セカンドアース

三角 帝

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ブーム君とヤドク君の秘密

18.ブームの馬鹿人形

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  日が傾いて、暗く寒空が広がっていく。
  冷たい風が肌を擦り、後手に頬を撫でた。

「ブームのバーカ!ブームのバーカ!ブームのバーカ!…」

  永遠とも言えるその言葉の連呼に、カッコつけながらも微笑んでみる。耳障りの悪い電子音が自身の名を…しかもその語尾に、まるで口癖かの如く『馬鹿』と罵る音を放っている。

「あー分かったからヤドク!その『ブームの馬鹿人形』どっか他所にやってくんないかなぁ?」
「やだね、ボクの力作だし…他所になんて持っていけないよ」
「な、なら電池…そうだ!その電池止めてくれ!」
「やだね、ボクの力作だし…まず電池なんて古臭過ぎて搭載してないよ」
「つ、つまりそれは……」
「あぁ、そうだよブーム……エンドレスだ」

  エンドレスエンドレスエンドレス……

  その日、ブーム君は天才を怒らせてはいけないということを学んだ。


ーそれは先週の出来事ー

  友達に呼び出され慌てて広間に向かっていたブームだったが、廊下から聞こえた話し声にふと足を止めた。ヒソヒソと囁き合うような会話に、ブームの盗み聞きスキルが発動する。

「でね、今度…なんだけどさ……」
「ん?」

  青パーカーの見慣れた顔が、顔を真っ赤に染め上げてウジウジと金髪少女に話しかけているところだった。

  その名をあげるまでもない。オレの中でマイブームの二人である。ブームだけに!……あ、すみません。
  ミアナとヤドクは、まるで始まったばかりのカップルのように(ま、ヤドクの片想いだが)初々しく会話していた。
  ミアナの天然ぶりはいつものこと、ヤドクがあんな表情をするなんて初めて知ったと息を飲む。

「その…今度……」

  そうだヤドク!デートに誘うのだ!そうすれば!

「今度のタロソナ大パレード…ボ、ボクと二人で…」
「…行くー!!オレ行く行くー!」

  タロソナ国で行われる大パレード。ブームはその日を今か今かと待ちわびていたのだ。
  まさかこんな風にして誘いがくるとは…ん?誘い?いや、オレは誘われてない…

「あ。」

  気づくタイミングがかなりズレたようで、顔面を貫かんとばかりに突き刺さるヤドクの視線にヒッと声をあげた。

「そうだね!よーし、四人で行こう!」

  ミアナはそう言って右拳を振り上げる。

「四人?」
「うん、そうだよーイヴちゃんも誘おうよ!」
「イヴ…ちゃん?」
「イヴ・ターニア、知らない?すっごく美人さんなんだよ~なかなか外に出てくれないから…2人もまだ会ったことないんだね」

  つまり、引き篭もり…か。
  美人が引き篭もると、それは箱入り娘と言われる。
  ヤドクはしばらくムンクの表情を浮かべていたが、ミアナのどう?という愛らしい笑顔に口元の緊張を解き、微笑み返した。

「分かったよ…そうだね、多い方がいいよね!1人マジで要らないやつがいるけど…」

  相変わらずヤドクの視線が痛い。

「ならイヴちゃん誘っとくね!」

  トタタと走り去っていくミアナを見送り、ヤドクの荒い息遣いに耳を澄ます。

「ブーム…お前マジで死ね……」
「…ご、ごめんなさい…ヤドクさん」


ーそして今に至るー

「ブ~ム~」

  とんでもなく恐ろしい満面の笑みのヤドクは、手に一体の人形を握りしめ、スキップでこちらに近づいてきた。

「おーヤドク!今日は元気がい…い……な…」

  おかしい…
  ヤドクの手にある人形は、緑のフードを丁寧に着せてあり、髪型もなかなか凝った作りにされてあった。ただ、顔だけ破滅的な状況にあり、目だろうか…既に目の役割を果たしていないボタンが二つがテキトーに配置され、唇も鼻も、目以外のパーツは存在しない。

「な、なにそれ…新種のオモチャ?」
「ううん!これはね~『ブームの馬鹿人形』だよ!」

  ブ、ブームの馬鹿人形…

「ま、まさかこれは…オレ?」

  不格好な人形と自分のイケメンフェイスをヤドクに見比べさせる。しかし、ヤドクの表情は一向に変わらない。

「……つ、ついにオレが…オレが…!

商品化したぁぁあああああああああああ!」
  
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