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第5章 タロソナ国
5.金髪の遊人
しおりを挟む突如、始まってしまった殺し合いに、ブームは怯える暇もなく、ただただ攻撃を避けることに専念していた。
「お!やっぱ早いっすねぇ~」
いつの間に、さっきまでの赤髪が消えており、残った金髪青年の、見えない攻撃をほぼ勘で察知し、動き回る。
「今日は、勘が冴えてるからかな」
「勘?おれの攻撃を勘で…面白い」
確か、ヤドクに聞いた話では、レブルブルーのトップは6人。緑髪のノーベ。紫髪のローレン。青髪のプロト。赤髪のアイン。金髪のフェル。もう一人はよく分からない。らしい。
つまり、今、目の前にいる金髪は、フェル……ということになるようだ。
「色の統一ってのは、随分と面白いなぁ」
「ボスがウザいぐらい綺麗好きなんでね」
フェルの攻撃が、絶妙なタイミングを狙って、不意をつこうとする。ブームは必死にそれを交わすが、自分から攻撃を仕掛けることが儘ならない。ノーベなんかとは、格が違う。そんな風にさえ思えた。
「おれはスピード系なんですよ~だから、ノーベとの戦いでアンタが随分面白い速度を出してたって聞いたもんで、指示吹っ飛ばして来ちゃいました!」
「身勝手なんだな…お前らにとっての雑魚レブルブルーの奴らは?」
「連れてきてないっす~」
「なめてたってわけか」
「なめてるってわけですよ」
ブームは、フェルの行動順位を読み取ろうとするが、無造作に出される激しい攻撃の一つ一つは、避けることさえギリギリだ。
ヤドクじゃねぇし、オレには無理かな。
ブームは、自分にできることを考える。ヤドクには、頭脳がある…なら、オレには……
「あーぁー、それは残念だなぁ~…死ぬんだったら、大勢に一斉に攻撃されて、避けられなかったとか言いたかったんだけどな~一応、オレもシーレッドのトップってことになってるし…たった一人の金髪兄さんに殺された。なんてカッコつかねぇよ」
「……諦めるんすか?」
その声に、少しだけ悲しそうな……まるで、遊んでもらえなくなった犬のような。そんな声音が混じっているようにも感じた。
「フェル……なんていうんだっけ?」
「フェル・アフロディテっすよぉ~」
「あ、うん。フェル・アフロディテ…さん」
「フェルでいいっすよ」
「な、ならフェル……お前は強い!」
「……知ってますけど…」
「だから、オレは死ぬ!確実に!」
「……別にアンタが死んで困ることはないけど」
「……ですよね~…………」
やばい。予定では、ここで「フェル、お前に遊び方っていうもんを教えてやるよ」とかなんとか言って、隙をつくはずだったのに…完全に出遅れた。
「フェル・アフロディテ!基本装備は、銀拳!ナックルダスター!強烈な重圧と、光速の攻撃で、威力は内臓を破裂させるほどある!一度当たれば、終わりだ!」
なんだなんだこの情報!と思いつつ、振り返ると、そこには、青蛙にまたがり浮遊するヤドクの姿があった。
「お、ヤドクじゃん!」
「お、ヤドクじゃん!じゃないだろ!さっきも言ったように、そいつの攻撃は只者じゃない!一度当たれば…」
「生死に関わる……だろ?でも、なめてもらっちゃ困る、オレだって、スピード系だからな」
ブームは引きつった笑顔を作り、目の前の金髪に向き直る。金髪の姿はもうそこにはない。そんなことぐらい想定内だ。
「おせぇよ、金髪」
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