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第3章 SEARED
1.実戦試験
しおりを挟む「アインせんぱ~~い!」
黄色い煉瓦造りの建物が立ち並び、赤い夕焼けが空を焦がしていた。アインは、そんな空を見上げ、生まれ育ったあの星を思い出す。
「どうかしたんですか?」
「……偽物ばっかで、この星はつまんないな」
「確かにですねー、でも僕らが住んでた星って、この星の奴らはみんな伝説とか思ってたみたいですよー『伝説の星、地球』とか言っちゃって~失礼しちゃいますよね。僕らアクチノイド人が襲撃してきたら一気に存在認めちゃって、馬鹿なんですかね。ここの人間は」
金髪を夕焼けの色に染め、ヘラヘラと笑う少年は、アインの顔を覗き込む。
「帰りましょう、アイン先輩。プロトが怒っちゃいますよ」
「……そうだな。フェル」
*
「これから始める第三試験【実戦】は、監督を代わって、第一部隊、副指揮官。パラ・ポネラ!このワタシが引き受ける!」
そういって台の上に上がったのは、見間違えようもない。一見、同年ぐらいの少女だった。赤髪を肩のあたりでバッサリ切り、キリッと引き締まった目尻。緊張しているわけではないが、陶器のようにピクリとも動かない表情が、彼女の経験値を物語る。
女性団員は、ミアナの他にもいるようだ。アダムはふと少女の視線がこちらを捕らえたことに気づく。視線が絡み合い、妙な違和感。張り詰めた一瞬の空気。
「今回の試験では、今までの試験とは違って。本当に命を懸ける戦いとなる!気を引き締めて臨み、無事に生還しなさい!」
実戦…とは聞いたものの。本物の敵が現れるわけでもないだろう。アダムは、どことなく気の抜けた面持ちで、案内された部屋へ入る。
部屋の中は、一面真っ白な色に塗られ、所々に恐ろしげな赤黒いシミが浮き出していた。
「つまり、ここで必要ない者の殲滅があるわけか」
ようやくこの組織の本質に近づいたような気がし、アダムは配布された短剣を軽く握り直す。ヤドクとブームの稼ぎ手段は、主に盗みだった。知能犯のヤドクと実行犯のブームで、2人、コンビを組んでいた。一方、アダムはというと、自由奔放に街を歩き回り、気が向いたら盗みを働く。といった場合が多かった。そう考えれば単独戦闘は得意なほうだ。
「アダム・アリーダか?」
突如、そんな声がかけられ、アダムは振り返る。そこには、先ほど試験監督と名乗った少女。パラ・ポネラが立っていた。
「あぁ、そうだけど?」
「長官がどうやら、お前に目をつけているようだ」
「……は?」
「今回の実戦では、お前だけ特別ルールとなる」
「いや、待てよ。どういうことだよ」
「お前は、アクチノイドを知っているか?」
アダムは、その言葉に息を飲む。アクチノイド…四年前、突如現れた。謎の人類。セカンドアースへ乗り込み。アリダン国のメインストリートを全焼させ、イヴを炎に奪われ、俺の人生を急変させた奴らだ。
「知ってる…だから、このシーレッドが設立されたんだろ?アクチノイドに対抗するための組織として」
「なら、アクチノイド人を見たことはあるか?」
「……見たことあるかって。同じ人間なんだから、普通に街歩いてたって気づかねぇだろ」
「確かに、アクチノイド人はワタシ達と姿形心。全て、一般的な人間と変わらない。だが、奴らが実際に戦闘をしているところは?」
「…んなもん見たことはねぇよ」
「そうか」
パラはそれが無意識なのか。それとも、作ったものなのか。不敵な笑みを浮かべた。
「お前には、そのアクチノイド人と戦ってもらう」
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