セカンドアース

三角 帝

文字の大きさ
169 / 185
ブーム君とヤドク君の秘密

12.双子と騒動

しおりを挟む

  孤児院にはいくつかのルールが存在する。
  ルールといっても、ちょっとしたマナーのようなものだ。
  例えば、食堂を使用する際には自分の指定された席で食べるという決まりがある。ボクとブームは向かい合わせの席になっていて、決まって2人揃って食べるようにしていた。

「は、腹が……腹が…………」

  ブームのうめき声に叩き起こされ、目覚めの悪い中また1日がスタートした。
  扉の前でうずくまるブームの姿に目を細める

「なに、どうしたの」
「腹が……腹が…………」
「に、妊娠!?」
「ちげぇよ!腹が痛いんだよ!お前朝飯先食っとけ!」
「え…」

  ブームはそう吐き捨てると部屋を後にした。

  そうしてボクは、一人食堂へ向かうことになったわけだが、どうやら世間は思ったよりシビアなもので、新入りのボク…いや、ここはあえてブームを連れていないボクを見る他の孤児達の視線は、どうもボクを歓迎していないようだ。おまけにボクは、先日、この孤児院のアイドル的存在らしい少女を泣かせてしまったため、好感度は激落ちだ。

  食堂は広いホールのようになっていて、そこに何十人もの孤児達が集い、支給される食事を味わって流し込んでいくのだ。
  ヤドクはここの食事が気に入っている。栄養バランスをよく考えた食事内容に、衛生面をよく考えたテーブルのテカり、毎日朝早くから磨き上げられる床やほこり一つない窓枠。
  食事を手にし、いつもの席まで足を運ぶが、空いている席が見当たらない。

  いや、そんなはずはない。

  孤児院には食堂を使用する際に、食事を取るときは自分の指定された席に座って食べる。という決まりがあるのだ。となると、ヤドクとブーム…少なくとも向かい合わせの席が二つは見当たるはずなのだ。
  しばらくキョロキョロと辺りを見回すが、自分の席らしきものは見当たらない。

「クククッ」

  突然視界に写り込んできた茶髪の少年は、ヤドクからワザとらしく視線をそらし、殺し笑いを漏らしてきた。

「なんだよ」
「いや~困ってるなって思って」

  よく見ると、その少年は、ブームとなんだかんだと喧嘩が絶えないビルという少年だと気付いた。細い目や低い鼻にどうも見覚えがあったのだ。

「人が困ってる状況を笑えるなんて、随分とふざけたメンタルをしているんだね」
「はぁ?」

  喧嘩腰のつもりだろうが、残念ながら彼は相手が悪い。ボクが今まで相手にしてきていたのは、本物のヤクザだったり、本物の犯罪者だったり、あのブームだったりだ。口では負ける気がしない。

  冷めた表情のヤドクにイラついたのか、ビルはヤドクの手にあった食事を強引に奪うと、ヤドクの足元にぶちまけた。
  肉やら野菜やらが床にばらまかれ、それを追って陶器の皿がヤドクの脛に鈍く落ちた。皿の重みを一身に受けた脛に激しい痛みが走る。

「痛ッ」

  ヤドクが痛みに耐え、しゃがみ込むとビルは恐怖に眼光を震わせ、半泣きになりながらも食堂をあわあわと逃げ出した。
  その様子を見ていた孤児の内一人が、意味もなく泣き出すとそれにつられて何人もの孤児達が大声をあげて泣き出した。
  ホール中を子供達の泣き声が埋め尽くすと、それは瞬く間に園長先生の耳に届き、すぐに数人の修道女達が駆けつけた。

  この騒動の原因がヤドクにあると分かれば、面倒なことが起こりそうだと直感的に思ったヤドクは、修道女達の目を盗み、隙を見て食堂を去った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...