セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
128 / 185
最終章 セカンドアース

9.白叫声

しおりを挟む

  アダムの叫び声と同時に、肩から伸びた鋭利な翼達が、アダムの肩の付け根を軸にし、ぐるぐると激しく回転を始める。それに従って、アダムの全神経に、痺れるような痛みと、それさえも感じられなくなる感覚が襲った。
  翼の一つが大剣のように尖り、それが本来の姿であったかのように対象に刃を向けた。

「これが……第一ルーラー実験体…烏と…孤独な少年……おおっと!」

  アクは振りかざされた大剣を、ギリギリのところでかわし、滑るように天井へと登った。それを追ってアダムも壁を駆け上る。

「君~それさ~適合者自身を破壊して使うってこと分かってる?クロウってのはそういう奴なんだからさぁ~このままじゃ、愛しのイヴちゃんに会う前に死んじゃうよ?」
「なら…なら会わせろ!イヴを…イヴを返せ!」

  クロウの大剣が肩で回転する、それによって体を襲う激痛に堪え、体制を崩さぬように足に軸をはる。
  黒の大剣が、白の長剣と混じり合い、ギシギシと鬩ぎ合う。

「アダム・アリーダ…お前は、お前はそのルーラー…いや、ルーラーシステムの本性を知らずにいる……愚かなセカンドアースの奴らが作り出した…人類を裏切る研究をな!」

  アクの額を伝う汗が、白い銀剣と共に辺りに散り、アダムの左の皮を濡らす。アダムは引き攣る口先を抑えようと力むが、歯茎の震えは収まらず、邪気を放つ。
  少しずつアクの銀剣を押していき、力の限りをその翼に込める。翼をアクの体をじわじわと押しやり、その額を汚そうと翼を伸ばす。
  黒の大剣が、アクの色白い頬に紅い筋を植え付ける。

「…死ね!!アク・アルテミス!!」


  アクの口から、音無き笑いが零れ落ちたー

  次の瞬間、アダムの体は白い波に飲み込まれ、後方の壁にぶち当たる。
  体内から抉り、吐き出された空気がアダムの口から溢れ出し、身体中の気体を奪う。体を縛る白波の圧が、アダムの全てを硬く拘束する。

「ぁああああぁああああ!!」

  全身を縛り、息を吸うことを禁じられたアダムは、そう叫び、背中の大剣を振り回す。大剣はビリリと一度動き、その圧力に耐えきれずに儚く消え去った。

「………アダム………お前は知らない…このセカンドアースの真実を…」

  アクの嘲笑が、空気を奪う波と波の間から、掠れて見えた。その手に握られた銀の剣が、アダムの奥底を睨めつけるように響き、クロウが引く黒く細長い煙を、純白の刃で引き裂き、こちらへこちらへとその色を伸ばす。


「僕が教えてあげるよ……アダム・アリーダ……」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...