セカンドアース

三角 帝

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過去編 近い日に

3.赤髪の逃人

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  ギシギシと唸るベッドから飛び起き、アインはふと窓の外をみた。まだ薄暗い。隣を見ると、いつもいるはずのイヴの姿がなかった。

「……イヴ?」

  胸がざわつき、椅子にかけっ放しだったジャケットを羽織る、後から無理に取り付けた二階と一階をつなぐ唯一の短いハシゴが折られていて、下に降りることができなくなっていた。
  さらに高まる胸騒ぎに息が荒くなるのが分かる、3mほどの距離を飛び降り、息を吐く間もなく外へ飛び出した。

「おーい!出てきたぜぇ」

  突如、目の前に現れたデカイ顔にアインは部屋の中に逃げ戻ろうとした。しかし、その男の後ろで控える汚い男共の中に、イヴの白いワンピースを見つけ、逃げようとする足を止める。

「……妹を放せ…………」
「なんだなんだ~?お・に・い・ちゃ・ん」

  デカ顔がアインの胸ぐらを掴み上げる。それに従って体が持ち上がり、首が締め付けられる。

「お兄ちゃん!お兄ちゃんを放して!やめて!」
「へ~可愛い可愛い妹ちゃんに愛されていいな~」

  男の太い指が、アインの頬を伝って顎を撫でる。

「綺麗な顔立ちしやがって……金は何処だ?」
「…顔と、金に…なんの関係性…が、ある…ってん、だよ」
「あぁ?んなもんあたりめーだろ、物好きな金持ちがお前らに貢ぐんだよ、顔が良ければ全て良しの奴らがな」
「残念、だが…そうい、う物好きには…恵まれ、てない」
「別にいい、お前らを売りゃ直接金が手に入る」

  そうか。昨日の……昨日、俺が鉱石を盗んでたことがバレたから…それであの男が盗賊に頼んで……俺を懲らしめに…

「イヴは……関係ない…イヴを、放……せ」

  徐々に締まっていく首元に意識を集中させる。鉱山の中でも、手柄を巡って何度かこんなことがあった。功績により日々変わる給料制度のせいだ。その中で生き残れたのにもそれなりの何かがある…はずだ。
  自分の足が何処までの肉体を蹴り上げることができるのか…そんなことを考えながらぶら下がった足を大きく振り上げる。
  ここまできたら止めることはできない。
  見事に足は男の極部を突き上げ、じんっとした地味な振動が足に響いた。
 
「き、貴様!」

  男の腕から逃げ出し、素早く移動する。ガサガサした葉が茂る壁を走り、勢いをつけ、同じように男共をなぎ倒す。さすがになぎ倒すといっても相手の回復は早い。子供に蹴られた程度なのだから。

「テメェ餓鬼!ぜってぇ殺す!」

  男共がそれぞれに刃物を振り回す。もちろん大振り過ぎて当たらない、アインはそれらの刃物の尾をかいくぐり、うずくまるイヴを抱きかかえる。
  一人分の枷ができ、動きにくくなるが、すばしっこさなら誰にも負けない。それにその枷が愛する妹なのだから、何も文句はない。
  アインは地を蹴り、長年寒空をしのいできた家を後にした。
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