セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
125 / 185
最終章 セカンドアース

6.青の反逆者 REBELBLUE

しおりを挟む

  遅くなった…などと余裕な発言をしてしまったのは心外だった。
  アインは後手にいる金髪の少年を振り返る。少年の頼り切った、安心したような表情に、自分に何ができるかと考えるが、何ができるかではなく、何かをしなければと場面を切り替える。

  優雅に着地した黒髪の男と真正面から一度、目配せし、心中、などという臭いセリフがよく似合う会話を交わす。

「で…お前はどっちなんだ?」

  先ほど頭部を粉砕したかと思われたプロトが、平然とした様子で立っていた。距離を確認するが、やはり銃撃範囲に入っている。男の意図を探るため、しばらく沈黙を続けるが、どうも昔からこいつについては詳しくない。

「……俺はアクチノイド人じゃない…それは昔から変わらない」
「あぁ、それがどうした?お前は同族を殺しただろ?今頃そんな言葉は通じないんじゃないか?」
「……」

  プロトの勝ち誇ったような顔に、もう一度銃口を構える。トリガーにかかる指の、先端が震え何故かその先の行動を妨げる。

「アイン先輩!あいつの言葉に耳にかさないほうがいいっすよ!最初から、最初からこれは仕掛けられた罠だったんすよ!おれらが…レブルブルーを裏切るってことまで……全部…」

  視界の端に見える、金髪の少年の片手は血にまみれ、そこにあったはずの銀の鋼鉄は消えていた。
  フェルの攻撃威力は、レブルブルーでも最強のものだと聞かされていた。きっとフェルもそう言われてきたのだ…だが、あいつらは……

「……だから、ボスは俺たちとの干渉を避けていた…レブルブルーの中でも、バレるとまずい何かがあったから……」

  何か……赤い瞳……そうか。

「アダム、クロウが何か言ってないか?」
「…言ってる……近くにいるって…」

  そう言うアダムの目は、赤泥に塗られ、元の漆黒を真っ赤に染め上げていた。全神経を飲み込まれる寸前の自分の意思に集中させることで、かろうじてクロウからの支配を逃れている。
  
  その時だったー
  向き直ったアインの目の前に、冷酷なまでの銀色が青い尾を引きながら降り裂かれた。目と鼻の先でそれらが混じり合い火花を散らす、アインは状態を倒し、その勢いで何度か回転すると壁を盾に加速を下げる。
  その頃には既にフェルが動き出しており、金髪と黄色いマントが描く、美しいコントラストがプロト目掛けて炸裂していた。
  人数差からしても、こちらが圧倒的に有利だ。全員でかかればこの眼鏡男も圧倒することができるかもしれない。

「フェル!起動を右にずらんだ!」

  そう言ったのは青蛙の男だった。真剣な表情を浮かべ、フェルの援護に回っている。それが何故か不思議でアインはその光景を呆然と眺めた。
  もしかすると彼らは、自分たちがここに来るまでの間、共にこうしていたのでは。と考えると、あの残虐なフェルとな…と笑えてくる。
  どこか想い深いその光景に、銃口を構えて参戦する。銀銃の冷たさが、指先を伝って全神経を研ぎ澄ましてくれる。
  フェルの攻撃と攻撃の間をついて、身動きがとりにくくなるように銃声だけを発射する。もちろん音だけなので当たることはないが、フェルの攻撃が一度当たる程度だった。

「……どうなってる…?」

  フェルの攻撃は何度も当たっている。あの速度であの威力で繰り出される攻撃を受けて立っていられるはずがない。戸惑うアインの様子を楽しむように、プロトの遠距離攻撃がこちら目掛けて飛んできた。それを避けることなく銃弾で砕き、青と黄の縁の中に飛び込んだ。上空を一度飛び、銃を素早く構える。ちょうど青髪の男の頭上を通り過ぎる頃、その脳天に向かって銃口をセットした。
  外れるはずがない…この銃を使って、外したことなど一度もない。
  そんな思考は一瞬にして上書きされ、放たれた赤い銃弾は、プロトの頭部を擦り、そのまま大理石の床に穴を開ける。

「アイン先輩!こいつは、こいつらは…!」

  フェルの体が振り飛ばされ、数メートル先の壁で一度跳ね、二度目の体当たりで鈍い音をたて凹みを作った。粉々にまき散った破片の中にフェルの体が力なく倒れる。

「フェル!!」

  金髪に駆け寄りその体を揺さぶるが、力尽きたというように息を切らし、その眼光は僅かな明かりさえ無かった。
  アインは辺りを見回し、今にもプロトにとびつこうとする黒髪と黒い影に声を張り上げる。

「アダム!!お前はアクのところへ行け!後は俺が食い止める!!そこにイヴも居るはずだ!!」

  黒髪の体が、数秒遅れて止まり、プロトの背後にある壁を蹴りつけ向きを変えた。今回ばかりは止めることが出来なかったのか、それともそれさえもわざとなのか、プロトは身じろぎもせずに、その奥の間へ進むアダムの後ろ姿を眺めていた。

  フェルから体を起こし、銀銃の重みと、身体中の疲労を噛み締めながら、最後の決着へと足を進める。青髪はそんなアインを冷めた顔で眺め、数回呼吸を荒く吐く。
  青髪にアインの銃口が押し当てられた。銀の鎌がプロトの指先からすり落ち、地面に音を残す。

「なんのつもりだ?」
「……どういうつもりない…ただ、お前と戦うつもりのない……」
「は?なんでだよ…」

  プロトは小さく笑い、いつものごとく鼻で笑う。その青い瞳が、眼鏡の反射を無くし、その色をまじまじと見せた。

「俺はな…アイン…………」
「…黙れ……」


  クリスタ殿上層部、大理石の冷たさを…
  一発の銃声が貫いた…
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...