166 / 185
ブーム君とヤドク君の秘密
10.双子の自由
しおりを挟むベランダの窓がカランカランと小さな音を立てて開いた。
布団の温もりから顔を出し、ブームは眠たい目をゴシゴシと擦り、大きく一つあくびする。
「もう帰ったのかヤドク」
「うん、ちょっと外は寒いからね」
ヤドクはベランダの窓から室内に這い上がると、なんの拘束もされていないブームの姿に驚いたように目を剥いた。
「だ、大丈夫みたいで良かったよ、心配したんだよブーム」
「………心配ねぇ…心配されてんのは…」
「ん?」
「なんでもねぇ…母さん、夜勤だから今日帰ってこないって」
「そっか」
ヤドクは恐る恐る立ち上がると、ブームのいるベッドへと近づいた。ブームはそんなヤドクに一瞬首をすくめるが、俯いたきり押し黙った。
「……今日一日…ボクをして……どうだった?」
「それはオレが先に聞きたい」
「…ボクも先に聞きたい」
「オレも」
「提案したのはブームだから、ブームが先だよ」
負けたとでも言うようにブームは一つ大きなため息をつくと、ベッドから体を起こし、ヤドクを隣に座らせた。
「昔の…母さんといるみたいだった……優しくて…面倒見が良くて……」
「それは違う」
「……なんでそんなこと分かるんだよ」
「だって母さんは、ボクのこと…」
「愛されてんのに…気づけねぇのかよ」
ブームはヤドクの腕を掴むと無理矢理に引きづり、戸棚の前に連れてくる。
「え、ちょっとブーム!」
その棚の一番下の引き出しを開け、中のものを床に撒き散らす。
大量の紙くずが床を白く埋め尽くし、その紙くず達一つ一つに丁寧な字で何かが書かれてあることに気づく。
「母さんがずっと書いてた……っぽい」
「…………読んだの?」
「……読めねぇよ……オレ、馬鹿だし…読めるのお前だけだろ?」
「あ、そっか…」
ヤドクはそのうちの一つを手にし、声をあげて読もうと息を吸い込み、息を止める。
「……どうした?読んでくれよ、オレ読めねぇから」
「いや…読めないよ……」
「ん?お前も読めねぇのかよ!絶対日記だと思ったんだけどなぁ」
「……ブーム……なんでブームは、これが昔の母さんの優しさとか、面倒見がいいとかに繋がると思ったの?」
「…………母さん、それ大事そうにしてて…なんか、優しい顔して書いてたから……」
「要するに勘でしょ?」
「そ、それじゃ悪いかよ」
ヤドクはもう一度手元の紙に視線を落とした。
「なーんだ、結局それがなんなのかわかんねぇじゃんか~で?ヤドクはどうだった?一日オレってのは」
「……楽しかったよ、友達も出来たしね!」
「友達か~はぁ!?友達!?なんでンなもん出来んだよ!」
「昨日、ブームがブランコ押してあげた女の子がボクに謝ってきたんだ、で、友達になった」
「あ~…あいつか……そっか!なら、お前、明日もオレやれよ!楽しかったんだろ!?」
「……あはは、ブームその必要はもうないよ。交換なんてね」
「え?」
「明日は2人で公園に行こう?一日中遊んで、そしたら家に帰って来るんだ」
「で、でも……母さんが…」
「……帰ってこないよ…」
ブームはヤドクの手から紙を取り上げ、読めない文面をくしゃりと握りつぶした。
「これからはボクら自由なんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる