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過去編 近い日に
4.赤髪の盗人
しおりを挟む空が熱い。雲が重い。
腕の中で寝息をたてるイヴを一度見下ろし、胸に込み上げる感情の正体を探るが、相変わらずだ。
「はい、なんでしょう?」
協会の扉を開けた修道女は、冷たい地面に薄い布を敷いただけの素朴なベッドに少女を見つける。
黒髪の綺麗なロングヘアに、透き通った白い肌のその少女を抱え上げ、辺りを見回すが…誰もいない。
「可哀想に……寒かったでしょう」
修道女はふと杉林の方を見る。
誰かの影が動いた気がしたー
*
努力で手にできなかった金を、アインはその手で弄んでいた。
心も体も何もかもを、5年前のあの日に置いてきたようにも思えた。妹を捨てた、あの日に……
「おーいアイン」
この街一番の盗人と誇らしげに金歯を見せる若手の男が、ガス管の上にあぐらをかくアインに近寄ってきた。
その手に握られた女物の鞄に目を伏せる。
「なんだよ~このババさん、超チョロかったんだぜ~?」
「…あっそ」
ふと男の右手を見ると、女物の高目の鞄とは正反対に古ぼけた財布が握られていた。
一気に現実に戻されてしまう。
「戻してこい」
「えーなんでだよバーカ」
「もし、お前が盗んだその人間が、俺らと同じ職について、いつの日か俺らを超えたら…どうする?」
「……えーそれは…困る…な」
「拾ったふりすりゃいいから、返してこい」
男は拗ねたように唇を尖らせるが、きっとこの男のことだ。素直に相手に返すのだろう。他の奴らよりは話が通じる奴だ。
「てか、アイン。お前、そろそろボスたちに顔出したらどうなわけ?お前が顔見せに来ないから相当かっかしてるみたいだけど?」
「…行ったって同じことだろ」
「まぁ、そうだけど……」
男は、急に真剣な顔になると、アインにじわりとにじり寄った。
「…なぁアイン……妹さんのこと、心配なのは分かるけど…あんま怪しい行動するとヤバイんじゃねぇの?」
「妹に会いにいくのに許可はいらないだろ…それに、会話しているわけじゃない」
「…でも……」
「ほっとけ」
あれから5年……イヴは13歳になるー
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