魂伝子 ~ 情けはモンスターの為にあらず~

MJ

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負のオーラ

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「おい。おい。おい」

天使のおじさんの声で涼介は目を覚ました。

「お前危ないところだったぞ。あのままでは地縛霊となってあの世に行けなくなるところだ」

涼介は何も答えずにゆっくりと起き上がった。

「大丈夫か。お前、負のオーラがすごい」

妻と浮気相手に騙されて殺されていたのだ。無理もない。娘のリカの事が気がかりだが、死んでしまった今ではどうすることも出来ない。後悔、怒り、無念、無気力、そしてあきらめという負の連鎖状態であった。涼介の視点は定まらず朦朧としている。

「……」
涼介は何も言わずに天使のおじさんに促されるまま、とぼとぼとうっすら金色に輝く雲の方へ歩いた。そしてあの世へ向けて金色の雲に一歩踏み出した。しかし、その足は雲を踏みしめることが出来ず、落とし穴に落ちるように雲の下へ落下していった。物凄いGが涼介の全身に加わった。涼介は直感的にこのまま地獄に落ちるのだと思った。それでもいいや。俺なんか地獄で苦しめばいいんだ。そう思いながら落下していると、がっしりとした太い腕に受け止められた。先程の天使のおじさんだった。

「私には分かる。お前は地獄に落ちるヤツなんかじゃない。心はとても美しい。かと言ってこれだけ負のオーラが強いと天国では受け入れてもらえないようだ。あの方にお願いしてみるか」
そう言って天使のおじさんは涼介を抱えながら白い大きな翼を羽ばたかせた。

雲の上の空間を長い間飛び続けてたどり着いた場所には大きな門があり、その中には黄色の法衣をまとった年老いたお坊さんがいた。お坊さんは雲の中を泳ぐコイを眺めていたが、涼介と天使のおじさんに気づくと振り返った。
そして「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」と独特な笑い方をした。耳から白髪混じりの毛がフサフサと生えている。

「開雲老師、どうかこの者から負のオーラを取り除いてください」

「おじさん天使、お前の言うことじゃ。よっぽどの事なんじゃろう。どれ」

 開雲老師は涼介を裸にして体の隅々まで調べた。涼介は力なく無抵抗でされるがままになっていた。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。これは手強い。魂がかさぶたのように固まっておる。無理かもしれん。しかしやってみるかのう」

開雲老師は涼介に座禅を組ませ、その前でお経を読み始めた。お経はとても長く、おじさん天使は自分の任務に戻っていった。
 三日三晩お経は続いたが、涼介から負のオーラは取り除かれなかった。開雲老師はとても疲れた様子で
「これはとてもじゃないが私には無理じゃ。本人の力で何とかするしかない。普通ならここまですることは無いのじゃが、お前には不思議と期待してしまう何かがある。一か八か送ってみるか」そう言って涼介を宇宙空間の中に連れて行き背中を蹴飛ばした。

すると涼介はものすごいスピードで暗闇の中に放り出された。重力も空気抵抗もない空間ではスピードは緩むこと無く真っ直ぐに突き進んでいく。光を放つ星たちがものすごいスピードで現れては過ぎ去っていった。いや、涼介には肉体は無く、物理の法則にさえ従ってはいなかった。光の1000倍のスピードで進み、周りのものは全て歪んでみえた。涼介は何も考えることなくただただ時間が過ぎていった。
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