セカンドアース

三角 帝

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アダム君の秘密

4.黒の喧嘩

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  確かに、売られた喧嘩は買うなんてふざけたことを言ったのは俺だ…だけど、イヴなら「アダムの馬鹿!喧嘩は駄目なんだからね!」とか言って止めると思っていたのだが…

「ほらアダム!急げ急げー!二人とも、もう向こうで待ってるよ!」
「…はぁ」

  信じた俺が馬鹿だった…彼女は、誰よりもこの日を楽しみにしている。

  喧嘩と言っても所詮ガキのやることだ。ま、俺もそのガキの一人なのだが、精神レベルとしては案外上の方だと自分で思う。物理戦は苦手でも、頭脳戦で行けばなんとかなるだろう…そうだ、相手はおふざけ双子…

「ブーム、敵の身長は147.8センチ、体重36.6キログラム、弱点は腰下5センチ、そこにどうやら古傷があるらしい」
「りょーかい!ヤドク~」

  階段を上って、視界が開けた途端、呪文のごとく俺の個人情報がつらつら並べられた。
  人を嘲笑うような笑顔を浮かべた少年二人は、お揃いのパーカーに身を包み、遂に二人揃ってアダムの目の前に姿を現した。

「よぉ、お前らがヤドクとブームの双子か?」

  余裕そうにニヤけて見せたが、内心では焦りに焦りまくっていた。
  とりあえず、前言撤回だ。頭脳戦に持ち込むことはまず不可能だ。向こうには天才だのどーのって言われるヤドクがいる。でも、物理戦に持ち込んでも、あのブームに勝てる自信は無い。
  こうなったら、おとなしく負けを認め…

「アダムー!頑張ってね~!」

  ふと声の方を振り返ると、お気に入りの白ワンピースに、細身の体を包んだイヴがこちらに手を振っているところだった。普段は、出かけるときや、何か特別なことがないと着ないワンピースなのだが、イヴにとってこの喧嘩とやらはそれほどまでに大切なことなのだろうか…そう考えると、引くに引けない。

  やるしかないということか…

「…で?どうするのアダム?頭脳戦?それとも…」
「どっちもだ」
「え?」
「どっちもやる!」

  ブームは驚いたとでも言うように両眼を見開き、首をアクロバティックな角度で捻るとヤドクを振り返る。ブームと軽く目配せ…いや、何かの合図なのかもしれないが、それは置いといて…を交わすと、ヤドクは鼻で軽く笑い、口元だけに微笑みを浮かべ、いかにも悪役気な表情を作った。よく見ると、ヤドクとブームの後ろにも、可愛らしいブランドの少女が一人、心配そうにこちらを見つめていた。
  そういうことか…ヤドクのこの妙に不自然な表情は、あの子が原因か…ここはお互い様ということかもな。

「わかった…なら、頭脳戦ではブームと、物理戦ではボクとだね」
「逆でも構わないけど」
「…え、それ本気で言ってる?」
「あぁ、本気だ」
「いやいやいやいや~ちょっと待とうよ二人とも~」

  不安気な表情のブームは、ヤドクとアダムの間に生まれた謎の緊迫感の中に、無理に割り込もうとした。それは逆効果となり、二人の間にさらなる緊迫感が生まれ、その一部が目に見えぬ攻撃となりブームの心を砕く。

  ま、それもそうだ…こいつらはまだ分かっていないのだ…
  一人は天才だ天才だと褒めまくられた、根性ナルシスト野郎…もうひとりはお調子者でチヤホヤされた、全体的ナルシスト野郎…
  こいつらはまだ知らない…上には上がいることを…

  俺が思い知らせてやる!
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