セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
89 / 185
第8章 マキダム牢獄

5.指揮官

しおりを挟む

  黒鉄の扉をノックする者があった。

「ランタ国王陛下!レブルブルー第一部隊ノーベ・ユピエルです!」
「おお、ノーベか。入って良いぞ」
「失礼いたします!」

  緑髪を短く切り払った長身の若者が、その体型に合わず静かに歩み寄ってくる。玉座から数メートル離れた辺りで片膝立ちの状態をとり、頭を下げる。

「顔を上げて良いぞ、ノーベ。ところで、シルバーアームの方はどんな具合だ?」
「はい、実は、有能な人材を見つけたのです。身体能力の優れた者で、我々が難としていた銀拳、シルバーナックルに適した者だと見込んでいます」
「…どういう者なのだ?」
「フェル・アフロディテという、10あまりの少年です」
「……その少年は?」
「…………プロト・ヘルメスのお気に入りの少年でして…」
「あぁ…あいつのか……」

  ノーベは悔しそうに歯を食いしばり、それを続け、しばらくするとスッと立ち上がる。

「…では、ご報告は以上です。失礼しました」

  くるりと向きを変え、扉へ大股に歩き出す。

「随分と弱ったものだな」

  虫唾が走るような、そんな声が耳に入り、ノーベは腰の斧を抜く。銀の軌跡が弧を描き、指の間を這いながら、安定した位置にそれがたどり着く。

「あーあ、そんな物騒なものを、しかも国王陛下の前で!トップがこれだからレブルブルーは落ちぶれてしまう」
「何が言いたい?プロト?」

  青髪の男は、鼻で笑うと眼鏡を人差し指で押し上げる。

「国王陛下、こんな無礼者はほっておいて、どうぞ、俺をレブルブルー第一部隊指揮官に…というのはどうです?」
「貴様ッ……」
「はいはい、ジャッチされる者は……黙ってろよ」

  いつの間にか、首筋に当てられたその鋭利な冷たさに、ノーベは反射的に手に持った斧を床に落とした。
  プロトは、それでいいとばかりの微笑みを浮かべ、銀と黒の煙をまとった鎌を一振りする。指で弄び、しだいに黒い煙が銀の鎌に覆いかぶさり、消えた。
  銀鎌…厄介な奴だ。

「大丈夫だ、俺がこの鎌で誰かを斬ったとしても、それで死ぬか生きるかを決めるのは、君らなんだからね」
「それに斬られて生きてた奴なんていないだろ?」
「ま、そりゃみんなが、死神かなんかに食われちゃったんじゃない?意思が弱いとか、なんとかで」

  誰もが死にたいと思ってることを、死神がよく分かってるから
  そんな言葉を繰り返し、こいつは何かを企んでいる。

「残念だが、プロト・ヘルメス。お前を指揮官に置くわけにはいかない」
「でしょうね、謎多き反逆者には怖くて何も任せられないでしょう?」

  プロトはそう言って、張り付いた笑顔をつけたまま、向きを変え平然とした足取りで扉へ向かった。彼の歩く後をつけるように黒い煙が張り付き、彼の心を映し出す。

「…ノーベ……フェル・アフロディテとやらを、ここへ連れてこい」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...