セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
21 / 185
第3章 SEARED

1.実戦試験

しおりを挟む

「アインせんぱ~~い!」

  黄色い煉瓦造りの建物が立ち並び、赤い夕焼けが空を焦がしていた。アインは、そんな空を見上げ、生まれ育ったあの星を思い出す。

「どうかしたんですか?」
「……偽物ばっかで、この星はつまんないな」
「確かにですねー、でも僕らが住んでた星って、この星の奴らはみんな伝説とか思ってたみたいですよー『伝説の星、地球』とか言っちゃって~失礼しちゃいますよね。僕らアクチノイド人が襲撃してきたら一気に存在認めちゃって、馬鹿なんですかね。ここの人間は」

  金髪を夕焼けの色に染め、ヘラヘラと笑う少年は、アインの顔を覗き込む。

「帰りましょう、アイン先輩。プロトが怒っちゃいますよ」
「……そうだな。フェル」



「これから始める第三試験【実戦】は、監督を代わって、第一部隊、副指揮官。パラ・ポネラ!このワタシが引き受ける!」

  そういって台の上に上がったのは、見間違えようもない。一見、同年ぐらいの少女だった。赤髪を肩のあたりでバッサリ切り、キリッと引き締まった目尻。緊張しているわけではないが、陶器のようにピクリとも動かない表情が、彼女の経験値を物語る。
  女性団員は、ミアナの他にもいるようだ。アダムはふと少女の視線がこちらを捕らえたことに気づく。視線が絡み合い、妙な違和感。張り詰めた一瞬の空気。

「今回の試験では、今までの試験とは違って。本当に命を懸ける戦いとなる!気を引き締めて臨み、無事に生還しなさい!」

  実戦…とは聞いたものの。本物の敵が現れるわけでもないだろう。アダムは、どことなく気の抜けた面持ちで、案内された部屋へ入る。
  部屋の中は、一面真っ白な色に塗られ、所々に恐ろしげな赤黒いシミが浮き出していた。

「つまり、ここで必要ない者の殲滅があるわけか」

  ようやくこの組織の本質に近づいたような気がし、アダムは配布された短剣を軽く握り直す。ヤドクとブームの稼ぎ手段は、主に盗みだった。知能犯のヤドクと実行犯のブームで、2人、コンビを組んでいた。一方、アダムはというと、自由奔放に街を歩き回り、気が向いたら盗みを働く。といった場合が多かった。そう考えれば単独戦闘は得意なほうだ。

「アダム・アリーダか?」

  突如、そんな声がかけられ、アダムは振り返る。そこには、先ほど試験監督と名乗った少女。パラ・ポネラが立っていた。

「あぁ、そうだけど?」
「長官がどうやら、お前に目をつけているようだ」
「……は?」
「今回の実戦では、お前だけ特別ルールとなる」
「いや、待てよ。どういうことだよ」
「お前は、アクチノイドを知っているか?」

  アダムは、その言葉に息を飲む。アクチノイド…四年前、突如現れた。謎の人類。セカンドアースへ乗り込み。アリダン国のメインストリートを全焼させ、イヴを炎に奪われ、俺の人生を急変させた奴らだ。

「知ってる…だから、このシーレッドが設立されたんだろ?アクチノイドに対抗するための組織として」
「なら、アクチノイド人を見たことはあるか?」
「……見たことあるかって。同じ人間なんだから、普通に街歩いてたって気づかねぇだろ」
「確かに、アクチノイド人はワタシ達と姿形心。全て、一般的な人間と変わらない。だが、奴らが実際に戦闘をしているところは?」
「…んなもん見たことはねぇよ」
「そうか」

  パラはそれが無意識なのか。それとも、作ったものなのか。不敵な笑みを浮かべた。

「お前には、そのアクチノイド人と戦ってもらう」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...