セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
47 / 185
第5章 タロソナ国

6.束縛と誤ち

しおりを挟む

「大丈夫かな、みんな……」

  天候の悪化した、淀んだ空気の中に佇む、青城。ミアナは、そんな哀愁漂う城を見上げ、左手に持った薄ピンクの石を空にかざす。透けるような美しい石の内部に、自身の心の弱さを感じ、ミアナは先ほど城内に駆けて行ったヤドクを追おうと地面を蹴る。
  
「どこに行く気だ?」

  ギクリと、体が脱落するような。安堵とは違い、不安、それでもなく、体を締め付けるような……束縛。

「……どこに行くにも、自由でしょ?」
「君は違う。僕の…」
「…違う!アタシは……」

  腕を掴まれ、強く引かれる。

「黙って付いて来い」
「……いや!」

  レパートの腕を振り払い、後方に飛び退くが、背中にひんやりとした感覚が走り、それが壁だとわかる。
  逃げられない。

「…ど、どこに、行くつもりなの?」
「タロソナ国だ。レブルブルーがそこに出現した」
「そんなことより!本部が襲撃されてるわ!中にはまだ団員が残っているかもしれない!急いで…」
「…アダム・アリーダはどこだ?」
「なんで、そんなこと……」
「いいからどこにいる!」

  レパートの目が、ミアナの心の奥底を覗くようだった。この人は、見捨てるつもりなのだ。全員。要らないものは要らない。邪魔な者は排除する…

「……ここには…いない」
「なら、どこにいる?」
「…分からない」
「……チッ、タロソナへ向かうぞ」

  レパートはそう言って、ミアナの腕を無理矢理掴む。引きずられるようにして、城門を出ると、レパートの動きが止まり、耳に手を当てる。機械音だ。

「…今、向かってる……」
  
  レパートの短い返答の後、発信先を切り替えたのか、先ほどとは違う声音になる。

「タロソナだ、行け」

  同じく短い言葉だったが、彼の高い背中は、ミアナにとって恐怖以外の何物でもなく、ただただ、これから起こることがどんなことなのか…そして、彼がアダムをどうする気なのか。そればかりが気がかりだった。

「アダムを……どうして…」
「殺す」
「……え」
「あいつは、この作戦に邪魔だ。殺さなくてはならない」
「…で、でも!アダムのルーラーは誰も適合できなかったルーラーで、彼はそれを自分の意思でコントロールできてるわ!彼のルーラーが暴走したら怖いから、殺すの!?」
「……そう思っていればいい」
「そんなの納得いかない!あなたはそんなに臆病だったの!?」
「黙れ。お前には聞く資格がない」
「なら、どうすれば教えてくれるの!?」

  ミアナは、自分が発した言葉に自分でも驚く。今まで、レパートに対して、このようなお願いにも似た言葉は言わなかった。

「なら……」

  レパートの表情が、冷たく冷酷になっていく。

  ミアナの中で、全ての希望が、消えた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...