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第8章 マキダム牢獄
5.指揮官
しおりを挟む黒鉄の扉をノックする者があった。
「ランタ国王陛下!レブルブルー第一部隊ノーベ・ユピエルです!」
「おお、ノーベか。入って良いぞ」
「失礼いたします!」
緑髪を短く切り払った長身の若者が、その体型に合わず静かに歩み寄ってくる。玉座から数メートル離れた辺りで片膝立ちの状態をとり、頭を下げる。
「顔を上げて良いぞ、ノーベ。ところで、シルバーアームの方はどんな具合だ?」
「はい、実は、有能な人材を見つけたのです。身体能力の優れた者で、我々が難としていた銀拳、シルバーナックルに適した者だと見込んでいます」
「…どういう者なのだ?」
「フェル・アフロディテという、10あまりの少年です」
「……その少年は?」
「…………プロト・ヘルメスのお気に入りの少年でして…」
「あぁ…あいつのか……」
ノーベは悔しそうに歯を食いしばり、それを続け、しばらくするとスッと立ち上がる。
「…では、ご報告は以上です。失礼しました」
くるりと向きを変え、扉へ大股に歩き出す。
「随分と弱ったものだな」
虫唾が走るような、そんな声が耳に入り、ノーベは腰の斧を抜く。銀の軌跡が弧を描き、指の間を這いながら、安定した位置にそれがたどり着く。
「あーあ、そんな物騒なものを、しかも国王陛下の前で!トップがこれだからレブルブルーは落ちぶれてしまう」
「何が言いたい?プロト?」
青髪の男は、鼻で笑うと眼鏡を人差し指で押し上げる。
「国王陛下、こんな無礼者はほっておいて、どうぞ、俺をレブルブルー第一部隊指揮官に…というのはどうです?」
「貴様ッ……」
「はいはい、ジャッチされる者は……黙ってろよ」
いつの間にか、首筋に当てられたその鋭利な冷たさに、ノーベは反射的に手に持った斧を床に落とした。
プロトは、それでいいとばかりの微笑みを浮かべ、銀と黒の煙をまとった鎌を一振りする。指で弄び、しだいに黒い煙が銀の鎌に覆いかぶさり、消えた。
銀鎌…厄介な奴だ。
「大丈夫だ、俺がこの鎌で誰かを斬ったとしても、それで死ぬか生きるかを決めるのは、君らなんだからね」
「それに斬られて生きてた奴なんていないだろ?」
「ま、そりゃみんなが、死神かなんかに食われちゃったんじゃない?意思が弱いとか、なんとかで」
誰もが死にたいと思ってることを、死神がよく分かってるから
そんな言葉を繰り返し、こいつは何かを企んでいる。
「残念だが、プロト・ヘルメス。お前を指揮官に置くわけにはいかない」
「でしょうね、謎多き反逆者には怖くて何も任せられないでしょう?」
プロトはそう言って、張り付いた笑顔をつけたまま、向きを変え平然とした足取りで扉へ向かった。彼の歩く後をつけるように黒い煙が張り付き、彼の心を映し出す。
「…ノーベ……フェル・アフロディテとやらを、ここへ連れてこい」
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