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第5章 タロソナ国
6.束縛と誤ち
しおりを挟む「大丈夫かな、みんな……」
天候の悪化した、淀んだ空気の中に佇む、青城。ミアナは、そんな哀愁漂う城を見上げ、左手に持った薄ピンクの石を空にかざす。透けるような美しい石の内部に、自身の心の弱さを感じ、ミアナは先ほど城内に駆けて行ったヤドクを追おうと地面を蹴る。
「どこに行く気だ?」
ギクリと、体が脱落するような。安堵とは違い、不安、それでもなく、体を締め付けるような……束縛。
「……どこに行くにも、自由でしょ?」
「君は違う。僕の…」
「…違う!アタシは……」
腕を掴まれ、強く引かれる。
「黙って付いて来い」
「……いや!」
レパートの腕を振り払い、後方に飛び退くが、背中にひんやりとした感覚が走り、それが壁だとわかる。
逃げられない。
「…ど、どこに、行くつもりなの?」
「タロソナ国だ。レブルブルーがそこに出現した」
「そんなことより!本部が襲撃されてるわ!中にはまだ団員が残っているかもしれない!急いで…」
「…アダム・アリーダはどこだ?」
「なんで、そんなこと……」
「いいからどこにいる!」
レパートの目が、ミアナの心の奥底を覗くようだった。この人は、見捨てるつもりなのだ。全員。要らないものは要らない。邪魔な者は排除する…
「……ここには…いない」
「なら、どこにいる?」
「…分からない」
「……チッ、タロソナへ向かうぞ」
レパートはそう言って、ミアナの腕を無理矢理掴む。引きずられるようにして、城門を出ると、レパートの動きが止まり、耳に手を当てる。機械音だ。
「…今、向かってる……」
レパートの短い返答の後、発信先を切り替えたのか、先ほどとは違う声音になる。
「タロソナだ、行け」
同じく短い言葉だったが、彼の高い背中は、ミアナにとって恐怖以外の何物でもなく、ただただ、これから起こることがどんなことなのか…そして、彼がアダムをどうする気なのか。そればかりが気がかりだった。
「アダムを……どうして…」
「殺す」
「……え」
「あいつは、この作戦に邪魔だ。殺さなくてはならない」
「…で、でも!アダムのルーラーは誰も適合できなかったルーラーで、彼はそれを自分の意思でコントロールできてるわ!彼のルーラーが暴走したら怖いから、殺すの!?」
「……そう思っていればいい」
「そんなの納得いかない!あなたはそんなに臆病だったの!?」
「黙れ。お前には聞く資格がない」
「なら、どうすれば教えてくれるの!?」
ミアナは、自分が発した言葉に自分でも驚く。今まで、レパートに対して、このようなお願いにも似た言葉は言わなかった。
「なら……」
レパートの表情が、冷たく冷酷になっていく。
ミアナの中で、全ての希望が、消えた。
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