3 / 15
負のオーラ
しおりを挟む
「おい。おい。おい」
天使のおじさんの声で涼介は目を覚ました。
「お前危ないところだったぞ。あのままでは地縛霊となってあの世に行けなくなるところだ」
涼介は何も答えずにゆっくりと起き上がった。
「大丈夫か。お前、負のオーラがすごい」
妻と浮気相手に騙されて殺されていたのだ。無理もない。娘のリカの事が気がかりだが、死んでしまった今ではどうすることも出来ない。後悔、怒り、無念、無気力、そしてあきらめという負の連鎖状態であった。涼介の視点は定まらず朦朧としている。
「……」
涼介は何も言わずに天使のおじさんに促されるまま、とぼとぼとうっすら金色に輝く雲の方へ歩いた。そしてあの世へ向けて金色の雲に一歩踏み出した。しかし、その足は雲を踏みしめることが出来ず、落とし穴に落ちるように雲の下へ落下していった。物凄いGが涼介の全身に加わった。涼介は直感的にこのまま地獄に落ちるのだと思った。それでもいいや。俺なんか地獄で苦しめばいいんだ。そう思いながら落下していると、がっしりとした太い腕に受け止められた。先程の天使のおじさんだった。
「私には分かる。お前は地獄に落ちるヤツなんかじゃない。心はとても美しい。かと言ってこれだけ負のオーラが強いと天国では受け入れてもらえないようだ。あの方にお願いしてみるか」
そう言って天使のおじさんは涼介を抱えながら白い大きな翼を羽ばたかせた。
雲の上の空間を長い間飛び続けてたどり着いた場所には大きな門があり、その中には黄色の法衣をまとった年老いたお坊さんがいた。お坊さんは雲の中を泳ぐコイを眺めていたが、涼介と天使のおじさんに気づくと振り返った。
そして「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」と独特な笑い方をした。耳から白髪混じりの毛がフサフサと生えている。
「開雲老師、どうかこの者から負のオーラを取り除いてください」
「おじさん天使、お前の言うことじゃ。よっぽどの事なんじゃろう。どれ」
開雲老師は涼介を裸にして体の隅々まで調べた。涼介は力なく無抵抗でされるがままになっていた。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。これは手強い。魂がかさぶたのように固まっておる。無理かもしれん。しかしやってみるかのう」
開雲老師は涼介に座禅を組ませ、その前でお経を読み始めた。お経はとても長く、おじさん天使は自分の任務に戻っていった。
三日三晩お経は続いたが、涼介から負のオーラは取り除かれなかった。開雲老師はとても疲れた様子で
「これはとてもじゃないが私には無理じゃ。本人の力で何とかするしかない。普通ならここまですることは無いのじゃが、お前には不思議と期待してしまう何かがある。一か八か送ってみるか」そう言って涼介を宇宙空間の中に連れて行き背中を蹴飛ばした。
すると涼介はものすごいスピードで暗闇の中に放り出された。重力も空気抵抗もない空間ではスピードは緩むこと無く真っ直ぐに突き進んでいく。光を放つ星たちがものすごいスピードで現れては過ぎ去っていった。いや、涼介には肉体は無く、物理の法則にさえ従ってはいなかった。光の1000倍のスピードで進み、周りのものは全て歪んでみえた。涼介は何も考えることなくただただ時間が過ぎていった。
天使のおじさんの声で涼介は目を覚ました。
「お前危ないところだったぞ。あのままでは地縛霊となってあの世に行けなくなるところだ」
涼介は何も答えずにゆっくりと起き上がった。
「大丈夫か。お前、負のオーラがすごい」
妻と浮気相手に騙されて殺されていたのだ。無理もない。娘のリカの事が気がかりだが、死んでしまった今ではどうすることも出来ない。後悔、怒り、無念、無気力、そしてあきらめという負の連鎖状態であった。涼介の視点は定まらず朦朧としている。
「……」
涼介は何も言わずに天使のおじさんに促されるまま、とぼとぼとうっすら金色に輝く雲の方へ歩いた。そしてあの世へ向けて金色の雲に一歩踏み出した。しかし、その足は雲を踏みしめることが出来ず、落とし穴に落ちるように雲の下へ落下していった。物凄いGが涼介の全身に加わった。涼介は直感的にこのまま地獄に落ちるのだと思った。それでもいいや。俺なんか地獄で苦しめばいいんだ。そう思いながら落下していると、がっしりとした太い腕に受け止められた。先程の天使のおじさんだった。
「私には分かる。お前は地獄に落ちるヤツなんかじゃない。心はとても美しい。かと言ってこれだけ負のオーラが強いと天国では受け入れてもらえないようだ。あの方にお願いしてみるか」
そう言って天使のおじさんは涼介を抱えながら白い大きな翼を羽ばたかせた。
雲の上の空間を長い間飛び続けてたどり着いた場所には大きな門があり、その中には黄色の法衣をまとった年老いたお坊さんがいた。お坊さんは雲の中を泳ぐコイを眺めていたが、涼介と天使のおじさんに気づくと振り返った。
そして「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」と独特な笑い方をした。耳から白髪混じりの毛がフサフサと生えている。
「開雲老師、どうかこの者から負のオーラを取り除いてください」
「おじさん天使、お前の言うことじゃ。よっぽどの事なんじゃろう。どれ」
開雲老師は涼介を裸にして体の隅々まで調べた。涼介は力なく無抵抗でされるがままになっていた。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。これは手強い。魂がかさぶたのように固まっておる。無理かもしれん。しかしやってみるかのう」
開雲老師は涼介に座禅を組ませ、その前でお経を読み始めた。お経はとても長く、おじさん天使は自分の任務に戻っていった。
三日三晩お経は続いたが、涼介から負のオーラは取り除かれなかった。開雲老師はとても疲れた様子で
「これはとてもじゃないが私には無理じゃ。本人の力で何とかするしかない。普通ならここまですることは無いのじゃが、お前には不思議と期待してしまう何かがある。一か八か送ってみるか」そう言って涼介を宇宙空間の中に連れて行き背中を蹴飛ばした。
すると涼介はものすごいスピードで暗闇の中に放り出された。重力も空気抵抗もない空間ではスピードは緩むこと無く真っ直ぐに突き進んでいく。光を放つ星たちがものすごいスピードで現れては過ぎ去っていった。いや、涼介には肉体は無く、物理の法則にさえ従ってはいなかった。光の1000倍のスピードで進み、周りのものは全て歪んでみえた。涼介は何も考えることなくただただ時間が過ぎていった。
0
あなたにおすすめの小説
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる