三話
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準備を終え待ち合わせ場所の駅に着くと、そこにはすでに春豊がいた。
着ている物はモノクロでいつも派手な服を着ている春豊とは全く違っていた。また、深い帽子と薄いサングラスを身に着け、化粧も普段よりは薄い気がする。
意図して地味で目立たないようにはしているが、如何せん、そのモデルのようなスタイルと綺麗な赤髪を隠すことは出来ず、周りでこそこそと話してはちらちらと見る通行人が多数いた。やはりこういう人種の人達は隠そうと思っていても完全に隠すことは出来ず、漏れ出してしまうものなのだろう。
『春豊さん、おはようございます。遅くなってすみません。大雅がぼーっとしてるから遅れちゃいました』
「いや、まあ、それはそうなんですけど……でも、それ以上に美波がうるさかったっていうのも原因の一つでした」
美波がそれにむっと頬を膨らませ反論する。
『それは大雅が時間ないのに全然焦らないから、私が急かしてあげたんじゃない。大雅だけだったらこれくらいの遅刻じゃすまなかったでしょ! 感謝されこそ、文句を言われる筋合いはないと思うけど!』
「いつもいつも美波は度が過ぎるんだよ! 一回言われれば分かるんだから、一回だけ言ってくれればいいんだよ!」
『そう言って、何度も遅刻しそうになってるじゃない!』
美波と大雅が睨み合い、その間に春豊が入る。
「ま、まあまあ、私は大丈夫だから……それよりも今日はどこに行くのかしら?」
〝それ、私も手伝うわ〟
春豊にそう言われてから一週間が経過した。
先日まで朱里に近づくため、美波の実家付近のホテルに寝泊まりしながら生活していたが、経済的な面の問題と春豊のこともあり、一度東京のアパートに戻ってきた。
ここ一週間、春豊と一緒に美波とよく行っていた場所や思い出の場所を巡っている。
一緒に通っていた高校、付き合う前に友達と頻繁に行っていたファミレス、高校の時の友達……。
過去の記憶を辿りながら古いところから順に当たることにしていた。
アルバイトを辞め美波の心残りを探す時間を確保することは出来たが、美波の心残りを探す手がかりと言えば、現状、朱里くらいしか思い当たらないため、情報は非常に少ない。
それを危惧した春豊に提案されたことが思い出の場所を巡ることであった。
確かに思い出の場所であればそれが直接関わらなくても、何かの拍子に思い出すことがあるかもしれない。それに個人的には美波との楽しかった思い出で追体験出来るので、一石二鳥の提案だ。どうして最初にこれが浮かばなかったのか不思議な位である。
いまだに頬を膨らませたままの美波が春豊の問いに答える。
『今日は……ここに行きましょう!』
嬉々とした表情で美波が指差したのは関東近辺で有名な水族館の看板であった。
二人で行く前から美波はこの水族館が大好きで、暇さえあれば一人でも行ってしまうほどの場所である。
それに対して、大雅は特別海洋生物が好きということはないので、仮に美波と付き合ってなければ一生行くことはなかっただろう。……というより、むしろ過去に海で溺れ死にかけた経験があったので、嫌悪感さえ抱いていた。大雅にとって海やそれに近いものや極端なことを言えば連想させるようなものまで嫌悪の対象であった。
その気持ち自体は今も変わらないのだが、ことこの水族館においては別だった。
「ここね。デートでは定番よね。よく行ってたの?」
電車の座席に座り春豊が訊く。
平日昼の一番後ろの車両であることもあってか、座席は空いており、この車両に乗っているのは大雅達だけであった。額に脂汗を浮かべたおばさんよろしく血眼になって空いている席を探さなくてもすんなりと座ることができた。
「そうですね。誕生日とか何かの記念日とかには行ってましたね」
電車に乗るや否や窓の外を食い入るように見る美波を横目で見て、大雅は小さい溜息を吐く。
