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第6章 ナジプト国
1.赤髪の青年
しおりを挟む火事だ。赤い火事だ。全部燃えてる。消えた。あの瞳の赤い色も。全部が、飲み込まれて。
肌にザラリとした感覚があった。
いつの間にか閉じていた瞼を持ち上げ、体を起こす。何がどうなっているのか、鉄パイプが天井から剥き出しになった、ある意味、デザインセンスを感じさせる、無機質な部屋。照明と言われる唯一の灯りは、ほぼそれだけが光るのみで、辺りを照らすという役割を担っていなかった。目が暗闇に慣れ、何度か瞬きを繰り返す。
小さなテレビと、ボロボロのソファが一つ。テーブルの上には、錠剤の殻が散らばっていた。その錠剤を飲んだ時にでも使用したのだろう、水が三分の一ほど注がれたグラスも、その隣に置いてある。
奥の方に、小さな窓があるようだが、黒い遮光カーテンで日光はしっかり遮断されてあった。すぐ隣には、赤いロングコートが無造作に掛けられたコートかけ。
「目、覚めたか」
突如かけられた声に、アダムは肌触りの悪いベッドの上で、バランスを崩し、転倒する。
「痛ッ」
「鈍臭っ」
「な、なんだよ!てか誰だよ」
「レブルブルー、トップ6、アイン・アレス、と言えば、分かるか?」
「アイン…アレス」
アダムは、自分がしてきた今までのルートを思い出す。
「何処にいる?」
状況を把握し、冷静さを取り戻すが、当の本人の姿が確認できるまでは警戒を続ける必要がある。かといって、本人がでて来れば、またさらに警戒しなくてはならないのだが。
ソファがゆっくりと向きを変えた。
死角に隠れて見えなかったのか。それとも、本当に最初からそこにいたわけではなかったのか。向きを変え、こちらを向いたソファに深々と腰掛ける赤髪の男の姿があった。
「……どういうことだよ、俺をここに監禁でもするつもりか?」
「そんなことしてる時間なんてない」
「は?時間?」
アインがソファから立ち上がる。それに合わせてアダムも体を起き上がらせ、胸ポケットを探る。
嘘だろ。
「俺のルーラー…どこにやった?」
「ルーラー?あぁ、あれか。それなら、お前が持ってるはず」
「ないじゃないか」
「覚えてないのか?同化のこと」
「同化?なんだそれ」
アインの腰を見る。銀色に輝く冷酷な小銃が、遮断カーテンの僅かな隙間から入る光で、不気味な色を露わにしていた。
「…俺を殺すのか?」
「…………殺さない」
「…は?」
聞き間違えだろうか。実戦試験の時から、俺はこいつに殺されそうになってきた。
アダムの頭は、ぐるぐるとこれまでの全力の戦闘を思い出す。確かに、傷は負ったものの、命に別状はなかった。
まさか、本当にこいつは……
「お前には、死んでもらっちゃ困る」
「……どういうことだ?お前、レブルブルーなんだろ?」
「レブルブルーというだけであって、アクチノイドじゃない」
「まぁ、そりゃそうだけど…だけど、話ではレブルブルーの奴らは、そのボスっていう奴にこう言われてるんだろ?『アダム・アリーダを殺せ』って、俺、なんか悪い事したか?」
そういえば、シーレッドの長官とかいうやつにも、殺されかけたかな。
「お前は、ボスにとって危険なんだ」
「俺のルーラーがか?」
「……それもある。ボスが恐れてるのは、お前がルーラーと同化することだ」
「さっきも聞いたけど、その同化ってなんだ?」
「……ルーラーと人間の同化」
「ルーラーと…人間?あぁ、あれか、体を乗っ取られるとか、そういう?同化するとそんなに強くなんのか?」
「違う。そういうことじゃない」
アインの息遣いが、少しだけ人間らしく高鳴る。ように感じた。
「イヴ・ターニア」
アインの口からボソリと出されたその名前。
「……なんでお前が…イヴのこと…………」
「…彼女を救えるのは、お前だけだ」
「ど、どういうことだよ、俺だけって…イヴは今、どこにいる?」
「セカンドアースの頂上…クリスタだ」
「クリスタ……確か、あそこはレブルブルーの……」
「彼女は、レブルブルーが所持しているものだ。ルーラーと同化しろ。同化すれば……」
突然、光が目に入ってきた。眩しい。
しばらくして、目をゆっくりと開ける。
そこには、壁に空けられた大穴以外、赤髪の姿はどこにもなかった。
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