セカンドアース

三角 帝

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最終章 セカンドアース

5.仲間

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  フェルの右足がプロトの首元をすくった。プロトの体制が一瞬だけよろけ、その隙をついて再びフェルの左足がはためく。続けざまの攻撃にプロトは一度後方に大きく飛び退くものの、フェルのほうが一足早く、その後方へと回っていた。振りかざされた鎌をフェルはナックルで押さえ込み、そのまま宙に高く飛んだ。

「なんで…なんで殺さなかった」

  冷酷な表情に、先ほどまでなかった色を浮かべたプロトに、フェルは鎌を抑え込み尋ねる。その段階も一瞬で切り替えられ、フェルとプロトはまた場面を移す。宙に放り出されたフェルは、損傷した右足を庇い、左足で地を蹴る。
  フェルの駆け出しの軌道が、筋の濃ゆい光となって地面の大理石を削った。プロトは鎌の先端でフェルの仕掛けた圧力をなんなく払うと、動くことなくフェルの攻撃を待った。

「プロト……お前は銀鎌を使わなかった…なんで、トゥルージャッチを使った!それじゃ、普通の人間は斬れない!」
「……いいや、お前は確かに斬った…」
「…どういうことっすか……おれがトゥルージャッチで斬れるはず…」
「お前は人を殺しすぎた。真実に反する行いをしてきた…斬れないはずがないんだ」

  何処からか込み上げる、不可解な抵抗感と、逆らえない言葉の枷…フェルは大きく足を踏み出し、プロトの表情に噛み付いた。
  プロトはそれを交わし、鎌を大きく振りかざす。一瞬できたプロトの胸部部分の隙に、フェルはその拳を深く抉りこませる。
  プロトの口から溢れ出た赤いしぶきに、フェルは更に拳を食い込ませる。深く刺さったそのナックルを振りほどき、床に突っ伏すプロトを見下ろした。

「……なんだよ…今、手加減したっすよね…プロト………あんたはおれを…おれらを……一体何を企んでるんすか!」

  プロトの横顔が、少しずつ白くなって見えた。血色が悪く、青白い。傷ついたそのメガネのフレームをプロトは一度ピクリと動かした。その指が震えていることに、さらなる憎悪が動き出す。

「馬鹿にしてるのか?」

  そんな声が聞こえたのは、床に転がるプロトではなく、真後ろ…
  振り返った頃には遅く、プロトの鎌が頭上から振り降りてくる。一瞬だけ見えた、眼鏡の奥の瞳には、情は無く。あるのはただの理性のみ…

「……せっかく逃げるチャンスをお前に与えてやったというのに…」

  握ろうとした拳にも、そんな力など残っていない。向こうで青蛙が必死にこちらに手を伸ばしている。あの手に一度、仲間と言われた。それだけであの男と同じになれたような気がして、嬉しかった……
  ゆっくりと目を瞑る。視界が暗くなる。

ババンッッ!!

  懐かしい音だ。銃が鳴く声…それにしても、今日も派手だな。でも、あの人の放つ音はそんじゃそこらの銃声と違って、もっと特別はものがあった…

  勢いよく目を開く。
  目の前で、銃声を背景に、潤紅のマントを羽織った、燃えるような赤髪が揺れていた。
  レザーグローブの上から握る、銀色の小銃。

「……アイン………先輩……」
「遅くなった……フェル…」

  拳が電気を帯びたように痙攣する。
  安心したわけではない。
  ただ……ただ嬉しかった…………

  そうか……最初から、おれにも仲間がいたのか……

  その時だったー

  ヤドクの後ろの壁がびりびりと亀裂を走らせる。フェルは近くの壁まで走り抜け、壁に火花を散らしながらヤドクに体当たりする。ヤドクの体が弾き飛ばされた瞬間、その壁の向こうから大量の空気が吐き出され、それと同時に大粒の瓦礫が降ってきた。

  現れた巨大な黒い影を見上げ、それにまたがる少年の黒髪に目を凝らす。

「それと、ちょっとした助っ人も連れてきた…」
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