無邪気なのはいいが時と場所を少し考えて欲しい、と切に願う。
着ている物はモノクロでいつも派手な服を着ている春豊とは全く違っていた。また、深い帽子と薄いサングラスを身に着け、化粧も普段よりは薄い気がする。
意図して地味で目立たないようにはしているが、如何せん、そのモデルのようなスタイルと綺麗な赤髪を隠すことは出来ず、周りでこそこそと話してはちらちらと見る通行人が多数いた。やはりこういう人種の人達は隠そうと思っていても完全に隠すことは出来ず、漏れ出してしまうものなのだろう。
『春豊さん、おはようございます。遅くなってすみません。大雅がぼーっとしてるから遅れちゃいました』
「いや、まあ、それはそうなんですけど……でも、それ以上に美波がうるさかったっていうのも原因の一つでした」
美波がそれにむっと頬を膨らませ反論する。
『それは大雅が時間ないのに全然焦らないから、私が急かしてあげたんじゃない。大雅だけだったらこれくらいの遅刻じゃすまなかったでしょ! 感謝されこそ、文句を言われる筋合いはないと思うけど!』
「いつもいつも美波は度が過ぎるんだよ! 一回言われれば分かるんだから、一回だけ言ってくれればいいんだよ!」
『そう言って、何度も遅刻しそうになってるじゃない!』
美波と大雅が睨み合い、その間に春豊が入る。
「ま、まあまあ、私は大丈夫だから……それよりも今日はどこに行くのかしら?」
〝それ、私も手伝うわ〟
春豊にそう言われてから一週間が経過した。
先日まで朱里に近づくため、美波の実家付近のホテルに寝泊まりしながら生活していたが、経済的な面の問題と春豊のこともあり、一度東京のアパートに戻ってきた。
ここ一週間、春豊と一緒に美波とよく行っていた場所や思い出の場所を巡っている。
一緒に通っていた高校、付き合う前に友達と頻繁に行っていたファミレス、高校の時の友達……。
過去の記憶を辿りながら古いところから順に当たることにしていた。
アルバイトを辞め美波の心残りを探す時間を確保することは出来たが、美波の心残りを探す手がかりと言えば、現状、朱里くらいしか思い当たらないため、情報は非常に少ない。
それを危惧した春豊に提案されたことが思い出の場所を巡ることであった。
確かに思い出の場所であればそれが直接関わらなくても、何かの拍子に思い出すことがあるかもしれない。それに個人的には美波との楽しかった思い出で追体験出来るので、一石二鳥の提案だ。どうして最初にこれが浮かばなかったのか不思議な位である。
いまだに頬を膨らませたままの美波が春豊の問いに答える。
『今日は……ここに行きましょう!』
嬉々とした表情で美波が指差したのは関東近辺で有名な水族館の看板であった。
二人で行く前から美波はこの水族館が大好きで、暇さえあれば一人でも行ってしまうほどの場所である。
それに対して、大雅は特別海洋生物が好きということはないので、仮に美波と付き合ってなければ一生行くことはなかっただろう。……というより、むしろ過去に海で溺れ死にかけた経験があったので、嫌悪感さえ抱いていた。大雅にとって海やそれに近いものや極端なことを言えば連想させるようなものまで嫌悪の対象であった。
その気持ち自体は今も変わらないのだが、ことこの水族館においては別だった。
「ここね。デートでは定番よね。よく行ってたの?」
電車の座席に座り春豊が訊く。
平日昼の一番後ろの車両であることもあってか、座席は空いており、この車両に乗っているのは大雅達だけであった。額に脂汗を浮かべたおばさんよろしく血眼になって空いている席を探さなくてもすんなりと座ることができた。
「そうですね。誕生日とか何かの記念日とかには行ってましたね」
電車に乗るや否や窓の外を食い入るように見る美波を横目で見て、大雅は小さい溜息を吐く。
無邪気なのはいいが時と場所を少し考えて欲しい、と切に願う。
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